依存したがる彼女は僕の部屋に入り浸る   萬屋久兵衛(角川スニーカー文庫)



誰もが羨むS級美女が、僕の部屋では隙だらけ―――依存したがるヒロインたちとの大学生ライフストーリー。
現代日本において、大学生以上の人間と、高校生以下の人間を分ける大きな違い。
それは成人という節目があるがゆえの行動パターンの増加、すなわち、未成年時には禁止事項であった
飲酒や喫煙、ギャンブルを大手を振って行うことができるようになっているという点でしょう。
ただ、ラブコメというジャンルにおいて、依存レベルでこれらを行うヒロインというのは需要があまりないためか
ラノベでは成人しているヒロインが登場する物語であっても、絶対数が少ないのが常なわけで。
そういう意味では登場ヒロイン三人ともが酒・パチンコ・煙草にそれぞれ依存している、という設定は斬新。
ラブコメ面は今のところ進展なし。ヒロインたちの好感度自体はかなり高いようですが…

主人公は大学近くで一人暮らしをしている大学生の青年。
ひょんなことから大学でも有名なS級美女たちが理由をつけては部屋に転がり込んでくることに。
面倒くさがりかつ保身に長けた性格で、良く言えば人畜無害でフラット、悪く言えば他人に興味がない。
昔から友達を作るのが大の苦手で、ぼっちではないが、無二の友と呼べる相手は一人もいなかった。
友達は欲しいけどそのための努力はしたくない、という志向の矛盾が欠点。
色恋に関しては、人並みに性欲こそあるものの、典型的な草食系(むしろ絶食系)男子。

ヒロインは酒カスJD、パチンカスJD、ヤニカスJD、世話焼きなJK、引きこもりな配信者。
一番のお気に入りはお酒に依存している文芸サークルの清楚系美少女である女子大生、西園寺春香。
腰のあたりまで伸びた艶やかな黒髪に、垂れ目で柔和な可愛らしい顔立ちの美少女。
酒をこよなく愛しており、その酒量は酒豪どころか酒クズの域に達している。
周囲から視線を集めるほどの美貌の持ち主だが、一人称が「ボク」+独特な口調のせいで孤立しがち。
普段はクールでつれない感じだが、親しい人間に対してはふてぶてしくなる。
中高時代の経験から、女の子に苦手意識を持ちながら、修羅場が怖くて男子も近づけられないようになった。
清楚な容姿に反し、女体や下ネタを好み、AVに詳しく、官能小説を書いていたりと、中身は割とオヤジくさい。
深酒で寝坊しても講義に間に合うから都合が良いという理由で主人公の部屋に入り浸っている。

現時点(二巻)においての評価はC。
癖の強いヒロイン、というのはラノベでは珍しい存在ではありませんが、酒カス、パチンカス、ヤニカス
という、客観的には駄目人間感を前面に押し出した曲者っぷりはあまり体験したことがない癖の強さですね。
まあ、それでも彼女らの容姿がS級なのは否定しようのない事実なわけですし、そんな美女たちが
自分の部屋に入り浸っているというシチュエーションは普通に考えれば羨まけしからんことこの上なし。
しかしこの作品の主人公はヒロインたちに下心を抱かないし、恋愛的に意識することもない。
草食系とは少し違いますが、この主人公だからこそ、サッパリとした関係性を築けるのだと納得できます。
設定だけ見ればいかにも退廃的で、ドロドロな展開に流れそうな雰囲気があるんですけどね。
本筋は西園寺春香に続いて北条夏希との距離を縮めた主人公ですが、彼女たちとの関係性は相変わらず。
順番からすると次巻はカスJD最後の一人、東雲冬実回になるのでしょうか?