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<縁>第8話 〜沢渡 真琴〜編
『DNA』
by シルビア
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「ここは……私の故郷……狐だった頃の故郷……」
「目がさめたかい、ミコト。それとも真琴と呼んだようがいいかな?」
「その名前で呼ぶのは……」
「ボクだよ、サガだよ」
「久しぶり、でもないか。ねえ、ピ・ロ☆」
「ピロとはあんまりだな〜、いつも呻いて抗議していたんだが。相沢祐一のネームセンスには本当に呆れるてたんだよ。な〜、マコピー☆」
「真琴はマコピーじゃないよ〜。それに今はミコトと呼んでよ〜」
ミコトはそういうとサガの頭を叩いた。
「痛いな〜、もう。もう飼い猫じゃないんだから、叩くなよ。まあ、とにかくネコの姿から元に戻るとするか」
そういうと、サガは狐の姿に戻った。
「全く、ミコトの守護も楽じゃなかったよ。財布をさがしたり、トラックの荷台に捨てられたり、アレルギーの名雪のくしゃみを顔にうけたりとね。肉まんぐらいじゃ、割が合わないよ、全く」
「サガがあたしの手助けをしていたこと、分かっていたんだけど、なんていうかその〜。一応、ありがとう〜と言っておくわ」
「長の命令だから、気にしなくてもいいさ。それにもうお役ご免だしね。ま、真琴の頭の上に座るのはまんざらでもなかったさ」
「互いに狐の頃は幼なじみの仲だったしね。あたしが人間であなたがネコでなければまずあり得ない構図だわ」
「まあ、そういうな。それよりも……」
サガは真剣なまなざしを浮かべ、話を続ける。
「ミコトはもう狐にはもどれないんだよな。俺は仮にネコに姿を変えただけだから何の問題もなく狐に戻れたが」
「うん、人間になるために狐の時の記憶と生命力を無くしたからね。今は本能に刻まれた私の想いだけが残っているの。姿は見えると思うけど幻影のようなものよ。今の状態の時だけは、狐の頃も人間の頃の記憶もあるんだけどね」
「まあ、次に転生しても、ミコトはミコトだからどこかで会えるかもしれないけどね。それに、俺も次は人間になってみたいと思って居るんだ」
「どうして?」
「水瀬家で可愛がられたからかな。ミコト(真琴)みたいに本当の人間になってみるのもいいのかと思うようになったからさ」
「でも、人間でいられる期間は短いんだよ?」
「その時はミコトと同じようになる。でも、その前に、俺がミコトを好きだということだけは伝えておくよ」
「うん、きがついていたよ。ゴメンね、私が勝手にしたことで、こんなことになって」
「気にするな。……うーん、そろそろ時間か?」
「うん、ばいばい、サガ」
「ああ、ばいばい、ミコト」
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エピローグ
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真琴(ミコト)とピロは再び相沢家の祐一の元へと転生したのだ。
今度は正真正銘の相沢家での家族の一員(誠と浩)となった。
その前にサガは人間の姿で、天野家に世話になったらしい。それから後、真琴の後を追った。サガ曰く、天野を元気づけてあげたかったらしい。
再び記憶を無くし身を改めたミコトとサガであったが、その時の家族としてのぬくもりは二人(二匹?)の本能として引き継がれている。
楽しかった思い出はDNAのように本能に刻まれ、転生を繰り返しても、なにかの拍子に懐かしさを覚え心が温まる。
---名雪と祐一が結婚して1年ほどたったある日
この時、名雪は祐一との間に双子の子を生み育てていた。
名を「相沢誠」と「相沢浩」とつけた。
赤ちゃんは泣くのが商売とはいうが、この二人も例外ではない。
「二人とも夜泣きか〜、勘弁してくれ〜」
「あらあら仕方がないね〜。誠・浩……」
名雪は子どもを抱きかかえると、必殺技を使った。
かざってあった風鈴を誠にもたせ、よしよしとあやす。
浩を祐一にわたすと、祐一は浩に肩車をしてあやす。
「誠ったら、風鈴がすっかりお気に入りなんだから……」
「浩はどうして肩車をするとこんなに機嫌がよくなるんだか……」
祐一と名雪はそういって笑いあった。
「なんか、真琴とピロがいた時のことを思い出すわね」
どこか昔を懐かしむ表情をする名雪。
「まったくだな〜」
祐一は苦笑した。
FIN.