< 縁 >
(Kanon) |
外伝第2話 「私の夢」
〜倉田佐祐理編 〜(完結編)
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written by シルビア
2003.9-10 (Edited 2004.2)
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(『<絆>』最終話より)
高校卒業後、10年経ったある日、倉田家でのパーティでのこと。
「佐祐理さん、さっき踊っていた男性のこと、まんざらでもないんじゃない?いい雰囲気だったよ?」
名雪はいたずらっぽい目をしながら言った。
「はぇー、見てたんですか……そうですか……とても恥ずかしいです」
……(はぇー、やはり連れてくるんじゃなかった。……すっかりばれてます)
「その男性は大分佐祐理のことをお気に入りだったようだぞ。ちなみに、先ほど私に見合いの話をしたいとお願いしてきたが、どうする?佐祐理?」
……(え?見合い?透ったら何を考えてるの?)
「えぇー……私、今回はお受けしてもいいかも」
……(こうなったら舞も引きずり込んで……とあれ?)
「舞〜、誰と話しているのですか〜?」
佐祐理はいたずらっぽく叫ぶように言った。
「「……」」
ちょっと人目につかない場所でラブラブしていた舞・久瀬は放心したように視線を返す。
「「お二人さん、お似合いですよ〜」」
秋子と佐祐理は口をそろえて言った。
「何〜?」
倉田誠一郎はびっくりして秋子の方を振り向いた。
「舞〜、ごめんね〜」
ジト目をする舞に佐祐理は必死に謝った。
「久瀬、大分困ってる。
佐祐理……自分の事、棚にあげた」
養父・倉田誠一郎につかまって尋問を受けている久瀬を横目でみながら舞は言った。
佐祐理の彼氏・高木透のことは当然舞も知っていた。
「ごめんたら〜」
「……佐祐理なんて知らない」(ぷん)
「それにしても、才色兼備の佐祐理さんと舞がこんなに行き遅れるとは思いもしなかったな。それに、舞と久瀬があんなにラブラブとは世の中わからんものだ」
相変わらず、口にチャックをし忘れる祐一。
(お母様……)
(お母さん……)
(「了承」)
秋子は二人の視線の意味を理解したのか、ポケットから小瓶を2つ取り出して、佐祐理と舞に手渡した。
「あはは〜ゆ・う・い・ち……それが義弟が義姉に向かっていう言葉ですか?」
「祐一、言って良いことと悪いことがある」
そう言う二人の手にはオレンジ色の物体のはいった小瓶がちらついていた。
「「しばらくお部屋でお休みしていてください。
(これ以上、騒ぎを大きくしないでください!)」」
「☆??!**+&’」
しばらくして倉田家の主治医達に祐一は別室に運ばれた。
「祐一〜〜〜〜〜〜〜」
名雪はちょっと拗ねながら、その様子を見ていた。
「佐祐理、親子で隠し事はいけませんよね?」
「は……はい……」
「透さんは佐祐理の彼氏でしょ、それもフィアンセですね?」
秋子は佐祐理の左手の方を見て、そう言った。
「はい」(ポッ)
「ふふふ、透さんもなかなかやり手のようですね、お見合い楽しみです♪」
「???(お母様、何か気づいているようですが……)」
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それから一週間後。
(透ったら……何で透と今頃お見合いしなきゃいけないのよ〜!)
