呪われて、純愛。   二丸修一(電撃文庫)



記憶を取り戻すにつれ、純愛の呪いに蝕まれていく少年と親友同士である二人の少女の物語。
大枠としては三角関係メインのラブコメですね。ヒロイン二人が親友同士という時点でドロドロ感が凄いですが
この作品はそこに主人公が記憶喪失という要素が加わり、記憶喪失前は二人ともが恋人だった。
更に、片方はそれを認識していて、もう片方は知らないという。もうこれだけでももう修羅場&地獄確定である。
こんな歪な関係性が構築されていたということは、当然記憶喪失前には様々な謎と思惑が絡んでいたわけで…
それが徐々に明かされていくミステリー性と不安を煽る展開から目が離せません。
ラブコメ面は魔子が身を引き、白雪とやり直すという形におさまった主人公ですが、さて。

主人公は交通事故によって知人に関する記憶のみが喪失してしまった少年。
冷静で客観的、感情表現が苦手で普段表情をあまり出さないが、敏感で気が利くタイプ。
それでいて、人を顔や肩書で判断しない部分があり、そういったところがすっぽり抜けていたり
自分自身についてはびっくりするほど計算に入れていなかったりと、ピンポイントで鈍いところがある。
小六の時の白雪との駆け落ち事件以降、彼女にふさわしい人間となるべく努力し続けたため、文武両道。

ヒロインは清純素朴な恋人、魔性の魅力を持つ恋人。
一番のお気に入りはもう一人のヒロインである才川魔子の親友にして主人公の恋人、丹沢白雪。
髪は肩ほど、背が低く、華奢で小動物のような大きな瞳を持つ、保護欲を掻き立てるタイプの美少女。
心優しく献身的な性格で善性の塊。おっとりしていて少々天然っぽく、鈍い部分があるが
相手が親友であっても、悪いことを悪いと言い切れる芯の強さを兼ね備えている。

現時点(一巻)においての評価はC。
タイトルにもある通り、これは純愛物語です。主人公は自覚的に二股しているのに純愛?
と考えてしまうのが自然ではありますが、これはあとがきで書かれていたように「多重の純愛物語」なのでしょう。
ヒロイン二人の名前が白雪と魔子ということで、童話の白雪姫がモチーフになっているのでしょうが…
モチーフ元での関係性を考えると、作中で彼女たちが対比的な描写をされている点に怖さが増します。
というか主人公と魔子の背景が重い! 白雪は今のところ白のままですが、次巻でひっくりかえされそうな予感も。
本筋は全ての記憶を取り戻し、最愛の少女と別れ、共犯者は姿を消し、やり直しの道を歩み始めた主人公。
一見すると決着がついたように見えますが、どう考えても再会後また地獄になりそう…