――恵野王国近衛兵団



 近衛兵団は、貴族連合軍の形をとる恵野王国軍内において数少ない国王の直轄する軍集団である。

 平時においても常に総数1万名の定員を維持し、主に王都の治安維持を預かるこの部隊は、伝統的に王立教練所でその世代において最優秀とされた人物が指揮官に就く事になっている。ただし、教練所の教官や卒業生の互選で選ばれるため、主席の人間が就任するとは限られていない。その極端な例として、名将と名高かった深山雪見の後任となった、椎名繭の名が挙げられよう。
(注:彼女の場合、作戦指揮実習と魔導実習以外の成績は落第寸前が常であった。無論、優秀な参謀と副官が付けられたのは言うまでも無い)

 恵野王国がその軍事力の要とするこの部隊は、聖槍騎士団と並んで名実共に恵野王国の決戦兵力である。

 また、近衛兵団の指揮官は軍司令官たる恵野王国皇太子を補佐する義務も背負っており、事実上恵野王国軍の最高指揮官を兼任している。初代団長は住井賢治、設立は聖暦122年。(後略)



――「大辞典」恵野王国集第二巻(聖暦911年編)より一部抜粋














少年は竜と共に舞う
第五話「近衛は竜と共に駆る」














<山葉平原西部>







 傭兵としてそこそこ名の知れている祐一(とアルギズ)だが、その年齢ゆえか、大規模な会戦に参加した経験は全く無かった。参加した会戦は、精々が千名単位の中規模会戦――大陸東部の都市国家群同士の小競り合い程度だ。

 いずれもアルギズを出撃させる必要性の無かった――というよりも、戦術上アルギズを動かす事が出来ない戦いだったが、今回の戦闘は一味も二味も違う。ある意味初陣に近い祐一だったが、彼に掛かる期待は大きかった。

 参加兵力は両軍合わせて1万8千。サーギオス軍側は未だに迎撃体制が整っていないとは言え、恵野王国側も魔導兵力の欠如という打撃力不足がある。

 さらに、ほぼ全ての面で恵野王国が優位な戦いだが、戦略的不利から恵野王国には完勝する事が求められているのだ。遥か上空で待機するアルギズは、非常に重要な戦力だった。

「今すぐ動かせる魔導兵のありったけを集めて連れて来たけど、総数は百名に届かないわ。しかも、全員予備役や退役直後の不正規兵力ね。役に立つかどうかは分からないけど、一応、あなたの指揮下に入れた方がいいかしら?」

「俺に聞かれても……。俺達をどういう運用法で動かすかで変わるでしょう?」

「あぁ、確かにそれもそうね」

 つまり、祐一達を戦線を支える援護兵力として使用するのか、それとも突撃兵力の弾頭として使用するのか、という事である。

 採用する戦法の選択にも関わってくる事だけに、祐一の一存では決められない事だった。

 それとは別に、祐一自身が部隊の指揮など遠慮したいという面もある。祐一の指揮では、周囲の人間が納得しない場合も多々あるのだ。戦場では、それが致命的な隙になりかねない。

 もちろん、祐一が思い至るのだから、戦場での機微に明るい雪見がその事を考えないわけが無い。とうの昔、それこそ彼女達が出撃する前から祐一の扱いなど決めてある。彼女が出したおいた結論は、祐一の予想通りと言えた。殊更に悩んで見せたのは、年若いとは言え歴戦の勇士である祐一に対する配慮だ。

「……やっぱり、止めておくわ。彼女達は私が直轄します」

「了解。アルギズはどうしますか?」

「出来れば私が直接指揮したいけど、無理かしらね?」

「いや、大丈夫だと思うけど……。アルギズの扱える魔導を把握してないと意味無いんじゃ?」

「別に難しい事を頼むつもりもないし、大丈夫でしょ」

「まぁ、そう言うなら……」

 祐一が懐から符を取り出してアルギズと連絡を取っている間、雪見は顎に右手を添えたまま一言も発しない。

 それこそ、アルギズとの連絡を終えた祐一が話しかけるのを躊躇するほど、雪見の表情は険しかった。

「あの……深山さん?」

「何かしら、美汐ちゃん」

「アルギズは、貴女の指揮下に入るそうです。連絡には――」

 と、巫女服の袖から一枚の符を取り出す美汐。

「この符を使って下さい。あと、アルギズからの連絡はいきなり耳元でしますのでびっくりしないで下さいね」

「ありがとう。でも、連絡は美汐ちゃんにしてもらうから必要ないわ」

「そうですか」

「じゃあ、俺達はここで待機って事になるのか?」

「いえ、祐君は突撃部隊の支援戦力として最前衛に出てもらいます。美汐ちゃんは、別名あるまで本陣で待機よ。事実上、本陣の近衛になってもらいます」

 その命令を聞いて、祐一は内心ほっとしていた。一応、美汐と祐一はペアで動いているのだが、このような軍集団同士の戦闘には美汐は参加した事が無いのだ。

 美汐の実力が祐一に大きく劣る事と、祐一に美汐を護りながら戦うほどの余裕が無い事がその大きな原因ではあるが、……それ以上に、祐一には美汐に人を殺めてほしくは無かったのだ。

