放課後の迷宮冒険者   樋辻臥命(GCN文庫)



ゆったり冒険、のんびりご飯、ときどき人助けな新感覚ライトファンタジーストーリー。
大枠としては異世界転移ものですね。といっても、主人公は異世界と日本を行き来できますし
魔王退治やダンジョン踏破といった強制の使命もないので、気持ちを楽にして読み進められます。
一応、凶悪なモンスターが襲ってきてバトル! のような命の危険が迫る展開もあったりしますが
戦闘シーンを含む全体の描写自体は基本コミカル寄りであるため、読み味はあくまで軽め。
日本からの物は持ち込みは自由ということで、お約束の料理革命&飯テロもあります。
ラブコメ面は今のところ進展なし。フラグが立っていると思われるヒロインはチラホラいるようですが…

主人公はひょんなことから日本と異世界ド・メルタを往復できるようになった高校生の少年。
異世界では冒険者として活動しており、迷宮を独り歩き回る様子から異名は「一人歩きの小人」。
お人好しでノリの軽い性格。チキンでヘタレだが、迷宮に潜り慣れたがゆえのドライさも併せ持っている。
楽観的で向上心は強いが、名誉欲や自己顕示欲、金銭欲は薄く、危ないことを嫌っていることもあって
基本的に身の丈にあったことをしているだけで満足と、冒険者としては変わり者。

ヒロインはクールな耳長族、集り屋な受付嬢、勝気な尻尾族、傲岸不遜な師匠、正義漢の強い幼馴染、ボクっ娘傭兵。
一番のお気に入りは迷宮で主人公に助けられた後、奴隷からも解放してもらった耳長族、スクレール。
先をくるりとカールさせた大きなポニーテールの長い銀髪、いつも眠そうな具合に開かれている瞳。
そして、下方へ伸びている、普通の人間と比べて異様に長く、細長く尖った耳が特徴的な美少女。
クールというか、淡々とした口調と性格をしており、結構辛辣なところも。
人間に奴隷にされていたことから、一部の例外を除いて人間不信になっている。
主人公と一緒に食事をした時に味わわせてもらった醤油が大のお気に入り。

現時点(四巻)においての評価はC。
迷宮や魔物、魔法が存在し、冒険者(ランク制度あり)が活躍する中世ヨーロッパ風の異世界。
と、舞台となっている異世界はファンタジー鉄板の世界観になっていますが、話の方向性はやや異端。
主人公が冒険者として迷宮に挑む動機はあくまで道楽であり、確固たる目的や使命はありません。
なので、当然ストーリー性は皆無であり、描かれているのは日常の延長にすぎないわけですね。
とはいえ、王道の冒険譚ならではの重厚さや壮大さがなく、派手なイベントが起きないというだけで
異世界ならではの非日常な楽しさはバッチリなので、読んでいて退屈かと言われれば否なのですが。
この主人公のような異世界ライフをおくりたい。そう思わせてくれる作品です。
本筋はまったり冒険者生活を続ける中、個性的な知り合いも増えてきて…?