霜月さんはモブが好き 八神鏡(GCN文庫)
恋するヒロインが少年の運命を変える学園青春ラブコメストーリー。
大枠としては現代日本の学園を舞台にしたラブコメですね。あからさまなファンタジー要素はありません。
その一方で、メタ要素が濃いというか、主人公がメタ視点を意識しがちという点が特徴でしょうか。
この話は「複数の美少女たちにモテモテなハーレム系ラブコメ主人公そのものな少年」と同じクラスの
モブ男子ポジションの少年が主人公なわけですが、その設定ゆえか、アンチラブコメというか
ハーレムラブコメの悪い側面がよく見えてしまう構成になっているのが印象深いです。
まあ、メインヒロインの霜月さんの可愛さがその癖の強さを上手く中和しているのですが。
ラストは「物語」がハッピーエンドを迎え、そして次は二人の「人生」が始まるのだったエンド¥。
ラブコメ的にはメインヒロインの霜月しほと結ばれ、数年後に結婚式で愛を誓いあって終了。
主人公はある日の放課後、忘れ物を取りに戻った誰もいない教室で眠りこける霜月しほに
遭遇したことで、彼女と秘密の関係をはじめることになった自称モブキャラな少年。
他人のことを一番に思いやれるような優しさの持ち主だが、自分に自信がなく、そんな自分を嫌っている。
穏やかだが、人付き合い、というか自分の気持ちを相手に伝えることが苦手であり
慎重にして臆病、卑屈な性格。ネガティブ思考ゆえに不要な心配までしてしまう癖がある。
時間潰しに本を読むことが趣味を越えて日課になっている。
ヒロインは不愛想な級友。
サブに天真爛漫な義妹、ギャルな女友達、面倒見の良い幼馴染、ざまぁ好きな転校生、ツンデレ幼馴染。
一番のお気に入りはクラスでハーレムを形成中のモテモテ男子・竜崎龍馬の大本命と噂の女子、霜月しほ。
白銀の髪と、空色の瞳がとても綺麗な、他を軽く凌駕するほどの存在感を有する美少女。
身についた共感覚により人の「音」が分かるという特技を持っている。
一見すると不機嫌というか、不愛想にしか見えず、口数も少なく、表情も動かず、声の抑揚も小さいため
無口でクールで頭脳明晰と周囲からは思われているが、実は極度の人見知りで勉強も不得意。
素、というか心を許した人の前では無邪気で欲望に忠実、おしゃべりと感情豊か。
文字を読むのが嫌いなので、本や漫画は読まず、アニメやテレビ、ゲームを楽しむタイプ。
好きなものはお肉や体に悪い食べ物飲み物。
価はC。
最初はなんだこの卑屈な主人公…? と思ってしまいますが、これは卑屈になっても仕方ない。
物語開始時点で義妹、幼馴染、女友達。この全員を「ラブコメ主人公」に取られてしまっているわけですし。
いくら彼女たちに対して恋愛感情がなかったとしても、元々は彼こそが主人公なポジションだったわけで
それをあっさりと取り上げられた上、イチャイチャを見せつけられるとか事実上寝取られですしね…
だからこそ「ラブコメ主人公」よりも彼の事を大事に思ってくれる霜月さんの魅力が輝き
一巻クライマックスで霜月さんのために立ち上がった主人公が格好良く、爽快感抜群だったのですが。
というか「ラブコメ主人公」こと竜崎の独りよがりっぷりが痛々しすぎて見ていて苦痛すぎである。
まあ、最後はきちんと改心し、普通の男子高校生になってはいたので終わり良ければすべて良し?
本筋は「物語」を卒業して現実と向き合ってのハッピーエンドと、この作品らしい綺麗な終わり方が良かったです。