たかが従姉妹との恋。   中西鼎(ガガガ文庫)



初恋の相手は従姉――甘くて苦い恋物語。
従姉妹という存在を核にした恋物語ですね。初恋の従姉、昔仲が良かった双子の従妹などがヒロインにいます。
幼馴染や家族と似ているようで微妙に違う存在、それが従姉妹なわけで。血の繋がりがある他人なわけですし。
結婚は合法で可能ですし、後ろめたいことはないのだけれど、恋愛相手としてはどこか普通から逸脱している。
本作品は、そんな独特の空気感のある関係が色鮮やかに、そしてしっとりと描かれています。
しかし主人公の祖父、舞台装置(本編では既に死去している)でしかないのに存在感強すぎである。
大富豪で稀代の女たらし、子供多数孫多数。そのせいで死後、骨肉の遺産争いを巻き起こした男だからなぁ。
ラストは初恋が終わりを告げ、新たな恋が始まってハッピーエンド。
ラブコメ的には従妹の真辺伊緒と結ばれ、七年後に結婚して終了。

主人公は高校進学を機に大富豪の祖父が遺した都内のマンションで一人暮らしを始めた高校一年生の少年。
真面目で温厚、良く言えば思慮深く、悪く言えば色々と考えすぎてしまう性格をしているが
昔馴染みの従妹・伊緒を相手にする時は負けず嫌いで子供っぽい言動が脊髄反射で出てしまうことも。
中学・高校と野球部に所属しているが、高校では運営方針があわなかったため、現在は幽霊部員状態。
小学六年生の時、初めてキスをした相手である中堂絢音が初恋の女性。

ヒロインはミステリアスな従姉、勝気な従妹、健気な従妹、マイペースな級友。サブに猫娘な従妹、ロリ巨乳従妹。
一番のお気に入りは昔仲良しだった主人公の従妹にして双子の妹のほう、真辺眞耶。
癖のある髪の毛が特徴的な、クラスの隅っこにいるタイプの美少女。
内気でややコミュ障気味な性格のインドア派で、外見もずぼらそのもの。
姉の伊緒が標準語を使っているのに対し、彼女は出身地である三重県の方言のまま喋る。
小学三年生の時、海で溺れていたところを助けてくれた主人公のことをずっと想い続けている。

評価はD。
主人公がヒロインたちに情緒を振り回されまくっているのが割と不憫でした。
気になるクラスメイトができたかと思いきや、幼い頃仲良しだった双子の従妹が転校してきて
トドメに初恋の女性にして初キスの相手である従姉との再会とか、そりゃ地に足が着きませんわな。
まあ、それはそれとして、美しく成長した従姉妹たちと簡単に交流可能な環境なのは羨ましいですし
クラスメイトとの甘酸っぱい関係性も青春全開でニヤニヤできたのですが。
とはいえ、同情できる点はあるとはいえど、この主人公も相当のダメ男ではあったんですけども。
いやまあ、十五歳の高校生男子としては当たり前というか、リアリティのある未熟さだったのでしょうが…
本筋は主人公の長年の初恋が失恋で終わるという、決して円満ではない、ホロ苦さのある結末でしたが
収まるべきところに収まったというか、読後感は決して悪いものではなかったという印象。
ただ、あとがきを読むに、私の推しである眞耶はヒロインレースではノーチャンスだったっぽいのが残念。