飯楽園―メシトピア― 和ヶ原聡司(電撃文庫)
食と自由を巡るメシ×ディストピアストーリー。
行き過ぎた健康社会となり、不健康な人間は社会から隔離・抹消されるようになった近未来日本が舞台の作品。
ディストピアものの割には真っ当な理屈による世界観だなと思いきや、冷静に考えるとかなり酷いなこれ…
特に、不健康な食事(インスタント食品やジャンクフード)がアウトというのがキツすぎる。
主食は不味いカロリーバーとか、食事によるメンタルの健康維持は完全スルーなわけですしね。
だからこそ、作中における「食べるということ、生きるということ」に対する重みが際立っているのですが。
ただ、そのせいで、折角「食」を大事に扱っている作品なのに飯テロ要素が薄いのが難点かも。
ラブコメ面は今のところデレ全開となったメインヒロインの矢坂弥登が一歩リード?
主人公は料理人を志す反健康主義者(アディクター)の少年。
ややぶっきらぼうなところこそあるものの、面倒見がよく、亡くなった両親を大事に思っている。
料理人の息子らしく、仕事がない時は器一杯で量り売りできるご飯を作って売って回っているが
決して慈善事業はせず、対価を払う意思を示さない人間は救わないと決めている、
両親の遺志を継いで、メシの楽園(ファミレス)を作ることが夢。
ヒロインは腹ペコ食防隊員、活発な仕事仲間。サブに包容力のある年下娘なども。
二巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。
現時点(二巻)においての評価はD。
食をメインに扱っている作品は数多いですが、本作ほど食べるということを真摯に描いた作品はないでしょう。
ただ栄養価のあるものを食べるだけ、は命があるだけであり、生きているとは言わない。
食事は人間の三大欲求のひとつですからね。やはりそこには楽しさがなければ…
まあ、少なくとも私だったら絶対にこの日本には住みたくないですね。こんな食生活耐えられるはずがない。
キャラに関しては、甘いようで自分の中での線引きはしっかりしている主人公の強さが良い感じ。
メインヒロインの矢板弥登の愚直な素直さ、まっすぐさもシビアな作風の中での清涼剤になっていますしね。
本筋は農場刑務所に送られてしまった矢坂弥登を助け出す事に成功した主人公。
その後は生き別れの父らしき人物と会うために、北へ向かうことに。