囚人諸君、反撃の時間だ 蒼塚蒼時(富士見ファンタジア文庫)
魔力ゼロの元英雄による下剋上学園ファンタジーストーリー。
大枠としては学園異能(魔術)バトルものですね。魔術犯罪者を幽閉し、才能あるものを矯正する監獄学院
という舞台設定こそ特殊なものではありますが、冤罪による皇帝候補から犯罪者という底辺への転落。
蔑まれ、虐げられる日々。しかしそこから運命共同体となるパートナーを得て世界への反撃へ。
と、話の流れ自体は心震える王道を行く、そして燃える構成になっています。
主人公だけが使える魔術の発動条件がメインヒロインであるルナーラと親密になること。
という、いかにもイチャイチャ展開をやれと言わんばかりの設定もグッド。
ラブコメ面はメインヒロインのルナーラと一蓮托生。お互い少なからず好意もあるようで…?
主人公は英雄の息子であり、皇帝候補として活躍していたが、無実の罪でアインズバーグ監獄学院に送られ
更には魔力ゼロとして蔑まれる「絶唱者」と暴露されたことで、獄中でも底辺の存在となってしまった少年。
尊大で直情的、反骨精神旺盛な性格をしており、母親を殺した仇である魔族を憎んでいる。
魔力がなければ一人では何もできない絶唱者であるがゆえに、肩書に執着しがち。
ヒロインは心優しき魔族姫、人当たりの良い幼馴染。
一番のお気に入りは主人公と同室になった、魔族領七大国の一角の元王ルナーラ・クレシェンド。
背中に流れる滑らかな銀色の長髪、まるで宝石が埋め込まれているように美しい赤褐色の瞳と銀色の瞳孔。
そして、両側頭部から前方に向かって生えた銀色の魔石が特徴の美少女。
元王らしく、普段は落ち着きと威厳があり、頭脳明晰。クールな佇まいを見せているが
甘いものに歓喜したり、色恋沙汰には純情だったり、嫉妬するところ見せたりと、素は普通の女の子。
「冷徹な裏切りの姫」として迫害されながらも、人類との共存を夢見ている優しき心の持ち主で
困っている者には手を差し出すのが信条。
現時点(一巻)においての評価はC。
英雄から犯罪者へ、と転落の度合いが酷かっただけに、序盤における主人公の心の荒みっぷりは
見ていてつらいものがありましたが、それだけにルナーラと出会い、協力関係を結んだことを切欠に
徐々に心を開いていき、そして危機を乗り越えていく様が英雄再起物語として映えていて素敵。
パートナーであるルナーラの乙女としての可愛らしさも、公の美しさとのギャップがあって魅力的ですし。
あと、個人的に取り上げたいのは学院の制服でしょうか。ラノベにおける学生が来ている制服というと
現実的にはあり得ない露出度や派手なデザインのものが多いですが、この作品ものはそれが一際。
監獄学院というだけあって、囚人服っぽいエッセンスが多分に含まれている点が目を惹きます。
本筋は脱獄騒動を解決し、自身に罪をかぶせた犯人を捕らえることに成功した主人公。
しかし出所することを選ばず、監獄学院の皇帝を、その果てに人類と魔族の再統一を目指すことに。