異能学園の最強は平穏に潜む   藍澤建(オーバーラップ文庫)



無能を演じる怪物が学園を影から支配する暗躍譚。
大枠としては学園異能バトルものですね。主人公が最強なのに無能を演じている、という点が特徴。
自分が最強だと自覚していない。実力を隠そうとはしているけど上手くいかない。
みたいな近い路線の作品はよく見かけますが、当作品のようにしっかり油断なく実力を隠蔽している。
というのは珍しいですね。二次創作が流行しだした頃のネット小説ではテンプレと言える特徴だったのですが。
本当はSランクの実力者だけど、Dランクの雑魚を装っている、みたいなw
ラブコメ面は三巻にて一人の少女を悪辣な手段で恋に落とした主人公ですが、さて。

主人公は自らの異能を「目を悪くする能力」と公言している、異能学園に通う少年。
外見は年相応の背丈に体つき。無造作に伸びた髪、暗い瞳。特徴は何を話すにも無表情なところ。
人物像を一言で表すなら「嘘吐き」に尽き、常日頃から嘘を纏い、口から出まかせをふきこぼすが
そのくせ自己主張は激しく、嫌なものは嫌だとハッキリ断言できるという迷惑人間。
平凡平穏を好んでおり、ゆったりと平和な時を過ごしているとなんだか無性に幸せな気分になる。
嫌いなのは、面倒くさいこと、回りくどいこと、自由を妨害されること。
その性根は紛れもなく悪であり、目的のために他人を蹴落とすことになんの感情も抱かない。

ヒロインは正義感の強い級友、人当たりの良い級友、純真無垢な同級生、人間不信な同級生。
あと、ツンデレギャルや同学年最強が昇格候補?
四巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

現時点(四巻)においての評価はC。
異能バトルがメインのように見えて、駆け引きや騙しあいといった頭脳バトルのほうが目立っている作品。
そもそも、語り手である主人公が息を吐くように嘘をつくため、馬鹿正直に彼の台詞や地の文を
正しいと思って読んでいると、読者すら騙されてしまうわけで、色んな意味で気が抜けません。
作中の不気味さでいえば主人公が一番なのは揺ぎ無いのですが、登場キャラの大半が曲者なので
ついつい正義のメインヒロインである朝比奈霞が不憫な目に合うたびに癒されてしまう…
本筋は過去を知る者との邂逅を経て、遂に主人公の過去と目的の一端が明らかに。