VTuberのエンディング、買い取ります。   朝依しると(富士見ファンタジア文庫)



「推し」の最期をプロデュースする救済と再生の物語。
最近ラノベでも題材として取り上げられることが多くなってきた「VTuber」を中心に据えた話になっていますが
主人公やヒロインが一からVTuberになる、あるいは燻っているVTuberをプロデュースして人気にする。
のような王道パターンではなく、VTuberの最期をプロデュースするという、逆を行っている点が特徴の作品。
主人公がVTuberを炎上させる側なので、わかりやすい悪人ばかりが出てくる勧善懲悪ものなのかと思いきや
そうではなく、あらすじ通り、最期をプロデュースすることで救済と再生を成すことがメインの優しい物語ですね。
人間の悪意や無情感も強く出ていますが、だからこそ救いとなる善意と愛が引き立っている印象。
ラブコメ面は主人公を振り向かせるべく奮闘するメインヒロインの海那、という構図で進んでいく模様。

主人公はVTuber界隈でも「乃亜推しカルゴ」と一目を置かれるほど、夢叶乃亜を推すことに青春を捧げていたが
乃亜の魂の醜態がネット上に晒され、大炎上し、臨終したことで絶望し、人生が一変した少年。
その後は高校を休学し、VTuberの炎上ネタを扱うブロガーとして日々を過ごしている。
精神的なショックで真っ白に染まった髪と、死んだ魚のような目が外見上の特徴。
クールな性格で言動は基本的にぶっきらぼう。やると決めたことは徹底的にやるタイプ。
他人に恩を売ることはしても、お返しは受け取らない、無償の愛をささげることに慣れている。
ファンの繋がりを大事にするという信念の持ち主で、カルゴ時代に培った繋がりは国外にも及んでおり
当然語学は堪能。そのおかげでワールドワイドなコネも有していたりする。
運営の経営的判断という推しの引退原因のせいで、手前勝手な商売根性がトラウマ。

ヒロインは超美人なファン仲間、流行好きのギャル、クールな同級生。
一番のお気に入りは主人公の影響で夢叶乃亜を推すようになったファン仲間、小鴉海那。
乃亜炎上後、自らもVTuber「鏡モア」になって活動していたが、故あって主人公に炎上依頼をすることに。
肩にかか絹糸のような淡い金髪、くりっとした愛くるしいエメラルドグリーンの瞳。
そして、鼻筋の通った端正な顔立ちの、ハーフ(父親は日本人で母親はイングランド出身)美少女だが
常に注目を集めてしまうがゆえに、当人は容姿にコンプレックスがあり、対人恐怖症気味。
また、上記のことから気が弱いほうなのだが、根はお転婆なのか行動力は高く、圧も強い。
人目を避けるためにインドア街道を極めていることから、手料理はお手のもの。
物心つく前からダンス好きな母に連れられ、バレエスクールに通っていた。

現時点(二巻)においての評価はC。
Vtuberの炎上と引退、それをVtuber側とリスナー側どちらからも描くという珍しい切り口が目を惹きますが
ただの物珍しいだけの一発ネタで終わらずに、しっかりと深みのある物語として成立しているのが凄い。
内容自体は短編連作式で案件を解決していく構成なため、これだけ見るとお悩み解決部活や探偵ものと
似た感じなのですが、この作品の場合はVtuberという軸があるので二番煎じ感はないかと。
キャラに関しては、推しへの愛ゆえに有能すぎる主人公がインパクト強かったです。やはり愛こそが最強。
メインヒロインの海那も、気弱なようで人の心を動かすパワーと存在感が抜群ですし。
本筋は同級生からの依頼を解決した主人公ですが、そんな彼の知らないところで乃亜との関わりが…?