祐一と美汐の二人旅 第4話 〜奴の名は寺岡久平〜
「…………誰だ、お前?」
そう祐一が問い掛けている相手はいきなり自分のことを親のカタキよわばりしてきた男である、
ちなみに男は馬車の上に仁王立ちで立っている。
美汐はというと突然の乱入者に呆然となっていた。
「俺の名は寺岡久平(てらおかきゅうへい)だ…………どうだ、思い出したか?俺のことを」
「いや、全然」
「よくもまあそんな口を聞けるものだ、貴様は忘れても俺はしっかりと覚えているのだ!
ふっ、まあいい。忘れているというのならば思い出させてやろうではないか。
―――――あれは21年前のことだった―――――」
―――――21年前―――――
『待て、祐馬!貴様が魔王退治のために再び旅立とうが何をしようが勝手だが春奈さんを巻き込むな!』 ←久平の父親
『そう言われてもな…………俺は春奈を愛しているし春奈も俺について来たいって言ってるし…………』
『祐馬さんの言うとおりー。私って結構強いし、祐馬さんの手助けがしたいのー、
あなたも私たちと一緒に行きましょうよー、きっと楽しいわよー魔王退治♪』
『遠足気分で行くような旅じゃないでしょう春奈さん!それに祐馬では貴方の足手まといになります!
どうしてもと言うのならば俺と二人で行きましょう!』
『えーでもあなた私や祐馬さんより弱いじゃないー』
『そんなはっきりと本当のことを言ってやるなよ…………こいつに悪いだろ』
『やかましいわ祐馬!…………とにかく祐馬と二人きりで旅など天が許してもこの俺が絶対許しません!!』
『だから三人で行こうっていってるのにー』
『まあこいつにもプライドってもんがあるんだろ』
『うるさあーーーーーーーーーーーーいっ!こうなったら祐馬、貴様を力ずくでも止めてみせる!』
『あのー?』
『春奈さんは黙っててください、これは男の勝負なのです!』
『えいっ♪(ガスッ)』 ←どこからともなく取り出した石で撲殺
『おうっ!?(バタン)』 ←直撃を受けて気絶
『いくら幼なじみでも祐馬さんに手をあげようっていうんなら滅殺よー♪』
『殺ったのか?』
『一応手加減したから大丈夫だと思うけどー、ちょうどいいから今のうちに旅立っちゃいましょうー』
『そうだな』
『じゃあねー、オミヤゲ買ってくるからねー。聞こえてないと思うけどー』
『けど、どうする?二人だけで行くのか?』
『うーん、私はそれでもいいのだけれどー…………あっ、ちょうど一人心当たりがあるからその子を連れて行きましょうー』
『ん?誰だ?』
『祐馬さんもよく知ってる娘よー』
「…………ということがあったのだ!」
「……………………」
「……………………」
「その後父上は傷ついた心を癒すため旅にでた…………そして旅先で母上と恋に落ち、俺が生まれた。
しかし、父上はあの出来事を忘れたことなどなかった!
去年死んだ父上は、死に際に俺に自分の無念を晴らして欲しい、と涙ながらに懇願しつつ逝ったのだ!
だから俺は決意した!父上の無念は息子の俺が晴らすと!」
「…………頭痛い」
「…………はぁ」
「どうだ、わかったか!」
ふんぞり返って語りを終える久平。
祐一と美汐はただ呆然としているしかなかった…………あまりの馬鹿らしさに。
「…………っていうかそれって…………」
「ただの逆恨みなのではないですか…………?」
ふんぞり返っていた久平の動きがピタッ、と止まる。
「第一、それは父さんたちがやったことであって俺には関係ないし…………」
「そうですね…………だいたい21年前じゃ祐一さん、生まれてすらいないんじゃないでしょうか…………」
―――――ぷるぷる
「そうだな、俺今17歳だし」
「あっ、祐一さんは私より年上だったのですね」
―――――ぷるぷる
「そうなのか?」
「はい、私15歳ですし」
「ふーん、じゃあ…………」
「ええい黙れ黙れーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「きゃっ」
「何だよ、逆恨み筋違い場違い勘違い男」
「黙れといっているだろうが! いいか、親の責任は子供の責任だ。つまり俺が親の無念を晴らそうとする以上、
相沢祐馬の息子である貴様が俺にとってはカタキとなるわけだ。
だから大人しくこの槍の錆となるがいい。なに、痛いのは一瞬だから心配するな」
「言っていることが支離滅裂ですね…………」
「何でこいつの親父が母さんに相手にされなかったかわかる気がする…………」
呆れる二人に構わず持っていた槍を構えて一人悦にいっている久平。
しかしそこで祐一はふと疑問を思いつく。
「おい自己中男」
「自己中言うなっ!…………何だ、命乞いか?」
「何でお前は俺のことがわかったんだ?俺はこの七年間ずっと外界との接触を立っていたから俺の
顔と名前を一致させれる奴はいないはずなんだが」
「ふっ、愚問だな。そんなの貴様の両親に詳しく特徴を聞いたからに決まっておろう!」
「…………え?」
「さて、疑問も片付いたところで貴様の人生も片付けてやるとするか」
「ちょっと待てーーーーーーーーーーーーーっ!!」
ガスッ!!
