美少女揃いの英霊に育てられた俺が人類の切り札になった件
                                                諸星悠(富士見ファンタジア文庫)



かつて「最弱兵器」と見下された少年の、人生逆転無双劇。
大枠としては教官(に教えを受ける)ものですね。人であれば必ず持っているはずの力を持たないがゆえに
無能と蔑まれていた主人公が、眠れる才能を引き出すことができる師匠達を得たことで躍進し
周囲を見返しながら成り上がりを果たしていくという爽快さのある王道ストーリーになっています。
ラブコメ面は今のところ進展なし。幼馴染のセシリーとはお互いに憎からず思っているようですが…

主人公は貴族の出だが魔力を持たないがゆえに「最弱兵器」扱いを受け、魔導学園を退学寸前の少年。
ある出来事から千年前の戦争にて活躍した英霊たちの弟子となり、隠された才能を次々と開花させていくことに。
自分に自信がなく、面倒くさがりかつ捻くれた性格で、怠惰を愛し、面倒を避けるためであれば労を惜しまない。
魔力なしとしての人生を歩んできたがゆえに、魔術に関する根本的な知識が欠如している。

ヒロインは高慢な魔王、勝気な大天使、朗らかな剣聖、生真面目な従者、清廉な幼馴染。
二巻にて猫かぶりな王女が登場するも、ヒロイン化するかは不明。
一番のお気に入りは主人の命令で主人公と行動を共にする魔王イリスの従者、レイン・バートネット。
金糸を纏ったかのようなさらさらした髪に、コバルトブルーの瞳が特徴の美少女。
所作は控えめで上品、真面目な性格で主である魔王イリスへの忠誠心は高い。

現時点(二巻)においての評価はC。
この手の人生逆転ものにおける主人公というのは、強くなりたい、自分をバカにする周囲を見返してやりたい。
といった渇望を燃料にした向上心に溢れているのが常ですが、本作の主人公はその逆。
本心の全てではないとはいえ、強くなることを望まず、怠惰を好むというアンチヒーロー感が目立ちます。
とはいえ、彼の今まで過ごしてきた人生を考えれば、むしろこうなるのが自然なのでしょうが。
それでも、逃げ続けることをやめ、自分だけのちっぽけな大義名分のために戦う姿は熱い。
まあ、驚異的すぎる才能を腐らせないよう苦労する羽目になっている師匠達はご愁傷さまですが。
本筋は公の場で実力を示し、更には世界に害をなす覚醒者の一人を撃破して周囲を見返した主人公。
しかし覚醒者たちが本格的に動きを見せ始めるなど、先の死闘は避けられないようで…?