銀の十字架とドラキュリア   十月ユウ(富士見ファンタジア文庫)



ボーイミーツヴァンパイアガールからはじまる物語。
特異な体質を持つ主人公と、真祖の吸血鬼の少女の同居&学園ラブコメものですね。
主人公が最初からそれなりに知識を持っていて、なおかつ頭が回るキャラなので話がサクサク進みます。
なので、一々何かあるたびに立ち止まるようなイライラ感を感じないですむのはグッド。
ラストは悲しみを乗り越えて、そして日常になってしまった非日常な日々は続いていくよエンド。
ラブコメ的にはほぼ進展はなく、ヒロインたちが主人公を虎視眈々と狙っている、ぬるハーレムエンド風味。

主人公は吸血鬼の特殊能力を受け付けない体質を持つ少年。
他にも反吸血鬼モードなど、特殊な体質を持っているものの、本人は平穏を望むだけの至って普通の性格で
目立つことを嫌い、斜に構えて常に一歩引いた態度で普段を生きている。
が、意外に面倒見が良く、人外に対して偏見がなかったりと度量の広いところがあり
何事にも物怖じしない豪胆さや、年頃の少年らしい正直な性欲を持ち合わせていたりも。
また、頭の回転が速く、やる気がないように見えて用心深かったりと、味方にすれば頼もしいタイプ。
中性的な顔立ちの美少年であり、華奢で色白な肉体と吸血鬼好みの外見をしている。

ヒロインは真祖の吸血鬼、人造人間、半吸血鬼、クリスチャンな委員長、魔女な生徒副会長。
あと、文字通りの幽霊部員、半人狼の婦警さん。
一番のお気に入りは警視庁所属のクールビューティーダンピール、狩野えるる。
見かけは12、3歳くらいの幼い容姿だが、実は主人公(高校生)と同年齢。
クール&ドライな性格で、口調も常に丁寧ではあるものの、冷淡かつ高圧的で毒舌。
が、その内面は情に篤い部分があったりと、決して冷酷なだけではない。
また、性的な話題になると顔を真っ赤にしたりと意外にも純情な部分もあったりする。

評価はB。
スラスラと読める文章力、丁寧な展開、魅力的なヒロインたち、頭の回る主人公。
と総合的な完成度はかなり高い作品だと思います。書くべきことをちゃんと書いているというか。
とにかく、読んでいてストレスを感じないというのが素晴らしい。
ヒロイン側が強気な話は、大抵主人公が虐げられている部分でストレスを感じてしまいますが…
この作品だと、ヒロインに良い意味での可愛げがあるのでうまく中和されていて良し。
また、主人公の人あしらいの上手さもあるので、素直にキャラ同士のやりとりを見続けることができました。
難があったとすれば、バトル要素ありの話なのに、倒すべき敵(ラスボス)がいない構成だったため
最終巻の盛り上がりに欠けていたことでしょうか。話そのものは綺麗にまとまってはいたんですけどね。