かみつら   北条新九郎(オーバーラップ文庫)



島の禁忌を犯して恋をする、掟破りの少し不思議な三角関係ラブコメストーリー。
大枠としては三角関係を主題にしたラブコメですね。物語の舞台となる絶海の孤島があまりにも本土から
離れているため島特有の掟(しきたり)があり、日本の法律より優先されるというのが特徴なのですが
その中でも「未婚の女性は仮面を着けて暮らし、伴侶となる者以外の男性に素顔を見せてはいけない」
というものが作中で最も重要な点になっています。なにせしきたりを破る=死ですからね。
そんな環境なのに、主人公はヒロインたちの仮面の下の素顔を見てしまうのだから正に罪作りである。
ラブコメ面は宇喜多真璃と坂崎直の二人を娶る、つまりは二股することした主人公ですが
実は記憶を失っていただけで、吸血鬼の許嫁と、結婚済みの宇宙人の女王がいる。

主人公は小説家の父親に連れられ、幼い頃から世界中の秘境を旅してきた少年。
引っ越し先である「神面島」にて、ひょんなことから島の当主の孫娘・真璃の素顔を見てしまうことに。
その半生ゆえに、引き締まった肉体と、現地の人々にすぐ溶け込める社交性を持っている。
真面目で落ち着きがあり、思慮深い性格だが、危険や不思議に慣れているため肝が太く
幼い頃から引っ越しばかりだったため、我慢、遠慮、気遣いばかりで本音を見せないところがあるが
その本性は父親に似て破天荒であり、色恋においても「来る者拒まず」なところがある。

ヒロインは勝気な同級生、からかい好きな同級生、気さくな先輩、引っ込み思案な先輩、純真な吸血鬼。
あと、未だ再会を果たしていない宇宙人の女王がいる模様。
一番のお気に入りは高校を卒業して現在は家事手伝いな十八歳、金光文。
神面にかかるほどの長い前髪と、服の形を無視するほど大きく膨らんだ胸(Jカップ)がトレードマークの美少女。
気が弱く臆病で受け身、引っ込み思案な性格をしており、男性恐怖症というわけではないが、男が苦手。
小説を書くことを趣味としており、自分の欲とコンプレックスをたっぷり詰め込んだ作品をWEBに掲載している。
色恋には奥手だが、チョロい。

現時点(二巻)においての評価はC。
少しの不思議が恋物語の程よいアクセントになっている作品。伝奇ものに見えてそうでもなかったり。
しかし、客観的に考えるとヒロインを含めて未婚の異性は皆仮面をつけているとか凄い絵面である。
挿絵は仮面を外している場面もありますが、それだけにつけている場面の異様さが際立ちます。
まあ、仮面の表情は着用者の表情と連動しているので不気味さは薄く、どこかコミカルではあるのですが…
キャラに関しては、父親のせいで波乱万丈な人生を送っている主人公が実に不憫。
その上、ようやく落ち着いた土地に引っ越せたかと思ったら、命にかかわるしきたり破りをやってしまうという。
不思議や危機に慣れているがゆえに変に取り乱したりしないところは頼もしいのですけどね。
本筋は媚薬のせいとはいえ、ヒロイン二人と肉体的にも結ばれ、更に仲を深めていく主人公。
しかし第三のヒロインにして真打ともいうべき許嫁である吸血鬼の少女が来訪してきて…?