六畳間の侵略者!?   健速(HJ文庫)



主人公の住む六畳間の部屋に次々と侵略を仕掛けてくるヒロインたちとのハートフルストーリー。
…がメインではありますが、段々ファンタジーやSF、タイムトラベルなどが入り混じって闇鍋状態が凄いことに。
しかしそんなごちゃ混ぜ設定が一本化されていく伏線消化開始からの流れは見事の一言。
中盤からはバトル要素も多めになってきて、燃える展開もチラホラ見えるように。
特筆すべきは、主人公とヒロインたちが絆を結んでいく過程、つまりフラグ立ての丁寧さですね。
ここまで関係構築に描写量を割く作品は珍しい。反面、序盤がやや退屈という欠点もありますが。
ラブコメ面は、ヒロイン側は浮気許容確定なので、ハーレムの下地はバッチリですが…?

主人公は元野球部所属の少年。
気配りができ、困っている人は見過ごせない、打算や下心なく人助けできる、度胸満点、無駄にヘタレない。
と、およそ正統派主人公に求めるべき精神的素養が全て備わっていたりする。
しかしその人格形成の切欠は、過去に起きた母の死からの歪な博愛精神含みのもの。
量はなくとも質的な意味でモテるタイプ(本人に自覚はない)であり
ハーレム系の主人公にしては珍しく、アクの強い女性陣に囲まれていても我を通せる強さがあるのは好印象。
また、いきなり宇宙人や地底人、魔法少女に幽霊が現れてもあまり動じない辺り、かなり大物っぽい。
ただ、あれだけの美少女達に囲まれていながら、欠片も思慕や邪念を抱かないのは青少年としてどうだろう。

ヒロインは幽霊少女、魔法少女、地底人、宇宙人のお姫様、そのお付の騎士、部活の先輩。
眼鏡科学者姫、元敵の魔法少女、最強大家さん。あと、一児の母な皇帝がヒロイン候補?
一番のお気に入りは部活(編み物研究会)の先輩、桜庭晴海。
男性に対する免疫が薄いが、主人公は平気という黄金要素を持っている。あと病弱&黒髪ロングは正義。
ヒロインの中では(表面上)唯一の一般人にして病弱持ちということもあり、主人公からの扱いが最も良い。
控えめで思慮深い性格なのだが、時折普段は隠れている意志の強さを見せることも。
主人公たちと関わるようになってからは、お茶目で明朗な顔も見せるように。

現時点(十八巻)においての評価はS。
エンディング次第で評価を落とすかもしれませんが、現時点では文句のつけようがない作品です。
ひとつの読み物としてもハーレムラブコメとしてもかなり高レベルですしね。
個人的には、ちゃんと段階を踏んで主要キャラの絆が育まれていることに高得点をつけたいところ。
ヒロインたちも、本気で恋をして愛を育んでいる感が伝わってきて実に健気可愛いですし。
ホームドラマ的要素が強いために、ラブイチャ描写はやや薄めですが、読んでいて飽きがきません。