しゅらばら!   岸杯也(MF文庫J)



同日に三人の少女から偽彼氏依頼を受け、擬似三股をかける羽目になった少年の苦労ラブコメディ。
それぞれの事情による義務的関係から、徐々に主人公に好意を持っていき
自分の感情に右往左往しながら行動に走るヒロインたちの姿が実にラブコメしてます。
設定やタイトルで重要視されているっぽい修羅場は、最初は不安要素でしたが…
よくある「主人公だけが修羅場を治めようとして苦労する」タイプの修羅場じゃないのでいい感じです。
全員が全員、それぞれ苦労してるので見ていて不快感を覚えないんですよね。
ラストはメインヒロインの星川早乙女と結ばれてハッピーエンド。

主人公は女性に好かれたいがために色んな努力をこなしてきた思春期の高校生。
女性を不快にさせず、喜ばせるための様々な技能を一定以上のレベルで保持している。
また、女の子のためであれば努力を惜しまず、どこまでも誠実であろうとする気概を持っている。
しかし、肉食系は嫌われるのでは?とずっと受身の姿勢でいたために周囲の女性からは「いい人」認識。
また、あまりに女性重視気質なために、趣味などの自分自身を表す個性がない。
というよりも、女の子のご機嫌を取るのが彼の趣味であり個性であり、全てだといえる、ある意味凄い。

ヒロインは演技派クラスメイト、最強幼馴染、箱入りお嬢様。
演技派クラスメイトの妹がサブポジションに。六巻登場の妹はあくまで傍観者ポジションの模様。
一番のお気に入りはバイト先の後輩で箱入りお嬢様でもある天弓院真愛。
とても純真で素直、疑うことを知らないといった気質で、絵に描いたような深窓の令嬢ヒロイン。
見聞を広めるためのバイトにメイドカフェを選ぶ辺り、明らかに常識のネジが外れている。
とはいえ、上流階級の令嬢らしく人に命令することに慣れており、人の上に立つ者としての風格もあったり。
意外に計算高いというか黒い部分もあり、いわゆる「笑顔だが、目は笑っていない」表情になることも。
欠点は電子機器に触れるだけで故障させてしまうことと、世間知らず(メイドの教育に問題あり)なところ。

評価はB。
修羅場もの、ということで身構えていたのを良い意味で崩されました。
主人公が誠実に頑張ってる姿は、状況はともかく見ていて応援したくなりましたし。
この手の作品には珍しく、ヒロイン側が四苦八苦してるのも意外性があって面白かったですしね。
決着は予定調和的にメインヒロインが選ばれて他の二人は振られるという形でしたが……
そこに至るまでの過程が実に丁寧に描写されており、正に青春の一ページといった感じにまとまっていたので
ハーレムスキーの私でも、素直に最後まで楽しむことができました。
あと、最後の最後まで特定ヒロインに露骨な贔屓がなく、誰が選ばれるかわからなかったのも評価点。
サブキャラに関しても、おまけの十一巻でちゃんと補完がされており、痒いところに手が届く良作品でした。