「何だ!? 何か文句でもあるというのか! っていうか予告なしに殴るな、痛いだろうが!」
「痛くしているんだから痛いのは当たり前だし予告して殴るか馬鹿たれ。
あと、はっきり言って文句だらけだが、今はそんなことはどうでもいい。お前父さんと母さんに会ったのか?」
「うむ、そうだが?」
「じゃあ何でその時父さんを見逃したんだ!?カタキの大本命だろうが!」
「それはさっきも言った通りの…………」
「…………ははん」
「な、何だその笑みは」
「(ぼそっ)邪夢…………」
「(ビクッ)」
「やはりな…………お前、母さんに返り討ちにされたんだろ」
「な、な、何を言うか、そんなことは…………」
「どもりながら言っても説得力のカケラもないな」
「う、うるさい!」
「あの、祐一さん。邪夢って…………」
「それを聞くな」
「世の中には知らないままの方が幸せなことがあるんですよお嬢さん」
意見がピッタリ一致する二人、さすがにこの話題に関してはカタキも何もないらしい。
…………美汐は頭に『?』マークを浮かべていたが。
「さて、お喋りはここまでだ。覚悟はいいか?」
「まあ、どうしてもって言うなら相手してやるけど…………」
「いけません祐一さん。怪我したらどうするんですか」
「大丈夫だって、それとも美汐は俺があいつに負けるとでも思ってるのか?」
「いえ、全く」
「即答かっ!…………ふふふ、いいでしょうお嬢さん。俺の力を存分に見せつけてあげましょう!
―――――とうっ!!」
「えい」
どごっ…………ひゅるるる〜、どさっ
今、何が起こったのか解説しよう。
まず、馬車の上から久平がジャンプし、
それを目掛けて美汐が石を投げ、
見事その石が命中し、
頭から久平は落下したのである。
…………父親よりも酷いやられ方であった。
「祐一さん。何か私、凄いことをしてしまった気がするのですが…………」
「気にするな、むしろ俺がやる手間が省けて助かったよ」
「でも、あの人ピクリともしませんよ。私が言うのもなんですけど治癒魔法でもかけたほうが良いのでは…………」
「死んだ風には見えないし、放っておいても大丈夫だろう。
さて、とんだ邪魔が入ったがそろそろ出発しようか、日が暮れる前に湖にたどり着いておきたいし」
「あっ、すみません。供の者たちの弔いをしてからで良いですか?
…………もう、私が彼らにできることといったらもうこれくらいですから」
「ああ、そうだな。俺が簡単な墓を作るから」
「有難うございます」
その後、全員分のお墓を祐一が作り終えた後、美汐が冥福の祈りをした。
そして、馬車から持てる限りの荷物を取り出し二人はその場を後にするのだった。
「…………覚えていろ相沢祐一、次は必ず…………」
二人の去った後の荒野にはうめく男が一人、寂しそうに横たわっていた…………
あとがき
どうも、改訂ばっかりだと実際はほとんど執筆してないのに執筆したような気分になれてお得なSS作家taiです。
しかし、この第四話でtaiは何が書きたかったんでしょうか…………何も進展してないし。
親子二代で相沢家にやられる寺岡親子でしょうか…………あえて言うなら。今回は美汐が手を下しましたが。
次回は湖編。ラブコメのお約束を二話にわたってお贈りしたいと思いますので期待(?)していて下さい。
感想&質問は随時募集、待ってま〜す。
寺岡 久平 (18) ジョブ〔槍使い&風術士〕
このSSにおける祐一の引き立て役、またの名を名前のあるザコキャラ(笑)一発キャラではないのでまだ登場予定あり。
思い込みが激しく自分に酔うところが多々ある。ちなみに長髪で結構美形。
実は槍を持たせれば結構強く、風魔法も扱える。