僕らは『読み』を間違える 水鏡月聖(角川スニーカー文庫)
すれ違う恋と、掛け違う推理。失恋の痛みと癒やしを綴った青春ミステリー。
大枠としては主人公が探偵役として動くミステリーものですね。ただ、殺人や窃盗といった物騒な事件は起きず
本関係の謎や日常の謎といった学園ものらしい穏当な謎解きがメインになっており、加えて言うならば
ミステリー要素自体も、本題である青春物語を引き立たせるスパイスでしかないといった感じです。
とはいえ「ではミステリー部分は面白くないのか?」と問われれば否であり、特に本関係の謎に対する
考察などは文学に興味がある読者ならば、十分に共感しつつ楽しめるかと。
ラブコメ面は今のところメインヒロインの宗像瀬奈に好意を抱きつつも、笹葉更紗とも良い雰囲気な主人公。
主人公は芸文館高校・普通科特別進学コースに通う高校一年生の少年。
器用貧乏を自負する濫読家。文学を愛しているが、その発端は気になる女の子に取り入るためだった。
物事を斜めから見るような少し捻くれた性格をしているが、優しいところもある。
基本受け身だが見栄を張りたがるところがあり、本から得た知識をひけらかすこともしばしば。
決して運動音痴というわけではなく、走ったり、飛んだりといったことや顔色伺いは割と得意なほうなのだが
周りに気を使いすぎるがゆえに責任を負いたがらないため、集団競技がダメ。あと学習能力もない。
消しゴムに対し変なフェティシズムを持っており、真新しい消しゴムの腹の部分を撫でるのが好き。
ヒロインは太陽な同級生、氷の同級生、饒舌ミステリアスな先輩、初恋相手な文学乙女。
一番のお気に入りは飄々とした態度からちょっと浮いているクラスメイト、笹葉更紗。
透き通るような色白の肌、まるでシャム猫のような気品に満ちた、はっきりとした顔立ち。
明るい染髪で柔らかそうな長い髪、日本人には珍しく青い実を帯びた神秘的な瞳の美少女。
いつも強気でツンツンした雰囲気を纏っているが、実はただ人付き合いが苦手なだけであり
現在のビッチっぽい見た目に反し、中学の時は黒髪のストレートでおとなしいタイプの眼鏡っ子だった。
中学時代に主人公とは交流があり、彼に対して好意を抱くようになった後、告白のメッセージまで送っているが
それを認識されなかった上、高校に入学し再会した時もイメチェンのせいで初対面だと勘違いされている。
現時点(二巻)においての評価はC。
最初は意味がよくわからないタイトルについては読了後に「お見事」の一言しかでないかと。
ただ、各事件における青春劇が名作品とリンクしているため、読者がそれらの本を読んだことがないと
十全に楽しめないのが難点ですね。別に読んでいなくても問題はないのですが、勿体なく感じてしまいます。
それと、全体に文学が深く関わっているがゆえに、読書カロリーが高めなのも良し悪しといったところ。
キャラに関しては、青春群像劇の色が濃いこともあり主要登場人物全員が主役らしい存在感を持っていた印象。
その中でも主人公の偏屈エセ文学野郎感は際立っていましたがw
本筋は学園祭を経て、新たな登場人物を加えてまた人間関係が進展し…?