双星の天剣使い 七野りく(富士見ファンタジア文庫)
転生英雄と美少女達の戦乱ソードファンタジーストーリー。
大枠としては同世界への転生ものですね。主人公の前世は千年前の不敗の英雄ということで
戦場においては彼の爽快感溢れる無双の活躍っぷりを楽しむことができるかと。
あと、この作品の特徴は何といっても世界観が中華風(主人公の故国のモチーフは南宋)であること。
転生要素があったり、千年以上を生きるという桃の巨木が存在していたりとファンタジー色もありますが
人名や国名・地名は勿論、衣服や武器も中華風なので新鮮な印象を受けますね。
まあ、カタカナばかりの中世ヨーロッパ風に慣れた読者だと、漢字ばかりなのでやや読みにくさがあるかもですが。
ラストは敵国との天下分け目の最終決戦に見事勝利するも、その裏で自国は滅亡。
主人公らは敵国に組み込まれることになったものの、勢力としては存続を許されるのだったエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの白玲と結ばれて終了。ただ、状況的に一妻で済むかどうかは不明。
主人公は孤児になったところを救国の名将に拾われ、御令嬢の白玲と共に育てられた青年。
前世は「煌」の誇る「双星」の一角にして、悲劇的な最期を迎えるまで、戦場において不敗であり
傷一つとして負わなかった大将軍皇英峰であり、その記憶を受け継いでいる。
現世でも、前世の経験と武芸の訓練の成果で並外れた武力を持つが、前世の頃から文官志望。
性格は大雑把に見えるが、冷静さも併せ持っており、内実は極めて真面目かつ真っ当。
恩義に厚く、友や部下のためならば自分の名誉など気にしないし、恥辱も甘んじて受ける。
ヒロインは慈悲深き令嬢、才気煥発な商人、神算可憐の軍師、生真面目な武姫、純真無垢な皇妹。
一番のお気に入りは 栄帝国の守護神「護国」張泰嵐の一人娘にして主人公の幼馴染、張白玲。
緋色の紐で結い上げられた長い銀髪と蒼の双眸が特徴的な、均整の取れた体躯の美少女。
幼いころから文武に才を示し、容姿に優れ、性格も真面目で慈悲深いことから、民から慕われている。
生まれゆえか実直な印象を崩さないが、唯一、主人公に対しては我儘を言って甘えることが多く
普段は冷静沈着だが、感情が高ぶると大声になったりと、根は感情的。
生まれてこのかた、故郷である敬陽を離れたことがなかったため、箱入り娘度が高い。
評価はC。
敵国は王が超有能で隙はほとんどない。一方所属国は愚王+汚職文官が幅を利かせていて絶賛腐敗中。
早く対策を打たないと敵国に滅ぼされてしまうことは明確。という主人公サイドが中々に厳しい状況から
スタートする戦記なわけですが、その劣勢をひっくり返すのが主人公と仲間たち。
主人公は個人の武勇こそ最強クラスながら、個人の持つ強さだけでは勝てないのが戦争なわけで。
そこを補う智謀や財力を持つ仲間たちとの協力の果てに敵を撃破する様は実に痛快でした。
ただ、敵側にも有能な人材が数多くいるので余裕は欠片もなく、最後まで気が全然抜けなかったですが…
本筋は決戦に勝利、メインヒロインとは結ばれ、宿敵とは和解し、希望溢れる未来へ。
と、形だけならこれ以上なく綺麗に纏まってはいたものの、細かいところで消化不良な部分が多かった上
そもそも主人公側は事実上の敗北(自国滅亡)で終わったため、戦記もののオチとしてはスッキリしなかった印象。