あとがき
Kanon Trilogyを読んでいただき、ありがとうございました。
1年半かけて書いてきたこの物語が12月30日という名雪とあゆの誕生日のちょうど真ん中で終わったのには何か運命めいたものを感じます。
この物語を書こうと思ったきっかけは友人との会話からでした。
この物語を書いておいてこんなこと言うと変に思われるかもしれませんが、僕は名雪シナリオがそこまで好きではありませんでした。
しかし、電話越しの友人は名雪シナリオが一番よかったと言ってやまない。
で、結局電話越しに大口論となり、どういうわけか『ならば納得のいく名雪シナリオを書く!』という方向に。
僕が名雪シナリオを苦手としていた理由はただ一つです。
祐一の勘違いで恋人の立場を勝ち得たという明らかなマイナス要素を持っていたということです。
覚えてらっしゃらない方にその部分を書くと以下の部分です。
>7年前の少女…。
>そして、すぐ近くにいる少女…。
>ずっと重ならなかった、ふたつの面影が、
>今初めて、ひとつになって見えたような気がした。
つまり、祐一はあゆとの思い出を名雪に重ねるという勘違いをして名雪と恋に落ちたということになるのです。
いや、好意的に解釈のしようもあるでしょうが、かなり苦しい物になるでしょう。
いずれにせよ、そんな勘違いで結ばれて二人は本当に幸せだったのか?
それがあって名雪シナリオはどうしても好きになれませんでした。
いや、まあドロドロの恋愛劇も物語としてはアリですが(苦笑)
それにしても個人的にはあまり面白いほうだとは思えないという。
そんなわけで、口論をした友人と相談の上、『あゆENDから始まる真の名雪シナリオ』というものを作ってみようということになりました。
それがこのKanon Trilogyの生まれた原点です。
あ、ちなみに少し解説というか……疑問に思われた方もいらっしゃると思うので補足を。
3章の名雪の夢を見る祐一の話ですが……
二人の意識がリンクしたという見方がごく一般的だと思えます。
しかし、説明無しにそれはご都合主義過ぎる…という方は2章外伝 『Prelude Kanon』 を読んでみてください。
それで納得できると思います。
……多分(ぇ)
…と、話を戻しまして。
書くに当たって基盤にしたのはOLSONさんのDNML(SS)『もう一つの可能性』と一ノ瀬香さんの同人誌『ONE’S HAPPINESS』でした。
前者は描き方の基盤となった重要な作品です。
既存の事実を別の一面から見て、また別の世界を構築してみるという手法はここが元になりました。
作者のOLSONさんには感想で知り合った関係で、主に2章から校正に協力してもらいました。
本当に、色々とありがとうございます。
この場を借りて、お礼を申し上げます。
OLSONさんが各作品で掲げたテーマが『あなたはその人のことをどれだけ知っていますか?』・『今あなたの見ている世界は絶対の真実ですか?』ならば、このKanon Trilogyのテーマはその二つを含みつつ『奇跡はあなただけの物ですか?』という感じでしょうか。
あ、ちなみに、3章の某日にあった祐一と名雪の『はじめてのおふろ』をOLSONさんが外伝的にSSで書いて下さってます。
興味ある方は『はじめてのおふろ』(15禁)もどうぞ。
※『はじめてのおふろ』→http://serura.hp.infoseek.co.jp/ss/gift/olson/hajihuro/hajihuro0.html
そしてもう一方の一ノ瀬香さんの『ONE’S HAPPINESS』はあゆの位置付けの基盤となりました。
同人誌の内容をかいつまんで解説すると……
夢の終わる日に現れた天使さんに話し掛けられたあゆが、『みんなが幸せになる』ことを望み、天使さんに『そんな大きな頼みごとは面倒みきれない』と断られる。
そして次の瞬間病院のベッドで目覚めたあゆに天使の声が響きます。
『だから……自分で叶えるんだよ』と。
大幅に別の物になっている気もしますが、色々な意味で根底となった作品です。
