隣の席の中二病が、俺のことを『闇を生きる者よ』と呼んでくる
海山蒼介(角川スニーカー文庫)
似ているようで全く違う二つの「闇の住人」たちの学園ピュアラブコメディストーリー。
大枠としては勘違いものですね。この手のジャンルは「弱いのに周囲からは強いと思われている」や
「どう見ても強者なのに自分は弱いと思っている」など、戦闘力関連が勘違いの核になることが多いですが
この作品の場合は「ただの中二病ヒロインを凄腕暗殺者だと思っている」という肩書勘違い。
更には「凄腕暗殺者なのに中二病と思われている」という連鎖まで発生しているのが実に面白いです。
噛みあっているようで全然噛み合っていない主人公とヒロイン・紅音のやり取りは正に抱腹絶倒の一言。
ラブコメ面は徐々に紅音のことを意識し始めていく主人公ですが、さて。
主人公は世界で活躍する殺し屋・コードネーム黒猫(ブラックキャット)の少年。
正体不明の殺し屋・紅竜(レッドドラゴン)を調査・暗殺するため彩鳳高校に潜入することに。
人生の大半を殺し屋として過ごしてきたがゆえに、大抵のことには動じない姿勢・胆力の持ち主だが
学校はおろか、幼稚園や保育園にも通ったことがないため、表社会の常識に疎い。
また、殺し屋としては間違いなく一流なのだが、目を疑うレベルで色々とぬけているところがある。
必要性を微塵も感じないため、という理由で古文が苦手。あと、料理が危害レベルで下手。
ヒロインは中二病な級友。サブに面倒見の良い級友。
一番のお気に入りは世界の寵愛を受ける超越者・レッドドラゴンを自称する中二病高校生、竜姫紅音。
左右で短くすくい取るように纏められたツインの黒髪セミロング、歳に似合わず幼さが全面に浮き出た顔立ち。
そして、口から覗く小さな八重歯、左右それぞれ漆黒と真紅を宿した瞳が特徴的な小柄で華奢な美少女。
自分と同じ中二病(勘違い)の主人公のことを気に入り、彼とお近づきになりたいと思っている。
中二病の皮で強がってはいるが、実際は気弱で恥ずかしがり屋な性格。
時と場を弁えず奔放に振舞う姿と厨二病が災いし、友達が少ないが、当人も人に対する好意や好奇心が
偏食気味であり、気に入った人物にのみ興味を働かせがちなところがある。
これまで人生において、主人公と出会うまで交際経験は勿論、異性の友達ができたことがない。
運動能力、学力ともに壊滅的で、特に学力はテストで0点をとってしまうほど。特技は料理。
現時点(二巻)においての評価はC。
大筋だけ読むと、世界で活躍するような殺し屋がこんなアホな勘違いをするわけねーだろ!
と、突っ込みたくなりますが、偶然と誤解が積み重なるという奇跡の果ての勘違いですからねコレ。
コメディ補正も多分にありますが、これは仕方ないとしかいいようがない。そりゃすれ違うわな、と。
まあ、同類を見つけて歓喜している紅音はともかく、毎度深読みで空回りする主人公はご愁傷さまですが。
あと、紅音の親友兼理解者ゆえに、優秀なサポート役として活躍する九十九も良い味を出しているかと。
本筋はようやく紅音が一般人である可能性を考慮し始める主人公。しかし、彼女には何か秘密があるようで…?