女怪人さんは通い妻   折口良乃(ダッシュエックス文庫)



お隣に住む女怪人さんと社畜が繰り広げる異形のラブコメストーリー。
正義のヒーローVS悪の怪人組織が決着した後の現代日本を舞台にしたドタバタラブコメですね。
作者さんの前作「モンスター娘のお医者さん」のヒロインズはタイトル通りモンスター娘だったわけですが
今作のヒロインズはこれまたタイトル通り、すなわち女怪人(勿論見た目は人外)となっています。
モンスター娘と女怪人。イメージだけなら大差ないように思えますが、読み比べてみると違いが結構ありますね。
人間との共生の歴史があるモンスター娘とは違い、女怪人はつい最近まで敵対していたわけで…
生態や文化、価値観や見た目が異なる上、警戒から入らないといけない相手になるわけですからね、お互い。
ラブコメ面はメインヒロインの女怪人ナディブラと良い感じの主人公ですが、さて。

主人公は悪の組織「アステロゾーア」を壊滅させた正義の企業「リクトー」の怪人対策部で働く社畜の青年。
怪人たちの就職先の斡旋、相談業務が主な仕事であり、彼一人が全怪人を担当している。
温厚でお人好し、押しに弱く、責任感が強くて仕事から逃げられない、とお手本のような社畜人格。
怪人に対して悪意や偏見をまったく持っておらず、それどころか外見すら問題視していないところも。

ヒロインは献身的な海魔女、面倒見の良い妖狐、忠臣なウミヘビ怪人、後輩な電子生命体。
二巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

現時点(二巻)においての評価はC。
前作に引き続き、ヒロインが個性的を通り越して挑戦的すぎる作品なので読者をかなり選ぶかも。
見た目の異形感は勿論のこと、メンタリティすら人間とはかけ離れているわけですからね。
人間社会に溶け込もうという思考自体はモンスター娘と同じなのですが、根本的なところの違いが大きすぎる。
そんな彼女たちと密接に関わり、苦労を一身に背負う羽目になっている主人公はご愁傷様の一言。
いや本当、この主人公苦労人すぎである。会社はブラック、好意を向けてくる女怪人はその生態ゆえに
恋愛の成就=同化(要するに自己の消失)と公私ともに常にヘビーな状況なわけで。
そんな中でも、自分とは違う種族と垣根を超えて分かりあおうとする姿は良くも悪くも凄いの一言。
本筋は通い妻な女怪人が増えて心労もマシマシな主人公。更には敵組織どころか自会社にも不穏な様子が…?