悪役貴族の最強中立国家   あきらあかつき(角川スニーカー文庫)



破滅確定の悪役貴族による最強領地経営譚。
大枠としては異世界(ゲーム世界)転生ものですね。原作では数年後に勇者もしくは魔王に殺されてしまう
悪役貴族が転生先で、原作知識アリの主人公は当然のことながら破滅の未来を回避しようと奮闘。
というお約束のストーリーラインなのですが、その手段が「誰にも侵略されない最強中立国の建国」と
あまり類を見ない方向性なのが新鮮です。大体の主人公は良い人ムーブするか強くなろうとするだけですし。
まあ、本作の主人公は本編スタート時点で領地経営を任されている領主なのである意味真っ当なのですが。
領主が内政に励み領地を富ませるのは当たり前のことですしね。中立国建国は行き過ぎですけども
国を裏切れば勇者に、裏切らなければ魔王に殺される以上、選択肢はないようなものですし…
ラブコメ面は今のところ進展なし。まあ、一巻時点では十二歳ですしね。

主人公は「ラクアの英雄伝説」というゲームに登場する悪役貴族ローグに転生していた元日本人。
前世は中流階級の家に生まれた三十歳独身の社畜サラリーマンで、死因は過労。
前世の記憶が流入したことで、元のローグでも、転生前のサラリーマンでもない新たな人格が生まれた。
プライドが高く尊大で自信家、情というものがなく、理と利を重視する性格であり
基本的に周りの人間を道具としてしか考えていないが、自分よりも凄い人間には敬意を払う度量はある。

ヒロイン(候補)は腹黒王女、ポンコツな海軍大将、気弱な師匠。
二巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

現時点(二巻)においての評価はC。
勇者と魔王が存在している、武力がモノを言う世界観で内政をメインにしているという珍しい作品。
内政メインならば地味な描写ばかりになるのかなと思いきや、魔王と対等に交渉したり
所属国であるはずの王国に反旗を翻したりと絵になる魅せ場も十分に用意されているため
退屈を覚えることはないですし、話のテンポも良いのでサクサク読み進めることができます。
保身が主目的でありながらも、きちんと領主をやって皆を幸せにするために頑張っているにも関わらず
その行動の結果として原作の死亡フラグである敵を生み出してしまう主人公の不運はご愁傷さまですが。
本筋は外交を成功させ、中立国として更なる飛躍を成し遂げていく主人公。
しかしその一方で、特大の死亡フラグである勇者との敵対が決定的になってしまい…?