最後の英雄に捧ぐ花嫁学園   御鷹穂積(富士見ファンタジア文庫)



恋を知らない最強英雄による規格外の学園ハーレムファンタジーストーリー。
大枠としてはタイムリープものでしょうか。三百年後の世界で目覚めた英雄が魔法学園に通うことに。
という未来転移(?)ものとしては珍しくない導入から物語は始まるわけですが、特徴が二点。
まず、この手の設定の話は平和ボケゆえに未来世界は過去世界よりも魔法や戦技が廃れてしまっている。
というケースが多いのですが、この作品の場合はしっかりと魔法形態が進化しています。
とはいえ、戦闘方面とは異なる方向での進化なので、主人公の最強は健在であり活躍には問題ないのですが。
もう一点は、主人公が通うことになる魔法学園が、彼に相応しい伴侶を育成するための「花嫁学園」であること。
全校生徒が花嫁候補というインパクトはハーレムスキーとしては快哉を叫ばざるをえない…!
ラブコメ面は主人公が受け入れさえすれば花嫁になってくれそうな異性は相当数いる模様。

主人公は強くなり過ぎたあまり、英雄として平和をもたらした世界に退屈し、未来でなら自身に匹敵する
強敵と出会えるかもしれないと期待を抱いて三百年の眠りについた「最後の英雄」にして最強の魔法使い。
強くなることを望みとしており、強き者との闘争を人生で一番大事にしている。
ゆえに功名心や正義感を持っておらず、世界を救ったのも力試しの延長の結果という部分が大きいが
戦いを好みはしても、他者を傷つけることにも、何かを破壊することにも興味はない。
誰にでも尊大な態度だが、他者を見下しているわけではなく、むしろ真面目で素直な性格をしており
己の過ちに気づけばすぐに修正、謝罪できるし、他者の心を尊重することもできる。
強くなりたいという気持ちが強すぎるがゆえに、色恋の機微に疎い、というか恋という感覚がわからない。

ヒロインはツンデレ優等生、クールな優等生、おっとり狐娘、大食らいなダークエルフ。
忠義厚きエルフ学園長、夢見がちな教師、忠犬な狼娘。
一番のお気に入りは一年生にして「蒼氷姫」の称号を持つウンディーネブルー寮の一年生、サラ=サラキア。
氷のような蒼の長髪、やや高めの身長、氷を模した飾りがついている白いヘッドバンドが特徴的な
全体的にスラッとした体形ながらも胸部の膨らみには富んでいる美少女。
クールな性格をしており、自分から一人になりがちで皮肉っぽい言動をとることが多いが、根は心優しい。
魔法使いとしては優秀だが、魔法があまり好きではなく、静かな部屋で本を読んでいるほうが好き。
偉大な母の血を継ぐ者として、母の代わりに学園に通わされていることに苦悩している。

現時点(一巻)においての評価はC。
花嫁学園というだけあって、カリキュラムに掃除や洗濯、料理や化粧などの花嫁修業があるのが目新しい。
しかも、馬鹿正直に研鑽に励むのではなく、魔法を活用するというスタイルになっているのも面白いですし。
更には、戦闘に関係ないそれらを主人公の魔法使いとしての成長に繋げていくという展開もお見事。
一見すると奇抜さが目立つというか、トンデモな設定でありながらも無駄がないというのは凄いの一言ですね。
キャラに関しては、最強の魔法使いでありながらも花嫁修業な授業に関心を示し、成長していく主人公にほっこり。
そんな彼との交流を重ねることで、自身の可能性を伸ばしていくヒロインたちの姿も良き。
本筋は反旗を翻した己の配下を負かし、再び忠誠を誓わせた主人公はまた花嫁学園の日常へ。