忘れられ師の英雄譚   しょぼん(HJ文庫)



絆を信じ仲間を思い続けた男の、絆と記憶の物語。
大枠としては異世界転移&追放ものですね。ただ、追放については、追放する側の優しさが原因であり
追放された主人公側もそれがわかっているため、元仲間を見返してざまぁ! みたいな展開はありません。
主人公の能力自体はパーティーに絶対必要と評しても問題ないくらい強力なものではあるんですけどね。
デメリットである「パーティーから抜けて視界から消えた瞬間、メンバー全員から忘れられてしまう」が酷すぎる…
とはいえ、このデメリットがあるからこそ、絆と記憶の物語として映えがあるのですが。
ラブコメ面は今のところ進展なし。メインヒロインの聖勇女など、恋心持ちのヒロインもいるようですが…

主人公は日本から異世界転移し、絆の女神の力と呪いを授かり「忘れられ師」として冒険する十九歳の青年。
魔王との決戦直前、聖勇女ロミナの優しさによって追放され、異能の代償として仲間たちの記憶から消え去った。
ぶっきらぼうで飄々としているように見えるが、仲間想い。そして強がりでからかいに弱い。
元の世界では物心つく頃には既に両親と死に別れていたため、向こうでの大半を孤児院で過ごしており
決して明るくもなく、孤児院や学校でも一人で部屋や席で静かに過ごす、陰キャ寄りの人間だった。
趣味はゲームで、特に好きだったのが「死にゲー」。

ヒロインは心優しき聖勇女、からかい好きな亜神族、ツンデレな天翔族、男勝りな獣人族、冷静沈着な森霊族。
二巻にてクールな元暗殺者メイドが参入。
一番のお気に入りは精霊などを使役する森霊族の万霊術師、キュリア。
独特の長い耳と琥珀色の長髪が特徴の美少女。
嘘をつかない正直者で、普段は無口で無表情であるため冷静沈着に見えるが、子供っぽい一面も。

現時点(二巻)においての評価はC。
自身を追放した元仲間たちを助けるために頑張る、という追放ものとしては新機軸な作品。
まあ、追放する側とされる側、どちらにも悪意がなく、むしろ好意しかないのだから不思議な話ではないのですが。
主人公からすれば、自分のことを忘れている相手だとは言え、大切な元仲間ですしね。
危機を見過ごせないのは当然でしょう。読者からすればもどかしいことこの上ない構図ではありますが。
いや本当、主人公が良い男すぎる。そりゃ仲間たちからも好かれますわな。
本筋は常夏の街での出会いと再会、そして約束を経て主人公の次なる目的地は魔導都市。