灰の世界は神の眼で彩づく   KAZU(オーバーラップ文庫)



最強の頂きを知る特別な存在となった最弱の少年が、世界の最強たちを凌駕する英雄譚。
大枠としてはダンジョン攻略ものですね。ダンジョンが出現し、超常的な力―――魔力を持つ覚醒者が
現れた現代地球が舞台になっています。なお、生まれ持った魔力量が強さに直結しているという設定なので
魔力量が乏しい主人公は最弱の攻略者であり、周囲から無能と馬鹿にされています。
勿論、そのままでは話が進まないので作中で思いがけず力を手にするというお約束展開になるわけですが
その経緯が「強制的に巻き込まれた生死を賭けた試練をクリアしたから」なのだからこれには納得しかありません。
ラブコメ面は龍園寺彩と銀野レイナの二人に好意を抱いてしまい、結論を出せずにいる主人公ですが、さて。

主人公は「無能」と馬鹿にされながらも、妹のためにアンランクでありながら攻略者を続けている少年。
黄金キューブ調査に参加したことを切欠に「神の眼」という未知なるスキルを手に入れた。
妹である凪と共依存で、彼女に居場所、生きる理由を求めており、誇れる兄になりたいと願っている。
そしてそのためであれば、他者から与えられる屈辱も、自身の命がけの自己犠牲も厭わない。
アンランクで虐められていたがゆえに自分に自信がなく、恋愛に疎く、消極的。

ヒロインは気が強いお嬢様、ミステリアスなS級攻略者。サブに病弱な実妹。
一番のお気に入りは女性の中では世界最強の魔力を持つ二十歳の攻略者、銀野レイナ。
銀色の髪に真っ白な肌、蒼くサファイアのような瞳、そして日本人離れしたスタイルが目を惹くハーフ美人。
マイペースな性格で他人への興味が薄いせいか空気が読めない。常に無表情で淡々としている。
また、異性の前にタオル一枚で平然と現れたりと、羞恥心に欠けるところも。
文字通りの天才であり、何をやらせてもすぐにできるようになってしまう。
兄と父を失い、母に殺されかけたという過去があり、それゆえに精神的に幼いまま心を閉ざしている。

現時点(三巻)においての評価はC。
主人公の抱えるものは勿論、序盤から人が容赦なく死にまくったりと、中々ヘビーな作風が目を惹きます。
だからこそ、どん底にいながらも諦めずに頑張っていた主人公が報われていく様が尊いのですが。
不治の病を患っている妹のため! というわかりやすい動機で動いているので応援しがいがありますしね。
あと、一応追放ざまぁ要素もありますが、そこにはあまり重きが置かれていません。
本筋は世界的テロ組織である滅神教の襲撃を退けるも、日本から追放されてしまった主人公。
めげずに中国のギルドに加入し、更なる活躍を見せる中、敵が大規模な襲撃を企てて…?