好きな子の親友に密かに迫られている   土車甫(角川スニーカー文庫)



一途な初恋と抗えない欲望、その間で揺れ動く恋物語。
大枠としては三角関係&不純愛ものでしょうか。主人公は初恋の人(夜咲美彩)が好きで
そんな彼にタイトル通り初恋の人の親友(日向晴)が秘かに迫る。主人公の気持ちは知っているのに。
概要だけで判断するならば、晴が悪女に見えてしまいますが、別に主人公と美彩は恋人関係ではないですし
晴の行為は横恋慕とまではいかないわけで、そういう意味では不純愛というほどではない?
まあ、かといってこの作品が単純な三角関係ラブコメかと言えば、そうでもないのも確かなわけで…
肉欲が絡んでくるからこその生々しさがありますしね。あと、皆地味に愛が重いですし。
ラブコメ面は主人公の美彩への恋心は揺ぎ無いものの、晴もそう簡単には引き下がらない模様。

主人公は初恋の人である夜咲美彩に幾度となく告白をしては、毎度玉砕している高校生の少年。
お人好しな性格で、ごく自然に困っている人を助けたり、人に親切にすることができる。
中学時代、自分の意志を持たずにカースト上位層のイジられ役を受け入れていたが
そんな中、夜咲美彩にかけられた言葉を切欠に能動的に動くようになり、同時に彼女に恋をした。
高校に入学してからは一日一回までというルールを自分に課し、毎日美彩に告白している。

ヒロインは才色兼備な同級生、明朗快活な同級生。
一番のお気に入りは主人公の想いに応えられずにいる初恋の人、夜咲美彩。
黒くて綺麗な長い髪、同色の大きな瞳、透き通るように真っ白な肌と、人形のような容姿の美少女。
誰もが認める才色兼備で男子からの人気は高いが、クールで愛想がないため他者を寄せ付けない。
しかしそれは確かな自分を持っていて、その信念に従った行動をとっているだけであり
誰とも仲良くしたくないと考えているわけではないため、距離が近づいた人間には友好的。
父親の書斎にある多数の本を読んできたことから、知識量が多い。
猫が好きで、猫トークが始まると止まらない。高いところが苦手。
小さいころから自分のことが好きではなく、それゆえに恋愛なんてする権利はないと考えている。

現時点(一巻)においての評価はC。
この手の三角関係ものは、主人公に迫る側のヒロインが早い段階で動きを見せるのが常であり
それゆえにもう一人のヒロイン、つまりは主人公に惚れられている側がどうしても後手となってしまうため
存在感で劣ってしまうものですが、この作品の場合は主人公が成長し、初恋を体験するまでの過程となる
中学時代がしっかりと描かれているため、美彩のヒロインとしての存在感&土台は強いです。
逆を言えば、対抗馬が強い分だけ晴のヒロインアピール度も半端ではないのですが。
ヒロイン視点(美彩の分もある)が多いがゆえに心情の推移もわかりやすいですしね。
作者が描きたがっている「恋に落ちて壊れていく女の子」が上手く描写されているかと。
本筋は初恋の人との仲を順調に深めていくも、ある日、彼女の親友に密かに迫られてしまい…?