公務員、中田忍の悪徳 立川浦々(ガガガ文庫)
地方公務員×異世界エルフ。サスペンスフルでハートフルな前代未聞のボーイ・ミーツ・ガール。
ある日突然主人公の前に異世界からやってきた美少女ヒロインが! というのは物語におけるテンプレですが
この作品を読んでから改めて冷静に考えてみると、これってかなり危険な事態なんですよね。
敵対的な異世界人やモンスターも一緒にやってくる、みたいな物語上の危険も勿論ありますが
それ以前の問題として、一番の懸念は異世界人の常在菌が人類を死滅させる毒素を保有している可能性。
うん、それは考えたことがなかったけれども、ごもっともな正論である。確かにそれは怖い。
他にも、食飲料摂取の方法は? 意思疎通は? トイレは? といった他ではご都合主義スルーされている
当然の疑問を正論という名の合理性で突き詰め、アプローチしていく様がこの作品では描かれています。
ラストは後輩と、そして人になった異世界エルフの二人と結ばれてハッピーエンド。
なお、ちゃっかりと三人目の嫁が加わりそうな気配も。
主人公はある深夜、帰宅したところ、リビングで横たわるエルフの少女・アリエルを発見した
区役所福祉生活課で係長を務める地方公務員な三十二歳独身。
長身痩せ型、目にかかるくらいの黒髪短髪、つり目で三白眼(二重が可愛らしい)、仏頂面がトレードマーク。
誠実、冷酷、真面目、正義感、頑固者、責任感が強い、人情に篤い、合理主義者。
知恵の回転が速く、度を過ぎた意志の強さを持っており、一言で言えば己の信念に酷く忠実な性質。
他人に厳しく自分自身にはもっと厳しい性格で異常に公平な人間でもある。
相手が誰だろうとひとたび不義を働いていると知ればボッコボコにこき下ろすし、償うまで絶対に許さない。
その一方で、為すべきを正しく為す者は相応に庇護し、道理の範囲で無礼も許容する。
当然周囲からは浮いており、理解者も極少数しかいないのだが、当人はまったく気にしていない。
趣味は読書。怖いものは未知(知ることで足場を広げねば安心できないから)。
色恋には縁がなさそうに見えて、実は同棲・結婚直前まで行った交際相手が存在している。
ヒロインは異世界エルフ、才媛な部下、エルフ研究家なJK。
特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。
評価はC。
内容を端的に説明するのならば、大の大人たちが異世界人なエルフについて論をかわしあい、試行錯誤する。
ぶっちゃけただそれだけの話で、ファンタジー感こそあれど、後半まではバトルも陰謀も冒険も悲劇も存在しない。
ただ淡々と会話劇が繰り広げられているだけなのに、妙に癖になりそうな魅力があります。
キャラに関しては、己の正義と正論を貫き、妥協しない姿勢がブレない主人公がインパクト抜群。
まあ、正直に言えば上司にも友人にも欲しくはないタイプですが、外から眺める分には面白いですこの人。
読者視点だといらん心配しすぎの一言なんですが、当人は大真面目なのがシュールすぎる…
本筋は話が進行するごとにファンタジー&シリアス感が増していっていましたが、この作品らしい空気はそのままに
その上で、全ての謎と伏線を回収し、主要キャラ皆が不幸にならずで完結と読後感は文句なし。
一巻読破時点ではこんな風に終わるなんて全然想像していませんでしたが、良い意味で裏切られましたね。
結婚後の一ノ瀬由奈のデレっぷりも凄かったですしw