僕の欲望は手に負えない   天音マサキ(角川スニーカー文庫)



二次元からやってきたヒロインたちに振り回される主人公のドタバタラブコメディ。
一見ハーレムっぽく見えるこの作品ですが、実際のところハーレム感は弱いですね。
全体的にコメディの色が濃く、メインキャラから脇役まで、やたらとノリの良い面子ばかりです。
主人公を取り巻く環境も、それに依って良くも悪くもかなり無茶のある設定になっている感じ。
会話のテンポはいい感じなのですが、描写は冷静に読むとかなり粗が目立つといったところでしょうか。
主人公とか、三次元に興味がないとかいいながら、次の場面でいきなりヒロインに見惚れてるし。
あと、本人は無害なのに、美少女と親しくなったからと周囲に目の仇にされて集団リンチが当たり前とか…
主人公が理不尽に酷い目にあう=コメディと勘違いしてるんじゃないでしょうか。
ラストはメインヒロインの久壇梨香と想いを確かめ合い、でも騒がしい日々はまだまだ続くよ!エンド。
ヒロインの中から一人を選ぶ、というよりは残りのヒロインが覚醒する前に一人先行逃げ切り。
みたいな感じの、ハーレムっぽくなる前に決着をつけてしまうという珍しい形の終わり方でした。

主人公は突然神様に願いを叶えられて、二次元のヒロインたちと同居することになった少年。
オタク家族に囲まれて成長し、本人も学校でオタク同好会の会長を務めるほどの生粋のオタク。
ただ、オタクとしての拘りがあるわけではなく、どんなジャンルでもOKなタイプ。
スペック的は平々凡々であり、オタク趣味であることを除けば、どこにでもいそうな普通の人間。
基本的には誠実で、良くも悪くも自身の欲望にまっすぐな性質。あと、うっかりと鈍感属性持ち。
また、自己評価が低いところがあり、理不尽な出来事があってもすんなり諦め受け入れてしまうところも。

ヒロインは美少女ゲーム出身の転校生、アニメ出身のくの一、ラノベ出身の百合先輩。
特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

評価はE。
ヒロインはキャラが立っていて、大枠の流れも悪くはないのですが…
神様という全能存在を前提にしていることで、どんな展開もアリになり、話にハリがないのが大きなマイナス点。
あと、登場キャラの大半が不快感を覚えるキャラばかりだったのも致命的でしたね。
神様ウザイ、モブが最悪、主人公がヘタレすぎというか状況を甘んじて受け入れすぎ。
悪いのはどう考えても周囲の方なのに、何故か主人公が一番悪いみたいな展開ばかりなのもきつかったですし。