その作品の感想関係でお知り合いになって、最終ページの天使の人形さんを描いて頂きました(コミケのスケブリクエストで)。
ありがとうございます。
また、かのんSSLinksの雑談掲示板の不特定多数の皆さんにも多大なお礼を申し上げます。
この作品を仕上げる際、あの場所で取り上げられていた議題は色々な要素を物語に盛り込む参考になりました。
どれがそれだったのか、ということに関しては多すぎて語りきれません。
というか、自分流のアレンジ加えて取り込んだので議題の原型はとどめてないかも(笑)
いや、ほんとあそこはネタの宝庫ですね。
これからも活発に有意義な議論が続けられることを願ってます。
そして、連載中続きを書く活力の元とも言える最新話へのコメントを続けて下さった世界の趣味管理局の局長ことworld様。
途中で脱鍵宣言されて非常に残念でしたが、それはそれ、これはこれ。
長きに渡る応援、まことにありがとうございました。
※コメントは大幅改訂に伴い不整合を生じたので現在の物には残っていません
もうなんというか、素直に色んな人に『ありがとう』ですね。
ここで紹介していない方も、もしかしたら出会ったことのない方でも、どこかで何が欠けたらこの物語は完結しなかったでしょう。
そういうわけで今一度心の底から……
ご愛読ありがとうございました。
(2003年12月31日)
公開からしばらくが経過し、感想もある程度いただいたある日のこと。
1章と2章が、1年以上前の文章のままほとんど手直しされていないことが気になりました。
見直してみると、途中放棄されても止むを得ないほど雑な文章と、荒い展開に見える箇所が目立ちました。
特に3章と比べると、1章の描写の薄さは明白。
そこで、書き上げるまではDNMLの立場から書いてきましたが、今回はSSの方から見直して修正を行うという決意をすることにしました。
結果、DNMLの時には見えていなかったことが見えてきて、自分の中では今回の見直しによる完全版への移行はよかったと思っています。
というか、3章はOLSONさんに随分校正で色々加筆・修正を細かく指摘して頂いていたから、余計に1章と2章の酷さが目立っていたわけで、OLSONさんどうもすみません。
3章の修正に音を上げないで
(ちなみに、その校正メモの容量、実に180KB)
、最初から1章、2章もお灸を据えていただくべきでした。
そんなわけでの完全版移行です。
そして、その決意の力をくれたのはやはり読者の方々の反応でした。
皆さん、本当にありがとうございます。
(2004年4月14日 完全版への移行を終えて)
そういえば誰からも訊かれてないということは、読んだ方はその意味に気づかれているということなのかもしれませんが、一応補足です。
『原作名雪シナリオで名雪は秋子さんに依存していなかったか?』ということですが、Trilogyで語られた名雪の過去はこちらでも同じです。
病気になって初めて健康のありがたみが分かる、という理屈ですね。
ていうかこの理屈で行くと原作名雪シナリオの名雪が心を閉ざすシーンは残酷過ぎ(苦笑)
いなくなって初めて、あの日(祐一と初めて出会った日)からいかに自分が秋子さんを『お母さん』だと思っていたかを気付かされて……うわ、なんてヘヴィなシナリオだったんだアレ。
(後から細々と追記)
公開してから色々ありました。
特に変わったのは一年後の一章外伝完全書き換え。
他にも祐一達が関わらないところで、歩みを始めた佐祐理さん・舞・美汐の姿を入れてみたり。
結局本当の完成は公開から一年以上経って、ということになりました。
まあ、それもこれで今度こそ最後かなと思います。
あとは読んだ人の思い出になれば作者冥利につきます。
ここまでお付き合い下さりありがとうございました。
(初版公開から1年以上)
<おまけ>
各話(外伝と3章終盤を除く)にちょっとしたコメントを付けてみました。
HTMLをソースで開いて最下部を見ると……?
感想いただけると嬉しいです(完全匿名・全角1000文字まで)