転生魔王の魔術師範   白河勇人(オーバーラップ文庫)



最強の魔王は一人の男によって生まれる――転生×魔王×学園魔術譚。
大枠としては同世界への転生&教官&勇者と魔王ものですね。教え子が魔王の転生体というのが特徴。
なお、この物語では魔王が善、勇者(というか人類上層)が悪として描かれており、それゆえに魔王を殺さんと
人間側による刺客や陰謀が数多く繰り出されるという、結構殺伐とした話になっています。
物語の舞台となるヘルメス魔法学園も派閥間の険悪関係があったりと、気を抜けない環境ですしね。
まあ、事の当事者であるリリィが基本鬱々としておらず、たくましいキャラなのが救いではあるのですが。
ラブコメ面は主人公が故人の魔王セイラに一途なため、今のところ進展なし。

主人公は百年後の世界に蘇り、魔王セイラの魂を持つ少女リリィと出会った魔王軍最強と謳われた剣士。
かつて忠義を誓ったセイラの生まれ変わりであるリリィを再び魔王とするべく、彼女を教え導いていくことに。
クールで落ち着いた性格だが、敬愛するセイラのこととなると、我を忘れることが多い。
セイラへの忠義は比類なく、彼女のためであれば命をかけることすらまったく厭わないが
それゆえに、自分の身の安全を含めた他の事が目に入らなくなることもしばしば。
隠し事があると、慣れない軽口で話をそらそうとする癖がある。

ヒロインは魔王な村娘、学園長なエルフ、情報屋な獣人、勝気な元教え子。
一巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

現時点(一巻)においての評価はC。
かつて自分を救ってくれた魔王に忠義を尽くし、転生後も生まれ変わった彼女を護り導かんとしながらも
交流を重ねていくうちに過去を乗り越え、新たな魔王への忠義を見出していく主人公の姿が感慨深いです。
そんな彼に教導されるメインヒロインのリリィはスタートこそただの非力な村人でしかなく、その上故郷の村は
陰謀で滅ぼされてしまうという悲惨な境遇なわけですが、だからこそ力を身に着けていくと同時に
自身を敵視する相手をも仲間に取り込み、前世と同じで、しかし異なる魔王としての道を歩む様が眩しい。
本筋は帝国の策謀を退け、ひとまずの平穏を得て、順調に魔王への道を歩むリリィ。
しかし、いまだ彼女を認めぬ魔族の重鎮や、取り逃がした元凶の存在などもあり、前途は多難。