 だが、美汐の方はそれに猛反発する。

「なぜですか?! 私は祐と――」

「これは、指揮官としての命令よ。貴方達が私の指揮下に入る事を承諾した以上、拒否権はありません」

「そんな……!」

 なおも反発しようとする美汐だが、それをやんわりと押し留める人物がいる。それは、他ならぬ祐一だ。

「美汐、あんまり深山さんを困らせるな。それとも、そんなに俺は信用が無いか? 一人にしておけないほど、俺の腕は心許無いか?」

「……そんな、ずるいですよ、祐……」

 恨めしげに祐一を見る美汐から、素知らぬ顔をして視線を逸らす祐一。

「ごめんなさいね。でも、私だって意味もなく美汐ちゃんを本陣に留めている訳じゃないのよ」

「それは……、予備戦力って事ですか?」

「違うわ。そういうわけじゃないけど、何か嫌な予感がするから用心だけはしておきたいの」

 その言葉に、祐一は腕を組んで黙り込む。彼の脳裏によぎるのは、出発前に留美に注意された事だった。



「サーギオス軍には、正規の戦力の他に切り札的な戦力が存在するわ。私達の間では、戦闘妖精スピリットと呼ばれてたけど……、彼女達には十分注意しなさいよ。格闘術も魔術も、並みの兵士より遥かに強力だから」




 恐らく、雪見が感じている嫌な予感というのもその存在を考えているのだろう。戦術面で圧倒的優位に立つ王国軍にとって、ほぼ唯一と言える不安の種が彼女達だった。

「ともかく、用心だけは怠らないようにしましょう。祐君達は、私直属の魔導戦力の援護開始と同時に敵左翼を突破、敵の背後に回りこんで包囲殲滅してもらうわ」

 雪見の採用した戦術は、横陣を展開する敵に対して左翼の突破を図るものだった。彼女の持てる全打撃戦力を突破力に変換した突撃が成功さえすれば、後は包囲殲滅戦を展開できる。

 付け加えれば、雪見自身はこの突破が成功しない筈が無いと確信していた。











<両軍布陣後 恵野王国近衛兵団右翼>







 嵐の前の静けさ、とでも言うのだろうか。互いの姿を視認出来るまで近づいている恵野軍とサーギオス軍は、不気味な静寂を保ったまま開戦の時を迎えようとしていた。

 それは祐一のいる右翼においてもっとも際立ち、自分達が最激戦地点にいる事を自覚する兵士達は殺気立った眼で敵を睨みつける。

「そろそろ、だな」

 そういった雰囲気を肌で感じる祐一は、そっと、呪を呟きながら己の体躯を想観イメージする。

拳を彩る赤光よ、其に刻まれし破壊を宿せ。――『崩撃ホウゲキ』起動

 ことばと共に手の甲から染み出す光は、全てを打ち砕く破砕の力。

我が身に纏いし赤光よ、其に刻まれし加護を宿せ。――『遮撃シャゲキ』起動

 淡い、拳のそれよりなお淡い桜色の光が、全身鎧のように祐一の身を包む。その加護の力は、刃を通さず魔術を防ぐ。

我に従う赤光よ、其に刻まれし紅華の炎を宿せ。――『紅撃コウゲキ』起動

 真紅の光が、祐一の足元から脈打ち噴き出す。彼が立つ足元すらも真紅に染めるその光は、烈火に等しき速度と劫火に等しき力強さを与える。

三撃展開、随時解放――。刻魂術式、全式起動

 彼という存在に刻み込まれた術式の全てが、彼自身の意思をもって起動される。まさしく、全力だ。

 それに加えて、両手に取り出す符が輝きを放つ。

汝ら、我が意思をもちて舞い狂え。汝ら、其に威を宿し舞い踊れ。汝ら、我が意に従い敵撃つ不可避の魔弾となれ。――『舞蒼弾ブソウダン』起動

 両手から離れた二枚の符は、くるくると回りながら祐一の頭上で双輪を描く。

 祐一の準備が整ったのと時を同じくして、双方の軍の緊張が臨界を迎えた。

「全隊、突撃開始!」

「魔導隊、支援射撃開始! 目標、敵左翼前衛!」

 各中級指揮官の号令の下、兵士達は得物を構えて一斉に走り出した。半密集隊形を組んだ彼らの脇を、後方から支援攻撃の魔術がすり抜けて行く。

 「光槍術スレイランス」と「爆轟術フレア・ブラスト」が適度に組み合わされたその魔術群は、まず十発程度の「爆轟術フレア・ブラスト」がサーギオス軍に着弾する。本来想定されていたはずの防護が全く無い分、その威力はダイレクトに前衛を担う兵士を直撃。

 その半瞬後に、今度は必滅の光条が数十本纏めて突き刺さる。最初の直撃で陣形が多少乱れていたところへの制圧魔術の殺到は、サーギオス軍の前衛をあっという間に統制不能な状況へと追い込む。

 組織だった行動をとろうにも、被制圧地点の兵力の半数が死傷していては殆ど何も出来ないというに等しい。そうして混乱するサーギオス軍前衛に、理想的な形で恵野王国近衛兵団第二集団先頭集団が突入する。

舞蒼弾ブソウダン』完全展開!

