魔王と勇者の戦いの裏で   涼樹悠樹(オーバーラップ文庫)



伝説の裏側で奮闘するモブキャラの本格戦記ファンタジーストーリー。
大枠としては異世界(ゲーム世界)転生ものですね。魔王と勇者の戦いが世界の命運を決める。
そんなRPGゲームが物語の舞台なわけですが、一風変わっているのは主人公の転生先。
この手の作品だと、転生先はゲーム主人公かラスボス、近年だと噛ませキャラや親友キャラ。
というのが定番ですが、本作では名前すら出ず襲撃イベント中に死亡してしまうモブ貴族という。
更に言えば、転生先がどうあれ、やる気のあるなしに関わらず、原作のメインストーリーにガッツリと関わるのが
常なのに、この作品の主人公はそうならず、タイトル通り裏側で活躍していくという構成なのが面白い。
ラブコメ面は三巻で登場した勇者の妹がヒロインとなるようですが、現状ではまだフラグはなし。

主人公は自身がゲーム世界に転生したことを思い出した元会社員にして現在は貴族の少年。
ゲーム中では魔王軍による王都襲撃のイベントで名前も出ずに死んでしまっており
そんな悲劇を回避するため駆け回ることになるが、ゲーム本編にない展開やら何やらのせいで胃痛が絶えない。
慎重かつ用意周到、努力家(死にたくないだけ)な性格で、気が利くタイプでもある。
家は文官系だが、決断力があり、前線で槍を振るいながら指揮をとることができるなど、将才の持ち主。
自分が生き残ることが第一ではあるが、助けられる人は助けたいと考えている。
転生前は日本の会社員だったため、価値観も日本人的であり、平民を見下したりするということはない。
学園では優等生で通っており、女の子からはクールでストイックと言われている。

ヒロインは勇者の妹。
四巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

現時点(四巻)においての評価はC。
RPGではお約束にして華である「魔王と勇者の戦い」ですが、当然世界はそれだけで回っていません。
主役たちの伝説の裏ではそれぞれの立場で戦いを繰り広げ、伝説の一助となっている存在が多数いるわけで…
この作品はそんな裏方を務めるキャラにスポットを当てているわけですが、この発想には感心の一言。
原作メインストーリーに直接かかわらないとはいえ、間接的には大きく影響を及ぼす活躍を見せてくれる
主人公の奮闘は見ていて痛快ですし、ゲームで描写されていなかった部分がしっかりと掘り下げられていたり
ゲームにおける疑問(何故勇者への支援が少ないのか、辺境の街のほうが品揃えがいいのは何故?)に
独自解釈で理由付けがされていたりと読み応えがあるのもグッド。まあ、その分読書カロリーは高いですが。
本筋は魔王軍を相手にした一連の戦いの功により、代官として他領に向かうことになった主人公。