地下鉄で美少女を守った俺、名乗らず去ったら全国で英雄扱いされました。
水戸前カルヤ(角川スニーカー文庫)
ドキドキと甘々の影のヒーローラブコメディストーリー。
大枠としては学園ラブコメですね。タイトル通り、通り魔から美少女(メインヒロインの九条ひなみ)を救った
主人公が全国で英雄扱いされることになり、けれど平穏を優先したい彼は正体を隠し通すと決め…
という、思春期の男の子なら一度は妄想したことがあるであろう、少女漫画感に溢れるベタなプロローグから
始まる物語なわけですが、ベタだからこその面白さが活かされている作品です。
悪いことをしたわけでもないだけに、正体がバレないかとビクビクする主人公はご愁傷さまですが。
ラストはストーカー騒動を解決し、正体を告白してメインヒロインの九条ひなみと結ばれハッピーエンド。
主人公は高校受験の帰り道、地下鉄で突如通り魔に遭遇。転んだ少女を庇うため咄嗟に戦い勝利するも
疲れてそのまま家に帰った翌日、テレビに映った美少女が自分の事を英雄と呼んで探していた少年。
困っている人を見過ごせないお人よしで、保身よりも救助を優先して動いてしまう性格。
自分のことを陰側の人間だと思っているが、コミュ力に問題はなく、割と活動的でもあったりする。
中学一年の時、大切な親友を虐めから守ることができなかったことが心に残り続けている後悔。
色恋に関しては、目つきが怖いという理由で女子からモテたことがなく、彼女いない歴=年齢。
特技は音ゲー(一時期放課後にずっと音ゲーをやっていた)でその腕前は全国ランキング一位。
ヒロインは千年の一人の美少女、ドSな級友、音ゲー友達。
一番のお気に入りは主人公の音ゲー友達兼クラスメイト、佐々波友里。
青みがかった長い髪、スラッと引き締まった体(結構胸もある)、女子にしては高い身長の美少女。
明るくさっぱりとした性格で、コミュ力の塊。ちょっとばかりお調子者なところも。
趣味は音ゲー。お化けや怪奇現象などのオカルトが大好き。料理が壊滅的なレベルで下手。
元々は根暗で自己肯定感がなく、学校でも一人だったが、小学一年生の時に出会った主人公のおかげで
自分に自信を持ち、変わることを決意したという過去を持つ。また、彼には交通事故から救ってもらったことも。
評価はC。
昨今、ラノベ業界ではチート持ち主人公が氾濫し、生死をかけた戦闘を恐れないことも珍しくありません。
しかし、本作の主人公は過去に武術を教わっていたことがあるだけで精神面は素人同然。
だからこそ、勇気を振り絞って刃物を持った通り魔の前に立ち塞がった彼はヒーローと評するに相応しく
人々の賞賛の声を受け、ヒロインに好かれても納得の一言。ご都合主義が多くともご褒美と思えば無問題!
出だしこそ結構シリアスでしたが、それ以降はコミカルな空気が濃いので読みやすかったですし。
ヒロインたちも、主人公に惚れる理由が分かりやすいので恋する乙女の可愛らしさを存分に堪能できました。
本筋は予定調和というか、収まるべきところに収まっての完結と、話自体は綺麗に纏まってはいたものの
三巻完結という短さゆえか、物足りなかった部分も。親友との再会イベントとか絶対あると思っていたのですが…
あと、友里が最初から最後まで負けヒロイン一直線過ぎたのも不満と言えば不満でしたし。