学園の聖女が俺の隣で黒魔術をしています   和泉弐式(電撃文庫)



聖女と崇められる先輩と出会ったことで、かけがえのない青春を送ることになる、ある高校生の少年の物語。
大枠としては学園を舞台にしたお悩み解決系の特殊部活動(?)ものですね。
黒魔術というダーク風味なキーワードに反し、陰湿さや暗さといった後ろ向きな要素は少なく
むしろ、ダブルヒロインのポンコツさからくるほのぼの&コミカル感が目立つ作風になっています。
ラブコメ面は一巻冒頭で本編から十年後の主人公がプロポーズを行おうとしていますし
作中でダブルヒロインのどちらかと結ばれる流れになるのは間違いなさそう。

主人公はミッションスクールの神河学園に入学したばかりの高校一年生の少年。
「空気のように生きる」ことが信条で、その影の薄さから、家族以外の誰も彼の顔と名前を憶えていない。
過去に虐められっ子を助けて、人間の悪意を受けたことが原因で人と関わることを避けるようになった。
目立つことを好まず、誰かと話すよりも一人で静かに過ごすことを好んでいる。趣味は読書。
入学までは勉強ばかりにしていたため成績優秀で、高校入試では首席となり、新入生代表に選ばれている。

ヒロインは聖女な先輩、クールな天才娘。サブに凛々しい先輩、男勝りな同級生、穏やかな担任教師。
一番のお気に入りは「〇〇の確率―――××%」が口癖な天才同級生、氷室凛。
目鼻立ちのはっきりした顔に、細いフレームの眼鏡をかけた長髪の美少女。
その無表情な美貌と抑揚のないクールな物言いで周囲を威圧してしまうがゆえに友人がいないが
実は寂しがり屋であり、友達を欲しがっている。そして、感情を表に出すのが苦手なだけで負けず嫌いな性格。
データ至上主義で、頭には全校生徒のデータが入っており、彼女の予測は驚くほど的中するのだが
それゆえに「そんなのデータにありません…!」と追いつめられることも。
父親が有名な科学者で、自身も論文をいくつも発表して賞をとったりもしている。

現時点(一巻)においての評価はC。
主人公の異質さが印象に残りまくる作品。あらすじだと攻撃的な非リア陰キャって感じですが…
良く言えば穏やか、悪く言えば冷めてるだけ。卑屈さはなく、コミュ力も高かったりと印象は逆転します。
しかし、この存在感の薄さはなんなんだろうか。名前も実績も目立ちまくりなのに、認識はされないとか
それこそ黒魔術でもかけられてるんじゃないかと言いたくなるほどの異常性である。
冥と凛のダブルヒロインも、スペック自体は高いのにポンコツ成分が際立っているところが可愛いですし
主要登場人物のキャラ立ちっぷりを中心として、良質の学園青春物語が楽しめるかと。
本筋は秘密結社ぐりもわぁるの一員として、呪われた青春を続けていく主人公ですが、さて。