 その先頭に立つのは、全身を真紅に染めた祐一だ。

 前衛部隊後方から矢のような速度で突進する勢いは、「光槍術スレイランス」並みとまではいかなくとも騎馬のそれにほぼ等しい。なおかつ、射程は短いものの連射性能に優れる「舞蒼弾ブソウダン」が彼の前方を自動掃射し、敵兵の密度を減らしてゆく。

 サーギオス軍左翼部隊の前衛は、祐一の突進に確実に押されつつあった。

「あの坊主に後れをとるな! お前ら、これ以上あの坊主の後ろを行くのは俺達の恥だと思え!」

 さらに、その祐一に追い縋るようにして突撃する近衛兵団右翼部隊の速度が増す。祐一の突進が点の攻撃だとするなら、彼らの突進は線の攻撃だ。一点が破れて均衡が崩れた戦線を、確実に、猛烈な勢いで押し込んでゆく。

 支援魔術の斉射から遅れる事数秒で、近衛兵団の先頭集団はサーギオス軍左翼の蹂躙を開始していた。ここまでは、完全に雪見の目論見通り。

 なおかつ、サーギオス軍に突き刺さった先頭集団の周囲に光の雨が降り注ぐ。さっきまでの点・線の攻撃と比べるならば、さしずめ、面の攻撃と言ったところだろうか。近衛が押し込んだ戦線の後方に存在する残存兵力の全てには、生き残る余地など全く無かった。










 魔導兵力を欠いた軍の脆さは、こうまでも戦いを一方的にするのか……。後方で指揮を執る雪見は、ほとんど一方的な虐殺に近い右翼の攻防に肝を冷やす思いだった。

 もし立場が逆だったら、などとは想像もしたくない。一歩間違えば、ああなっていたのは自分達の方なのだから……。

「中央から左翼にかけては、五分の戦いに持ち込めているようね」

「むしろ、敵は左翼の味方に足を引っ張られる形で戦線を下がらせつつあります。こちらが優位に立っていると言えますね」

「当然よ。これで私達が優位じゃなければ、真剣に退却を考えるところだわ」

 多少気を抜いた形で声を掛けてきた幕僚に対し、憮然とした表情で答える雪見。戦いはまだ始まったばかりなのだ、こんなところで気を抜いてもらっていては困る。

「閣下、右翼部隊の一部に混乱が見受けられます!」

「……原因は? 報告は的確になさい」

「は、はっ! 右翼部隊の一部が敵の頑強な抵抗に遭い、前進を停止しているのですが……。その、様子が変なのです。どうも、指揮系統が寸断されているとしか……」

 要領を得ない報告だったが、雪見の脳裏に閃きを走らせるには十分な情報だった。



 ――スピリット隊が動き出したわね……。



「本陣の総員は近接戦闘に備えて! 敵の強襲隊が来るわよ!」











「坊主、何か様子がおかしくねぇか?」

 本陣で雪見が報告を受ける少し前、祐一達は既に強襲隊の脅威に身を晒され始めていた。今まで組織だった動きを全く見せていなかった敵が、徐々に組織だった後退を始めていたのだ。

「……ちっ! 奴ら、もう切り札を切ってきたのか!?」

「おい、坊主?」

「今すぐ付近の兵に警戒を呼びかけて――、くそっ、遅いか!」

 舌打ちと共に、祐一の周囲に数枚の符が乱舞する。

護封ゴフウ』重複起動展開。――多層防護『絶界ゼッカイ』展開!

 一瞬の間をおいて張られた結界に対し、一つの声が冷たく戦場に響く。

アイスバニッシャー!

 同時に、祐一の身体を冷たい戦慄が駆け抜けた。気付けば、多重展開されている「護封ゴフウ」の半数がその効力を失っている。

 だが、戦場で驚いている暇など無い。過剰気味に防護の力を展開していたおかげで、まだ余裕がある今のうちに何か手を打たなければ拙い。

 ざっと戦場を見渡した祐一の目に映るのは、五人ほどの大振りの剣を携えた女性達だ。彼女達の眼はどこか輝きを失っており、まるで人形のような印象さえ受ける。

 だが、その動きは巧みな戦士のそれであり、油断などしなくともあっさり冥府に叩き落されかねない。疑う余地も無く、彼女達がサーギオス軍の切り札――スピリット隊の面々だった。

志向せよ!

