絶対に俺をひとり占めしたい6人のメインヒロイン   石田灯葉(角川スニーカー文庫)



俺が負けヒロインを決める、振ること前提の勝ち確ラブコメストーリー。
ラブコメというジャンルにおいて、複数ヒロイン制でなおかつハーレムエンドではない時に必ず現れる存在。
それが主人公に振られてしまい、失恋するヒロイン、すなわち負けヒロインなわけですが…
この作品はそれを作ることが物語の設定と進行上、大前提となっているのが特徴的。
作中、ガチで一人ずつ脱落していきます。なんだかんだで全員にチャンスが残るということはありません。
ラストは幼馴染の品川咲穂を選び、彼女と結ばれて次は夫婦留学プログラムへ、エンド。

主人公は恋愛留学に参加し、結婚相手を決めることになった高校二年生の少年。
妻の死を切っ掛けに、恐怖政治を行うようになった大企業グループのトップである父親を追い落とし
かつてのグループを取り戻すと言う目標のため、地頭の良さを活かしつつ勉強を重ねている。
「荷物は少ない方がいい。物も人間関係も、だ」という格言を信じ、最低限の人付き合いしかしない
ぼっちな人脈ミニマリストだが、それは誰かを傷つけることを望まないという優しさが根底にある。
脅迫という手段を憎んでおり、自分で考えて納得したことしかしない主義。
色恋に関しては、男子校通いということもあり、女性からのアプローチに童貞丸出しな初心さを見せることも。
家訓の「徹底した働かざるもの食うべからず」ゆえに、家柄は良いのに金銭感覚にはシビア。
自分の見た目が好きではないため、写真を撮りたがらない。

ヒロインは最強あざと系アイドル、ストーカー系幼馴染、頭脳明晰なクール義妹。
非日常系ユーチューバー、変幻自在の天才女優、王道クーデレ元カノ。
一番のお気に入りは天才ハッカーな超論理的思考ロリ高校一年生、平河舞音。
肩の上あたりで切り揃えられた銀髪に、サファイアの瞳が特徴的な小柄かつ小顔の美少女。
児童養護施設にいたところをその天才的な頭脳を目的として主人公の父に引き取られた。
名前だけが実の両親からもらったものだから、という理由で自分のことを名前で呼ぶ。
無口で淡白な表情が常であり、クールで論理的な性格。物言いは良くも悪くもあけすけ。
人見知りで、知らない相手と話すことを極端に嫌がる癖がある。夢は(死者と会話ができる)お人形さんを作ること。
恋愛留学参加前はほとんど引きこもりで、リモート通学をしていた。

評価はC。
ハーレム状況から一人ずつヒロインを振っていく、という設定が実にインパクト抜群でした。
バラエティ番組のごとく、ステージ方式で順々にヒロインが絞られていく展開には不謹慎ながらワクワクしましたし。
ヒロインそれぞれに異なる思惑があり、それを解き明かすミステリー要素もありましたしね。
まあ、ハーレムスキーな読者である私としては複雑なところではありましたが…
キャラに関しては副題の「さて、誰から振ろうか」という台詞に反して、誠実な主人公が良かったです。
ヒロインズも六人という大人数でありながら、すぐに区別がつく個性の持ち主たちでしたし。
本筋は構成的に五巻は続くと思っていたのにまさかの二巻で完結。一応話としてはきちんと纏まっていましたし
ヒロイン全員の掘り下げも最低限できてはいたので打ち切りエンドとまでは言えないかもですが…
やはりもっとキャラを深く掘り下げながらラストシーズンまでしっかりやってほしかったですね。
短く終わったがゆえに、結局選ばれなかったヒロイン全員がただの当て馬にしかなっていなかった感がありましたし。