彼女でもない女の子が深夜二時に炒飯作りにくる話   道造(富士見ファンタジア文庫)



好きな女の子からの好意を拒絶し続ける青春モラトリアムラブコメストーリー。
タイトル通りの話なのですが、そうであるがゆえに真面目に考えると頭が混乱してしまう作品。
彼女でもない女の子が炒飯を作りに来るまでならまだ理解できますが、深夜二時は大迷惑すぎである。
しかも主人公は一人暮らしではなく、両親と同居しているので当然ヒロインの来訪は目撃されるわけで。
普通に考えれば常識を考えろと主人公一家が怒り、ヒロインが嫌われてしまう流れがしか見えないのですが…
癖の強い登場人物だらけであるがゆえにそんな当たり前の展開にはならず。
そこから始まるハチャメチャかつコミカルでテンポのよい日常は、癖のある読み味に仕上がっています。
ラブコメ面はメインヒロインの桐原銭子と両片想い状態ですが、さて。

主人公は神戸市の国内有数の進学校に通う高校二年生の少年。
185センチ超えの高身長、県大会クラスの生半可な部活動内では圧倒的に蹂躙できる肉体スペックを持ち
高学歴(学年次席)で顔も美形と評して差し支えなしな上、家も超富裕層で高級マンション住まい。
偏食家で酢飯や漬物が大嫌いであり、寿司すら食えないが、キノコ類だけは大好き。
現在では銭子によってある程度は矯正されているが、強烈な能力至上主義者である父親の教育のせいで
根は善良かつ純朴でありながらも、利己主義&差別偏見を隠さないクズ言動をすることも珍しくなかった。
恋愛にはかなり純粋で、恋愛は美しくて尊いものだと信じている。自分のことが好きな女が好き。

ヒロインは貧乏な優等生、同級生、ドSな風紀委員。
一番のお気に入りは主人公のクラスメイトにして風紀委員を務める同級生、阿部(通称べーちゃん)。
180センチを超える長身、それに比類した巨乳、たぬきのような垂れ目、片目を覆いそうな長い黒髪の美少女。
体の大きさとは逆に性格は温厚。学校の風紀の乱れが気にくわないと風紀委員に志願するほど真面目だが
その本性は暴力的であり、人が殴られることも、殴ることも大好き。

現時点(一巻)においての評価はC。
登場人物がどいつもこいつも癖が強いというか、拗らせているというか、変人揃いという印象が強い作品。
まあ、タイトルの時点でもう普通のラブコメにはなりそうにないのはわかりきってはいましたが。
それでいて、コメディ一辺倒にはならず、激重感情が見え隠れしているキャラ同士の関係性があったりと
片時も油断ならないのが凄い。肝心の深夜二時に炒飯を作りにくる理由からして重かったですし。
本筋はちょっと頭の悪い登場人物たちによる青春モラトリアムがまだまだ続いていくようですが…?