 とにかく、たった今魔術らしきものを使ったポニーテールの女性はしばらく放置していてもいい。それより、こちらへ斬りかかって来ている二人への牽制が先だ。

 一瞬の思考で目標を決定された蒼弾が、大剣と太刀を振り上げながら祐一へと向かう女性達に殺到。過解放された「舞蒼弾ブソウダン」は一時的にその威を失うが、代わりに吐き出される光弾の総数は軽く十を超える。慌てて回避行動に移る彼女達は、この瞬間戦力から外れた。

 これで、一時的に戦場から排除されたスピリットは三名。うち一名は、過剰なまでの弾幕に正面から突っ込み、吹き飛ばされたまま動かない。傍らには、彼女の持っていた大剣が半ばから折れて突き刺さっている。

「せぇやぁぁぁぁぁ!」

 だが、祐一はそんな事には一切注意を向けはしない。冷徹に、正確に、読み通りに推移した周囲の状況を把握。残り二名の、手に持つ双刃剣ダブルセイバーから異様な気配を放っているスピリットへと突進する。と同時に、両の拳に込めた破砕の威力を解き放つ。

 片方のスピリットが、寸分違わぬタイミングでその二つの射撃を受ける。……いや、受け止めざるを得ない。魔術行使の直前というのは、回避するには体勢が悪すぎる。咄嗟の動きで射線上に自らの得物を持ってくるが、防護の力を発動させる前に「崩撃ホウゲキ」の直撃を受けてしまった。

 直撃の瞬間耐えるように軋んだ剣が、圧力に耐えかねたようにその持ち主の方へと爆散する。その場に崩れ落ちたスピリットを見て、流石に残りのスピリット達の顔色が変わった。

 五対一だった彼我の戦力差が、一連の攻防で三対一にまでされたのだ。絶対的、と言っていい戦力差を覆されないその状況に、動揺しない方がおかしいだろう。

「くっ……! フレイムシャワー!

 とは言え、彼女達の優位に変わりは無い。イニシアチブは、最後の魔術で取り返されるからだ。

 味方の犠牲という時間稼ぎの隙に起動された魔術は、神剣魔術と呼ばれる特殊魔導である。彼女達の持つ「神剣」を媒体とする事で、通常の魔術に数倍する威力の魔術が解き放たれる。

 今回の場合は、神剣の前面に展開される魔方陣から召喚される無数の炎弾という形を成して祐一達に襲い掛かった。

「世話の焼ける……!」

 毒づきながらも、味方への直撃弾も含めてほぼ全ての炎弾を「絶界ゼッカイ」で防御する祐一。それを見た近衛兵団の兵士が、慌てて彼らの戦いから距離をとった。

 最早、一般兵に手出しの出来るような戦いではなくなっている。魔導兵でもいれば話は別だろうが、生憎この場に魔導師系の戦力は祐一しかいない。

「ヤァァァァ!」

「破っ!」

 もちろん、スピリット隊の面々としてはここで一気に祐一を仕留めてしまいたい。切り札を切られたとは言え、既に二人倒れているのだから当然だ。最初に仕掛けたスピリットと、「舞蒼弾ブソウダン」を持ち前の敏捷性で躱したスピリットの二人が前へ出る。

 後方で再度詠唱に入っているスピリットが見えている祐一としては、ぐずぐずしてはいられないが……。

「ぐ……、くぅっ!」

 一撃必殺の威力を秘めた大剣と、とにかく手数の多い太刀の乱舞の組み合わせが相手は流石に厳しい。「遮撃シャゲキ」を頼りにしても、無限に体力気力が続くわけでもない。

 大上段からの気合の篭った振り下ろしを避け、死角を付くように側頭部と首と脇腹を狙う太刀の連撃は右手に着けた手甲で全て弾き返す。そのまま体をずらし、左回し蹴りによる薙ぎ払いを仕掛けるが、彼女達はそこから伸びる炎撃の射程からも即座に離脱。

 逆に、太刀を持っている方のスピリットはその敏捷性を生かして祐一が左足を振り抜いた瞬間に間合いを詰める。下段から迫る太刀に対して、祐一は避けるのも防御するのも不可能。

 だが、祐一とて考え無しに隙を見せたわけではない。ニヤ、と肉食獣の笑みを浮かべると、即座に両手に三枚づつの符を取り出す。

雷鞭ライベン』同時起動解放!

 各々の符から三本、合計十八の高圧電撃が疾るが、彼女らは甘んじてそれを受けはしない。前衛に出たのが一人なら、もう一人の前衛は一体何をしているのか――

アイスバニッシャー!

「ち……」

 舌打ちする祐一だが、ここはスピリット隊の読み勝ちだろう。またも過半の「雷鞭ライベン」が無効化される。

 しかし、いかんせん数が多過ぎる。状況の不利を、物量だけで押し返そうとする祐一の符術の執念が勝った結果か。あるいは、先ほど同じ状況に陥った事を思っての半ば無意識下での瞬間的な判断の結果か。

 ……いずれにせよ、彼女らは祐一が思った以上に詰めが甘かった。完璧なタイミングでインターセプトが入ったにも関わらず、前衛に出た彼女は生き残った「雷鞭ライベン」のうち半数――実に四本の直撃を受けたのだ。

「あくぅっ!」

 それでもなお倒れないのは賞賛に値するだろうが、敏捷性が命綱の彼女が動けなくなれば、もはや戦力として機能しない。太刀を杖にして膝立ちになる彼女を無視して、一気に間合いを詰める祐一だが……

フレイムレーザー!

