スリーピング・ストレーガ 真野真央(MF文庫J)
魔術と節約が交差する、学園バトル&ラブコメストーリー。
なんていうか、テンプレをひねろうとしてひねりきれてない感じですね。設定倒れというか。
とはいえ、世界観や登場人物の土台は結構しっかりしており、安定していて読みやすかったです。
ただ、肝心の節約話そのものがちょっと普通すぎなのが残念なところ。
私でも普通にやるレベルのことを節約戦士だのと誇られても……本筋との関連性もあんまりないですし。
ラストは主人公とリオはバカップル幸せモード、そして最愛の妹は魔王の嫁になりましたエンド。
前者はいいとしても、後者のオチにはポカーンとするほかなかったですよ本当に。
主人公は妹と二人暮らしをしながら節約生活を続ける高校生の少年。
中学のころから兄妹二人で生きてきたため、超のつくブラコン(家族愛)であり、節約家。
趣味は読書で、ライトノベルに嵌ったことから現役の厨二病。また、センスや思考がちょっとズレている。
ただし、あくまで大事なのは妹との現実の生活であり、優先順位は間違えない。
生活費稼ぎに肉体労働系のバイトを主にこなしているため、喧嘩に強いという一面も。
もやし炒めが得意料理であり、その味は周囲に絶賛されるレベル。
ヒロインは怠惰な魔術師のオンリーヒロイン。対抗馬の世話焼きな幼馴染は完全に噛ませ扱いですし。
他に、健気なブラコン妹などもいるものの、こちらはあくまで妹ポジションの模様。
一番のお気に入りは突然同居生活をすることになった少女、鍵宮リオ。
日本人形を髣髴させる長い黒髪と、幼くも端正な顔立ち、中学生にしか見えない体型の持ち主。
自堕落で、常に尊大な態度をとっていて、人を弄るのが好きで前職ニート、と紛れもないダメ人間。
しかしそれは表面上のことで、実際は優秀な姉にコンプレックスを持ってふてくされているだけ。
また、人見知りの激しい性格で、大声に怯えてしまったり、色恋事には純情だったりと小心な一面もあったり。
そして、動揺、あるいは緊張すると口調が丁寧語になってしまう。
反面、一度他者に懐くと、拾われた捨て猫のように心を開いて態度がストレートになったりする。
評価はB。
ヒロインである鍵宮リオの可愛らしさの表現が実に秀逸な作品だったと思います。
主人公もやや鈍感&ヘタレなところがある以外は気持ちの良い奴で、尖がったところもないですし。
何より、この二人のやり取りが初々しすぎてニヤニヤが止まらず、ラブコメパートだけでガッツリ満足できます。
リオの姉の存在だけは鬱陶しかったですが。
本筋は荒削りというか、段取りが悪い感じでしたが、最後は一応上手いことまとまって終わっていたかと。
ただ、あとがきを見る限りプロトタイプ(庶民的な話&節約重視)の方が面白そうだったというのが…