学戦都市アスタリスク   三屋咲ゆう(MF文庫J)



自身の望みを叶えるために覇を競う少年少女たちの学園バトルエンターテイメントストーリー。
銃剣から体術、魔法まで何でもありの、個人戦&団体戦な超人バトルがメインになっている作品です。
バトルの扱いはエンターテイメント重視なものとなっていますが、舞台裏は権謀術数が渦巻き
多数の利害が絡み合うなど、かなり不穏な雰囲気が漂っており、一筋縄ではいきません。
とはいえ、主要登場人物はあくまで十代の少年少女。青春な日常パートもちゃんとあるので安心できます。
ラストは世界へテロを企てた黒幕たちの野望を阻止し、三年間に渡る主人公たちの戦いは閉幕。
そして三年後、それぞれの道を歩みながら成長した少年少女たちは再会を果たすのだったエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインのユリスルートに突入したところで終了。
ただ、明確に結ばれたというわけではないので、他ヒロインたちにもまだまだ逆転のチャンスはありそう。

主人公は姉の痕跡を求めて水上学園都市にやってきた少年。
古流剣術の使い手で、全力を出した時の総合的な戦闘力は所属する学園でも屈指の実力。
観察眼&分析力に優れており、対峙する者に底知れなさを感じさせるタイプ。
普段は飄々と緊張感のない態度をとっており、気性も穏やかで自身の感情をあまり前面に出さず
悩み事なども、自分ひとりで抱え込んで他人を頼らない気質の持ち主。
ただ、色恋沙汰には純情であり、女の子がらみのハプニングには慌てふためく事も。

ヒロインは生真面目お姫様、マイペース幼なじみ、腹黒生徒会長、最強の中学生剣士、世界の歌姫。
一番のお気に入りは最強剣士な後輩少女、刀藤綺凛。
若干十三歳にして自身の所属する学園の序列一位を勝ちとった実力者で、剣の腕前は一流。
しかし素は臆病かつ気弱な性格であり、ドジで小動物を思わせる雰囲気を纏っている。
また、抜群の身体能力を持ちながらも泳げない等、剣以外のことはあまり得意ではないといった面も。
ちなみに、銀糸の髪を二つに結び、背中に流している線の細い美少女といった可憐な容姿でありながら
年齢にそぐわないグラマラスな肢体(胸は八十八のFカップ)の持ち主でもあったりする。

評価はC。
一都市内だけの話でありながら、スケールの大きさを見せる世界観など、作品ポテンシャルはかなり高い印象。
バトル描写も緩急とスピード感のバランスが取れており、中々読み応えがありましたし。
キャラに関しては、尖った特徴こそないものの、初期から安定した実力と精神力を兼ね備えている主人公と
良い意味での向上心や積極性、そしてここぞという時に見せる可愛らしさを兼ね備えているヒロインズがグッド。
本編は全ての伏線&因縁を消化しての完結と、話自体は綺麗に纏まっていた印象ですが
後半巻の刊行速度の低下、ストーリー上の都合とはいえ総決算である最後の大会で主人公が準決勝敗退。
ラスボス戦での演出の淡白さなどが合わさって、クライマックスでの盛り上がりには欠けていた感も。