「がっ!?」

 直撃。

 祐一の方も、詰めが甘かった。接近戦の攻防に気をとられすぎて、大剣を持ったスピリットの影に隠れたもう一人のスピリットの存在を失念していたのだった。

 僅かな時間差をつけて左胸を直撃した三本の炎熱線は、「遮撃シャゲキ」によって熱そのものは遮断されたものの、祐一の左胸の服を焦がし、着弾と同時の小爆発によってその場に幾筋かの裂傷を作る。吹き飛ばされる祐一だが、気力を振り絞って即座に起き上がり、体勢を整えた。

 そこへ、追撃とばかりに勢いの乗った逆袈裟斬りが放たれる。胸の痛みを堪えつつ、祐一は後方へと大跳躍。ついでに、一枚の符を取り出し牽制の一撃を加える。

炎翔エンショウ』起動解放

 轟、と音を立てて迸る火炎を、必要最小限のサイドステップで躱すスピリット。その巧みさと速度は、先に倒れた二人のそれより明らかに場数を踏んだ動きである。

 動きの止まっている祐一にしてみれば、あまり歓迎したくない事ではあるが。

「せっ!」

「――ッ!」

 あまりよく動かない身体に鞭を打ち、左拳による「崩撃ホウゲキ」の解放でスピリットを迎撃する祐一。

 その、鋭く速い粉砕の威に対する彼女の動きは、祐一の目に残像として残るほどの体勢移動だ。その場に取り残された尻尾ポニーテールが破砕の威に触れて四散するが、彼女自身には傷一つつかない。

 低く力を溜めた状態からの斬撃を予測する祐一だが、彼自身には迎撃も回避も不可能。……そう、彼自身には、、、、、

「――っく!?」

志向せよ!

 異常に気付いた彼女が左に大跳躍するのと、祐一が高らかにことばを発したのはほぼ同時だった。

 一時的に失っていた機能を復帰させた二枚の符が、蒼く輝く光弾を出現させる。一発は、今まさに回避した彼女を狙った形で大地に着弾。もう一発は――

「あと二人……!」

 棒立ちになっていた太刀を持つスピリットを直撃。大きく吹き飛ばされた彼女は、確実に意識を刈り取られている。

我、此処に想観す! 汝、唸りを上げる颶風ぐふうにして、絶対を宣告する断絶なり!

 決める。

 そう意識して、必殺の符を起術する。対するスピリットの動きは、一直線に斬りかかって来る突進の動きだ。

 「舞蒼弾ブソウダン」で牽制したいところだが、もう一人の方も無視できない故にそれは無理だ。自身で迎撃するしかない。

来たれ無形よ! 来たれ刃よ! 『透刃符刀トウジンフトウ』起動――

 祐一が右手に掲げる符から、大気が渦を巻いて流出する。同時に、その符を右手に握り締めた祐一は脇構えへと体勢を変える。

――展開っ!

「イィィィヤァァァァァ!」

 裂帛の気合と共に振り下ろされる大剣を、後方へと跳躍して避ける祐一。右手に持つ力は必殺の力だが、身を護る為には使えない。あの剣速では、大剣そのものを斬り飛ばしても自身が致命傷を負ってしまう。

 祐一が構えた右手の力を本能的に察したのだろう、大剣を持つスピリットも攻勢を緩めるような事はしない。連撃を凌ぎ切られれば、次は無いのだ。

 続く斬撃は、間合いを詰めながらの下段からの振り上げだ。身体全体のバネを使った振り抜く斬撃の威力は、先の振り下ろしと比べても全く遜色ない。

 流石に、これを構えたままの体勢で回避しきるのは不可能だ。祐一は、無駄と知りつつ大剣を斬り飛ばして迎撃する。

 瞬間、視界の端に鮮血と斬り飛ばされた大剣の切っ先が目に入る。次いで来るのは、衝撃だ。胸元を蹴り飛ばされた、と理解する間に地面へと倒される祐一。

 だが、すぐに起き上がろうとするような事はせずに、即座に地面を転がって追撃を躱す。ガッ、という剣が地面を叩いた音を聞き、攻撃が来ない事を把握してから回転した勢いを生かして起き上がる。

 胸に灼熱感を感じるが、無理矢理それを無視する。切っ先を失っているとは言え、迫り来る大剣は人一人両断するくらいは十分可能だ。

「せっ!」

 その剣の軌道を、横から殴りつけて無理矢理に変える。拳に鉄の感触を感じつつ、一気に振り抜く祐一。「崩撃ホウゲキ」の衝撃力が、スピリットの手から大剣を弾き飛ばす。

志向せよ!

