魔法史に載らない偉人 秋(電撃文庫)
不当に解雇された魔導師が魔法史を揺るがす新魔法を完成させる、痛快魔法学ファンタジーストーリー。
大枠としてはざまぁものということになるのでしょうか。価値を示す「学位」を持たないがゆえに
間違いなく有能であるにもかかわらず冷遇され、周囲から侮られている主人公が新魔法を完成させ
見下してきた者たちを見返し、更には恥知らずにもその成果を強奪しようとしてきた悪党たちを
圧倒的な力で返り討ちにしていく、という爽快感溢れる物語になっています。
あと、もう一つの軸として、孤児院から引き取った義娘シャノンと育む家族愛もあり、緩急は申し分なし。
ラストは全ての黒幕を撃破し、主人公は今日も最愛の義娘を教え導くのだったエンド。
恋愛的な意味でのヒロインは結局登場しないまま終了。
主人公は優れた能力を持ちながら「学位がない」という理由で冷遇を受ける一級魔導師。
史上十三番目の基幹魔法「歯車大系」の実現を目指して研究に明け暮れている。
銀の髪に金色の瞳、歳は二十を過ぎているのに少年に見紛うほどにあどけない顔、長身の青年。
傲慢、偏屈、冷血、物言いが率直で社会性がないなど、他者から好かれにくい性格をしているが
魔法には誠実で、己の正義を貫くためであれば、魔法省のトップにたてつくことすら厭わない。
娘として引き取ったシャノンに対しては、ぶっきらぼうなようでかなり甘い態度をとりがち。
ヒロインは無邪気な義娘。
特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。
評価はD。
設定や世界観がしっかりと作り込まれている作品ですが、それゆえに読書カロリーが高いのが難点。
特に魔術体系関連の説明については、回りくどさもあって途中でギブアップしたくなるかも。
その分、敵側の頭の悪さ、愚かさが酷いことになっているのである意味バランスは取れているのかもですが。
キャラに関しては、とにかく健気で子供らしい可愛らしさを前面に押し出してくるシャノンが清涼剤。
欲と悪意に塗れた大人が目立つだけに、子供の愛らしさが際立っている…
そりゃこんな義娘が出来たらクールな主人公も段々絆されて親バカになっちゃいますよね。
本筋は主人公とシャノンを取り巻く問題を解決しての完結と、話としては奇麗に纏まっていたかと。
ただ、やはり恋愛要素なしであったがゆえに華やかさに欠けていたのが…