天帝学院の侵奪魔術師   藤春都(HJ文庫)



英雄と呼ばれていた主人公が、魔術師学院で織り成す魔術バトルアクションストーリー。
主人公が戦争を経た元英雄ということで精神的にも戦闘力的にも成熟しているのがいいですね。
おかげで余計なトラブルも少なくサクサク話が進行しますし、イライラを感じずに読むことができます。
魔術関連の設定は少し特徴的すぎるきらいはありますが、ちゃんと世界観とリンクしているのは良い感じでした。
ラストは大陸の危機を救った主人公たちは再び平穏な日々へ。な、俺たちの戦いはこれからだエンド。
ラブコメ的には決着つかずというか、そもそもロクに進展なしのまま終わってしまいました。
一応ハーレムエンドを示唆するような描写があるにはあったのですが…

主人公はかつて英雄と呼ばれていた少年。
戦争で活躍し、国皇の信頼厚い騎士であり、強力な魔術の使い手で剣や馬の扱いも一流。
……だったのだが、戦争で受けた負傷の後遺症から、魔術を使えなくなった。
とはいえ、それ以外は特に変化はないので、いわばLv99でMP0の勇者といった状態。
孤児の出であり、苦労を重ねて生きてきたため、生活力が高い。
周囲に対してもえらぶったり驕ったりすることもなく、純粋に苦しむ人々を助けたい。
という己の誇りに従って戦い続けてきた。そしてそれは魔術が使えなくなっても変わらない。
ただ、やや自主性に欠けるところがあり、押しには弱い。あと、芸術的感性が壊滅的という欠点アリ。

ヒロインは主人公に憧れる妹姫、主人公を敵と付けねらう公女、クールな妹分。
一番のお気に入りは主人公の孤児時代の妹分、マリノ・フォン。ヴェズレー。
全体的に幼い印象を受ける容姿であるものの、胸は大きい。つまりロリ巨乳。
誰に対しても常に無表情かつ無愛想であり、冷静に人を観察しているような態度が多く
その様は正に静謐な観察者といったところなのだが、実際は感情を表に出すのが苦手なだけだったりする。
照れると何かを抱いたりと、仕草から内心を読み取れることもあるものの、それができるのは主人公のみ。
筆記試験で一位をとるなど、能力的にはかなり優秀で、家事も普通にこなせる。

評価はC。
安心して見ていられる百戦錬磨な主人公に、良くも悪くも自己主張が少ないヒロインたち。
それに騒乱の気配のない平和な世界、などと波乱要素が少ない堅実かつ安定した作品だったと思います。
ただ、それ故に最後まで地味さが抜け切らず、目を惹く華がなかったのが残念だった点でしょうか。
最終巻も、一応伏線は一通り回収されラストも綺麗にまとまってたものの、駆け足で展開が進んでしまい
やれるはず、そしてやるべきだっただったいくつかのイベントは放置のまま終わっちゃいましたしね。
……本編後は主人公が天帝になってヒロイン三人を嫁にするって流れが一番可能性が高いのかな?