 同時に、三度詞を叫ぶ祐一。術式そのものを消滅させるほどの弾幕は、今まで「舞蒼弾ブソウダン」を回避しつつ祐一を狙っていたスピリットを捉えた。

「動くな!」

 祐一は、そちらに一瞬視線を走らせた祐一を見て動こうとするスピリットを制する。その右手には、未だに「透刃符刀トウジンフトウ」が起動されたまま固く握られている。掌から少し血が滲んでいるが、祐一にはなんら影響を与えていない。

「それは、余裕の表れかしら?」

「無駄な殺しは嫌いなだけだ。降伏してもらえると有難いんだけどな」

「ふん。部下を殺しておいてよく言うわね」

「ここは戦場だぜ? 向かってくる奴に容赦する気になんてならないな。それに、刀を持ってた奴は殺しちゃいない」

 その言葉に、薄っすらと笑みを浮かべるスピリット。

「ミオの事ね……、ご丁寧にどうも、確かに、ここは戦場で、あたし達は敵同士だったわね。……ほんと、あなたみたいな子供がいると思うとそうは思えないんだけど」

「……言ってくれるな」

「坊や。熱くなっている暇があるのなら味方の心配でもしたらどう? スピリット隊があたし達だけだと思わないほうが良いわよ?」

「……っ!? まさか?!」

「頭のいい坊やね。たぶん、あなたの考えている通りよ」

 即ち、別働のスピリット隊による本陣の強襲だ。だが、そちらにはアルギズという押さえがいる。心配はする祐一だが、危惧はしていない。

「なんつー、大胆な……」

「そうね……。ほんと、大胆な作戦を立ててくれる指揮官だこと……」

 いや、それは大胆というよりも無謀と言った方が正しい。

 スピリット隊による、敵本陣の強襲。確かに効果は高いだろうが……、作戦に従事するスピリット隊は全滅してもおかしくない。というより、そうなるのが当然だろう。

「けど、それって使い捨てって事かよ?! あんたら、そんな扱い方をされて黙ってるのか?! 死ねって言われてるようなもんだろ!」

 憤慨する祐一に対して、彼女は優しげに微笑んで見せた。

「いい子ね、坊やは。……でも、これがあたし達の役割なの。あたし達は、スピリットなんだから……」

 優しげに、諭すように言う彼女の顔は、酷く透明な表情だった。それが死を覚悟した者の顔だと、祐一には分かった。経験など、腐るほど積んでいる。

「動くな。動けば……、斬る。斬らなきゃいけない」

「覚えておきなさい、坊や。あたし達スピリットは、例えそう言われても躊躇などしないものよ!」

 そう叫び、切っ先を失った大剣に向かって跳躍する彼女の動きは、酷く遅かった。その間にある差を、祐一は考える。

 答えは、すぐに分かった。分かってしまってなお、彼女を見逃せるほど、祐一は甘くはない。

 ゾブ、と音がする。自らの腹部から溢れる血潮を見て、歯を食いしばった祐一の表情を見て、彼女は納得した。

 少年は、全てを悟ったのだと。

「なぜ……。なんでだよっ!? あんた、もう戦える身体じゃなかったんだろ!」

 祐一の言葉に、彼女は内心で頷いた。スピリットの戦闘能力を支えるのは、その半身とも言える神剣だ。それを失えば……、正確には、神剣との同調が途切れてしまえば、彼女達は多少身体を鍛えている女性と大差ない。

「……言ったでしょ。あたしは、スピリットよ。例え、気に食わない命令だとしても、死ぬまで、それに付き合うのが、あたしの矜持よ」

 彼女は、輝きの戻った瞳で、真っ直ぐに祐一を見抜く。口出し無用、と雄弁に語るその瞳を見て、祐一は何も言えなくなってしまった。それに……、もう、彼女には時間が無い。

「……くそっ!」

 祐一には、分かっている。他の誰でもない祐一だ、自分の一撃が致命傷である事くらい、把握している。

「本当に、……いい子ね。こんな事を頼むのも何だけど……、ミオを、お願いね」

 それが、最期だった。











<恵野王国近衛兵団 本陣>







「アルギズ、援護して下さい!」

「承知。だが、既に我も援護は開始しているのだが……。前線への圧力を無くす訳にもいかぬのでな」

 祐一と五名のスピリット隊が戦闘を開始した直後、本陣もまた三名ほどのスピリット隊の強襲を受けていた。

 前線からここまで来る間に抵抗を受けたのだろう。彼女ら三名に、無傷の者など一人もいなかった。

 ――付け加えるならば、アルギズによる魔術攻撃で隊の過半は既に倒れている。前線を支えるために全力での迎撃はしていないが、片手間に相手をされているだけでもスピリット隊にとって古竜アルギズの存在は脅威だった。

雷鞭ライベン』起動解放!

 その彼女らに向かって、美汐の符術が炸裂する。三本の高圧電撃が、密集隊形をとるスピリット隊を打ち据えるべく飛ぶ。

アキュレイトブロック!

「そんな!?」

 だが、紫電の鞭は半透明の壁に防がれた。三名のスピリットのうち一名が立ち止まって防護の力を展開する間に、残り二名が槍と大剣を構えて突っ込んでくる。目標は、呆然となって動きの止まっている美汐だ。

「美汐ちゃん! ぼけっとしないで!」

「え……、きゃあっ!」

 雪見の檄によって、かろうじて槍の刺突を躱す美汐。だが、その背後からさらに飛んでくる斬撃には対応し切れない。

防壁術スペルウォール

 そんな美汐を救ったのは、本陣に待機していた魔導隊の女性達だ。警戒態勢を敷いていた為に、ぎりぎりのタイミングで魔術による介入が出来たのである。数名の手による複合魔術障壁が、美汐とスピリットとの間を遮る。

 ガキン、と音を立てて弾き返される斬撃。だが、美汐も安穏としていられる訳ではない。アキュレイトブロックを展開していたスピリットの疾駆する姿が見えているからだ。

「くっ……炎翔エンショウ』起動解放!

