変人のサラダボウル   平坂読(ガガガ文庫)



混迷の時代に笑顔をお届けする、天下無双の群像喜劇。
突如地球に転移してきた異世界人と変わり者たちの交流、そして成長が描かれている群像劇です。
ちなみに、主要キャラの何人かはスターシステムというか、作者の過去作に出てきたキャラが
微妙に改竄されたキャラ(男が女になってたりする)になって登場していますが、特に意味はない模様。
大枠としては日常ものになるのでしょうが、登場人物がタイトル通り変人だらけであるため
そこかしこでドタバタ、そして思わぬ交流が発生したりして、賑やかな喜劇を楽しむことができます。
ラブコメ面は主人公周りの色恋が動き始めた様子ですが、さて。

主人公は尾行中に出逢った異世界の皇女サラとなし崩し的に同居生活をすることになった貧乏探偵。
探偵向きの目立たない容姿でスキルも確かだが、経営は上手くいっていない。
かつては大手事務所でエースとして活躍していたが、金になるなら罪もない人を不幸にする仕事でもやる
という方針がどうしても受け入れられず、自分なりの理想の探偵像を追い求めて独立したという経緯の持ち主。
今でこそ現実に慣れて大人しくなってはいるが、根は青臭い正義漢。

ヒロイン(というかレギュラー)は探偵志望の皇女、ホームレス女騎士、非合法セクキャバ嬢。
鬼畜合法ロリ弁護士、カルト宗教家、ハニトラの達人、血の気の多い中学生、城好き事務員。
一番のお気に入りはサラの側近であり、彼女に遅れて現代に転移してきた騎士、リヴィア・ド・ウーディス。
右が青、左が緑の瞳、簪で一つに纏めている長い銀髪。
凛々しい雰囲気と、鍛えられたしなやかな肉体に女性らしい豊かな膨らみを併せ持つ二十歳の美女。
忠義に篤く腕も立ち、正義感が強く一本気と、騎士の鑑のような人間だが、ちょっと残念なところも。
また、名門の出身にして公女の側近を務めている割には、適応力や生存力といった逞しさが並外れている。

現時点(六巻)においての評価はC。
異世界人を筆頭にした変人たちがお互いに影響を与え合い、己の物語を邁進していく様がどこか清々しい作品。
スタートこそ、異世界の皇女が空から降ってきた! と、壮大な物語の幕開けの予感がするものの
別に追手がやってきたり、世界の危機が迫ったり、異能バトルがあったり、みたいなことはなく
どこにでもある、しかしどこにもない世知辛い日常の群像劇がひたすらに続いていくだけになっています。
それにしても、この異世界人たち順応性高すぎだし逞しすぎである。勿論幸運もあるのでしょうが。
本筋はサラに表社会で健全に成長し、女騎士は裏社会でどんどん大物になっていく中、遂に異世界側に動きが。
どうやら三人目の異世界人となる使い捨ての暗殺者がサラを狙ってやってくるようで…?