ちょっとフォーマルなドレスを着ながら佐祐理は心で叫んでいた。
高木の両親は有名な弁護士・高木拓也と人気女優・高木静香であった。
その二人はアメリカで活躍し、そのため普段からこの二人は海外生活をしていた。
透は見合いの席で少しはずかしそうにしていたが、程なく毅然な態度をしていた。
……
「それではしばらく本人同士でくつろぐのもいいでしょう」
透と佐祐理は庭の方へ揃って歩いていった。
「本人達の間では、もう結婚するつもりでいるみたいですね」
秋子は佐祐理達の姿がみえなくなると、高木の両親に向かって言った。
「そのようですね。
佐祐理お嬢さんの手に指輪を見つけましたから、間違いないです。
あの指輪は私が透に与えた、私の母の形見なんです。
”結婚したいと思う女性ができたら、この指輪を贈って上げなさい”って
去年与えたものなんです」
「静香さんは、佐祐理と透さんがつき合ってたことを既にご存じだったんですね」
「知ってるも何も、透ったらすっかりばればれでした。
透の撮る写真が佐祐理さんばかりでしたし、写真の表情を見れば
それが恋する女性の表情だってことぐらい、分かります」
「それもそうですね」
「実は一枚、こっそり持ってきてるんですよ。秋子さん、ごらんになります?」
静香は一枚の写真を秋子さんに見せた。
「なるほど。これは傑作ですね。ほら、あなたもごらんになってください」
秋子さんは苦笑いを浮かべて、その写真を誠一郎に渡した。
「これが佐祐理の夢だったんだな……それにしてもいい笑顔だ」
「透、意地悪ですよ〜。どうしてプロポーズの後でわざわざ見合いをするんです?」
「ははは、実は交際の事、うちの親にいいそびれていてだな……親に見合いを奨められてたんだ……それで急いで……佐祐理の写真を使って見合い写真を作ってだな……」(汗)
「はぇー、私の見合い写真を作ってたんですか?」
「後でその写真も見せてやるな。
それに、俺、佐祐理に家のことや親のことは話してなかったろ?
それに、佐祐理は倉田家の令嬢なんだから、一応筋は通しておいた方がいいかなと。
こういう場を借りての方がうまくいくと思ったんだ。
家の両親もだな、可愛い娘が出来ると、とても期待してるぞ」
「可愛いだなんて……恥ずかしいです。
ですが、透の気持ちが本気なのはよく分かりました」
「分かってくれた?」
「ふふふ……でも、いたずらッ子にはメッっしないといけませんね」
佐祐理は少しきつめの表情を浮かべて行った。
佐祐理は左手の指輪をちらっと眺めては、透の肩に手を回して抱きついた。
「おーい、勘弁してくれよ〜」(泣)
「駄目です!」
佐祐理はそっと透の体を引き寄せてから、強引に透の唇を奪った。
それから、佐祐理は透の体からふいに離れては、透に背を向けた。
「これだけじゃ済ませてあげないわよ♪
私、大分、機嫌が悪いんだからね♪」
「やれやれ……今夜はお姫さまのご機嫌とりか……」
透は佐祐理の背後から佐祐理の髪を撫でてはあやした。
それから、佐祐理と透の二人はは見合いの席に戻った。
佐祐理はテーブルの上にあった一枚の写真を見つけた。
「あ〜〜〜〜〜」(ポッポッポッポッポッポッ)
佐祐理は小声で叫ぶと顔を真っ赤にした。
「まさか……」
透はちらりと見えたその写真に手をのばし、恐る恐る写真を眺めた。
そして、透はそばで微笑みを浮かべている自分の母親の表情を見て、(やられた〜)と心の中でつぶやいた。
「佐祐理さん?」
静香は佐祐理の方を向いて口を開いた。
「こんな仲むつましい雰囲気、素敵ですね。
これからも透をよろしくお願いします」
「こんな佐祐理の表情を見せられてはな、交際を認めないわけにいくまい。
でも、少し妬けるな。
佐祐理、一度私にもしてくれるなら、二人の結婚も認めるぞ」
誠一郎は笑いながら言った。
その写真は二人が写っているものだ。
プロポーズの後で、佐祐理が、透にリクエストして撮ってもらったものだった。
玄関先に立っているふたりの姿……
ちょっと照れている透と、透のネクタイを直しながらほんのり赤らむ佐祐理がいる。
これから『行ってらっしゃい、あなた♪』といわんばかりの佐祐理である。
<縁>外伝 倉田佐祐理編 FIN
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