 歯を食いしばって符術を展開する美汐だが、方向が拙い。確かに、スピリットに直撃すれば問題は無いのだが――

「っ!? 防壁術スペルウォール』!

 間一髪で、起動待機状態の防壁術を展開して難を逃れたのは味方の魔導兵だ。スピリットが「炎翔エンショウ」を躱したため、その後ろにいた彼女に直撃しかけたのだった。

「……美汐ちゃん、一旦下がりなさい」

「はい……」

 雪見の言葉に、唇を噛み締めながら下がる美汐。足手まといになっている事は、美汐自身が理解している。

 だからこそ、自らの不甲斐なさが情けなかった。こんな体たらくでよくも祐一について行くなどと言ったものだ、と俯く。

「落ち込んでいる場合ではあるまい。汝の得意とするものを思い出せ」

 符術師の特性。アルギズに言われるまでも無く、美汐はそれを知っている。符を媒介し、応用性を失った代わりに得た長所は、圧倒的な展開速度と一定以上の高威力。

 それを踏まえた上で祐一や祖父に叩き込まれた原則は、強者は手数で圧倒しろ――

「くっ……!」

 ――ならば、それを実践すればいいだけだ。

「きゃぁっ!?」

護封ゴフウ』起動展開!

 魔導兵の一人に斬りかかるスピリットの一人を、魔導障壁で足止めする。だが、その程度では彼女らを止めるのは難しい。一太刀で魔導障壁を散らし、返す太刀が魔導兵を襲う。

「なら、重ねるまでですっ!」

 巫女服の袖から、左右両手で六枚の符を取り出し挟み持つ美汐。

護封ゴフウ』多重起動、『封陣フウジン』展開!

 スピリットを前後左右上下から押さえつけるように魔導障壁を展開する。流石に体勢を崩したスピリットは、一旦立て直すために後方へと跳躍。

 だが、手数では美汐も負けてはいない。

雷鞭ライベン』起動!

アキュレイトブロック!

 すかさず他のスピリットが魔術障壁を張って割って入るが、美汐も「雷鞭ライベン」を起動待機状態でかざしたまま動かない。迂闊に仕掛けられないと踏んだ三人のスピリットの動きが止まる。

 このタイミングを、全員が睨み合って静止するこの瞬間を、虎視眈々と狙っていた者がいる。

 上空に待機する、アルギズだ。

狙点固定ロック・オン全術式斉起フル・ファイア

 警告代わりの起術成詞と共に、上空から三十を軽く超える光条が降り注ぐ。その一本一本が、「操弾術オペレート・ブリット」の付与された「光槍術スレイランス」だ。

 慌ててその場から飛び退く美汐を見て、スピリット達や魔導兵も何が起こるのかを察知したのだろう。それぞれが、全力で回避乃至は防御反応をとる。魔導兵達はスピリットから距離を置き、スピリット達はそれぞれの持てる防護の力を最大展開する。

 ……だが、曲線を描いてスピリット達を狙う魔術は、防御も回避も不可能な飽和攻撃だ。「操弾オペレート」すると言うよりは「追尾ホーミング」させると言った方がしっくり来るほど正確な狙撃は、初撃の十発程でスピリット達の展開する魔導障壁の限界点を突破、残り二十発以上の光条が彼女達の持つ神剣へと殺到する。

 並みの金属を遥かに凌駕する物理的・魔導的耐久性を誇る神剣と言えど、物理・魔導の両性を備えた高威力攻撃や度を越えた威力の攻撃には耐え切れない。

 一歩も動けない彼女達の目の前で、三本の神剣は音を立てて折れ砕けた。突然の出来事に呆然となる彼女達を、美汐の展開する「護封ゴフウ」が封じ込める。

「深山さん、敵……、を捕縛しましたけど、どうしますか?」

「……そうね、とりあえずは本陣詰めの兵士で見張っておきましょう。今は――」

 す、と前線へ視線を向けた雪見の眼には、半包囲陣を完成させつつある味方右翼部隊が見えた。

「この場を勝ち切るのが先決よ。彼女達の処遇の決定は、王都に帰ってからでも間に合うわ」

 とは言え、戦意を失いつつある敵を撃破するのに、そう時間はかからなさそうだった。




















 ――第三次山葉平原会戦と呼称されるこの一連の戦いにおいて、サーギオス軍先遣軍団1万は指揮官以下7千名以上の“行方不明者”を出し、決定的な敗北を喫した。

 特に、軍団の主幹をなす魔導隊2千とスピリット隊十数名が文字通り「全滅」したのは非常に大きな損害であり、指揮官の戦死と合わせて事実上同軍団の消滅を意味する事となった。

