堕天使設定のV系ヴォーカリスト、召喚された異世界で救世主となる
                                              赤石赫々(富士見ファンタジア文庫)



異世界×ビジュアル系。想像の斜め上を貫く激唱無双ファンタジーストーリー。
大枠としては異世界召喚ものですね。主人公が堕天使設定のV系ヴォーカリストであるという点が特徴。
というか、こんな設定は初めて見ました。設定に沿った言動の描写が難しそうだからさもありなんですが。
実際、彼は異世界でも設定を遵守していますが、独特の世界観に基づく言動は変人の一言ですし。
ただ、凡百の厨二病とは違い、彼はあくまで真剣なのが凄い。内心でヘタれているなんてこともないですし
そこに設定でしかなかったはずの堕天使の能力の現実化まで加わるのだからある意味無敵である。
ラブコメ面は今のところ進展なし。

主人公は絶大な人気を誇るビジュアル系バンド「聖なる茨(エルヴァイン)」のリーダーである青年。
解散ライブのフィナーレで異世界・グランハルト国の王女リーゼに召喚され、戦いに臨むことに。
外見は漆黒のアイシャドウ、艶やかなリップ、尖った黒い髪、暗黒のコートと濡れ羽色のファーと奇抜。
救済の黒天使という己の設定に忠実であるがゆえに、詩的な言い回しが多い。
音楽に対して誰よりも真摯であり、無欲の善性の持ち主。「音楽で世界を救う」という夢を掲げている。
理知的で肝が据わっており、クールで自信満々、どこか物憂げというのが常だが、胸に秘めた情熱は人一倍。
争いごとを嫌っているが、守るべきもののため、立ち塞がる試練に立ち向かう行為自体は否定していない。
欠点は方向感覚の欠如、要するに方向音痴であること。

ヒロインは聡明な王女。サブに人当たりの良いJK、ひねくれ王女。
一番のお気に入りは主人公を召喚し、行動を共にすることになったグランハルト国の王女、リーゼ。
知性を感じさせる瞳、銀細工の如き美しい銀髪、あどけなさを残す高貴な顔立ちの美少女。
王の娘でこそあるものの、婚外子であることから正統の王子たちから蔑まれ続けて生きてきており
それゆえに人を避け、書庫で本を読んで育ってきたため、賢さには恵まれているが
対人経験が少ないがゆえに表情を隠すことが苦手で人の好意というものに慣れていない。
勇敢さと大胆さを併せ持っており、人付き合いに関してはとても誠実だが、年頃らしい姿を見せることも。
幼気な外見がコンプレックス。

現時点(一巻)においての評価はC。
ラノベの主人公としては明らかな異端ではあるものの、己が信念に一切のブレがない主人公が素敵。
あと、目立ちまくり系の作品にしては珍しく、外面だけ取り繕っているわけではないという点も新鮮。
まあ、元の世界でも伝説になっているレベルですしね。ハッタリだけではないのは当然ではあるのですが。
あえて難を言うなら言動の独特さですが、その戸惑いも最初だけですぐ慣れますし…
そんな彼に振り回される、おそらくは作中一番の常識人にしてメインヒロインのリーゼはご苦労様ですがw
本筋は成し遂げねばならない六つの試練の内、一つ目をクリアした主人公とリーゼですが、さて。