不敗の名将バルカの完璧国家攻略チャート   高橋祐一(HJ文庫)



女好き天才将軍の一発逆転ファンタジー王道戦記。
大枠としては中世ヨーロッパ風のファンタジー世界を舞台にした戦記ものですね。
主人公は聡明な頭脳を駆使する軍師型の将軍で、その智謀で敵を翻弄する様が爽快感抜群。
また、軍師型の主人公は気弱な苦労人タイプが多いものですが、彼の場合は自信家で常にアクティブであり
度胸もあって陽の気に満ち溢れているのが新鮮ですし、暗い展開にはならないという安心感があります。
ラブコメ面はメインヒロインのシビーユと相思相愛ながらも身分差と情勢ゆえに結ばれることは難しく
これを覆すには、政略結婚を不要にするため自国が大国にのし上がるしかないわけですが、さて。

主人公はまるで全てを見通しているかのような作戦で、帝国を相手に弱小国家カルケドを守る若き天才将軍。
不敗の名将として、どんな難局でも軽薄な態度と涼しい顔を崩さない自信家にして
かわいい女の子にモテることだけが生きがいと公言してはばからないお調子者な女好きだが
それは意図してそう振る舞っているだけで、裏ではあらゆる努力と準備を惜しまない堅実派であり
また、心の中にはずっと最愛の女性であるシビーユが住み続けており、行動の全ては彼女のため。
平民出身ながら、父親が王女付きの侍従武官に昇進したことから王女シビーユと知り合い
幼い彼女の遊び相手、つまりは幼馴染となり、父の死後に十七歳で父と同じ役職に就任している。
徒手空拳のみで五人の屈強な兵士を叩きのめせるなど、知力のみならず武力も高い。

ヒロインは王女な幼馴染、真面目な副官、天才幼女秘書官。サブに清楚な未亡人。
一番のお気に入りは実務能力や判断力を買われて主人公の副官に抜擢された女性士官、ウルリカ。
水色のショートカットの髪が特徴的な、まだ少女のあどけなさが残る十八歳の美少女。
元々は敵国であるラコニア帝国の出身で、両親は都で小さな仕立て屋を営んでいたのだが
陰謀に巻き込まれ無残に殺されてしまい、娘である彼女はからくも隣国カルケドに逃れ、軍隊に志願した。
真面目で健気で頑張り屋な性格。しっかり者のようで時々おっちょこちょいなところがある。
事務処理能力が高く、助言も的確、兵士たちの心を掴むのも上手い、副官適正が高い。

現時点(一巻)においての評価はC。
戦記もののラノベというと、軍師は窮地で閃いた奇策に頼るのが常ですが、この作品はやや趣が違います。
布石を打ち、準備を怠らず、どんな状況にも対応できるように幾つもの策を用意しておく。
言葉にすると簡単であり当たり前のことですが、この「勝つべくして勝つ」感が頼もしすぎる…
キャラに関しては惚れた女のために勝つ! という単純明快にして感情移入しやすい動機で戦い
難題の数々を涼しい顔でこなしていく主人公が不敗の名将の看板に偽りなしといった感じで格好よい。
それでいて普段の言動ゆえに女性からは雑に扱われている三枚目感も親近感があってグッド。
そんな彼の本命にしてメインヒロインであるシビーユ王女も、主人公への揺るがぬ信頼が尊いです。
本筋は外患も内憂も制圧し、名声を高めていく主人公ですが、自国が弱小なのは変わらずなわけで…?