 この戦いにおける敗北は緒戦から破竹の進撃を続けていたサーギオス軍にとって初めての敗北となり、同時に初の大規模会戦における徹底的な敗戦として、後の作戦行動に大きな支障をきたす事となる。

 サーギオス軍にとっての最大の痛手は、2千という纏まった数の魔導兵部隊の消滅である。「千年王国エターナル戦役」の最も大きな山場において、この2千名の魔導兵の有無がサーギオス軍の命運を分ける事になるとは、この時点では誰にも予想できなかったであろうが……。

 いずれにせよ、それまで順調だったサーギオス軍の行く手に、先の見えない暗雲が立ち込めた始めたのは間違いなかった。











続く














 あとがきなのカナ? あとがきなのカナ?(二回言うな

 びっくりするぐらいお久しぶりです。ダメSS書きのsarngaです。

 今回は、初めての本格的な戦闘シーン描写@「竜」となった訳ですが……。

 やっぱしはっちゃけれなかったです。ていうか、あり得ん。

 なんとも、シリアスさと適当さの交じり合った内容に……_| ̄|○

 まぁ、ようやっとスピリットの連中も出せ始めたし、良かった良かった……かな。

 でもそいつら純粋にはスピリットとは言えませんから。残 念 !

 むしろほとんどオリジナル設定だろ……。て訳で、以下ほぼ反則技ながら改変部分の設定を書き連ねておきます。

 読み飛ばしても全く問題無いので、まぁ、興味のある方だけ読んで下さい。「永遠のアセリア」ファンの方には気に食わんかもしれませんが、まぁ、私なりにアレンジした内容だと思って許してやって下さい。ていうか、アレをそのまま登場させるのは無理ありすぎなので(苦笑

 エーテルとマナ、それなりに面白いとは思うのだけれども……。







――神剣



 旧古代王国(聖暦以前)に開発・配備された対幻獣戦用魔導武装。所持者が同調する事により、神剣魔術と呼ばれる高威力魔導を実現し、通常習得が難しい肉体強化系魔術の使用すら可能にする。ただし、同調可能な資質は女性にしか発現せず、尚且つ有資質者を見つけ出すのは神剣との同調者がいなければ難しい。

 その上、過度に同調すると「神剣に喰われた」状態となり、正常な精神活動に支障をきたす場合もある。ただし、この状態の女性は――命令には絶対服従の状態のため――兵士としては優秀である。

 サーギオス帝国はこの技術を偶然発掘、ある程度再現出来たため、“山向こう”での覇権を確立出来た。

 形状は剣が多いが限定はされない。ちなみに、「永遠」神剣とは呼ばれない。位も無い。銘も、原則として無い。
……こんなの永遠神剣じゃないです(苦笑





――戦闘妖精スピリット



 神剣に「魅入られた」女性を指す別称。サーギオス軍における切り札的存在だが、その在り方故に、軽侮される事も多い。剣と共に生き、剣と共に死ぬ。その儚い生き方をして「戦闘妖精」とは、いささか出来すぎた別称であろうか。近年に入り、幾つかの専門化されたスピリット群に分類・訓練されるようになった。





――統べし者エトランジェ



 神剣を「魅入らせた」者に対する尊称とも言える別称。スピリットを越える能力を神剣から引き出せるが、現存者はほとんどいない。有名なエトランジェとして、「秋月瞬」の名がサーギオス帝国内で広く知れ渡っている。





――ハイロゥについて



 原則、存在しない。ただし、ウィング・ハイロゥのみは肉体強化魔導の延長として、ごく一部のスピリットが使いこなす。彼女達は「神剣に喰われた」状態に限りなく近い状態になっているが、戦力としての評価は平均して高い。





――神剣魔法について



 この世界では、神剣に情報として保存されている術式を術者が読み取り、行使する事で「神剣魔術」と呼ばれる魔導を行使する。よって、個々人の扱える魔術には限りがあり、自らの持つ神剣によって行使できる魔術以外は行使できない。符術の一種と考えて差し支えないだろう。



 ちなみに、サーギオスの再現した神剣と古代王国オリジナルの神剣ではかなり能力的に差が開きます。だいたい、スピリットとエターナルくらいの差はありますね。





――その他留意点?



 ラキオス? 何それ、美味しいの?(爆

 アセリア? エスペリア? レスティーナ? 出ませんよ、たぶん(爆

 オルファリル? 誰それ?(核爆











 まぁ、そんな感じで設定されております。あ、ちなみに個人的な好みはヘリオ……げふんげふん。アセリアかな? アセリアかな?(二回言うな

 あー、ちなみに古代王国やら幻獣やらはこの先出てくる事はまず無いです。ま、何かの折にちょっと顔出したりしますが、そんだけ。

 大体、幻獣なんて代物出したらバランスえらい事になってストーリー壊れちゃいますし。幻獣一匹で大陸の二割焦土化の打撃力査定……か。あ、もちろん全大陸の二割ですので。

 ……出せねぇよなぁ、やっぱ。うん、出せませぬ。



 さて、次回はいつ出せる事やら……。

 まぁ、出来るだけ早く書きあがるようにがんばります。では〜