< 縁 >
(Kanon) |
外伝第2話 「私の夢」
〜倉田佐祐理編 〜(前編)
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written by シルビア
2003.9-10 (Edited 2004.2)
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(前作、外伝第1話 『笑顔』より)
佐祐理は鏡台の前に座った。
……「あはは〜」
……「ふぇ〜、変わりませんね〜」
……「きゃはは〜」
……「ふぇ〜、尻軽です〜」
……「ふふふ〜」
……「ふぇ〜、何か怖い感じです〜」
……「ふふ」
……「ふぇ〜、大人っぽ過ぎます〜」
……「はい〜」
……「ふぇ〜、子どもみたいです〜」
鏡を見ながら、なにやらいろんな表情を浮かべてはぼやいている。
そう、一弥に笑顔が変と言われたことを気にしたらしい。
笑ってみてはうまくいかずに嘆く佐祐理。
(はぇ〜、笑顔の練習、もっとしないといけませんね。ファイト〜、ですね)
大学のキャンパスに元気のいい声が響き渡ってます。
「倉田出版から本日発売された倉田佐祐理ニュー・バージョンのプロマイド写真集だよ〜。今日だけは特別、直筆サイン付き〜!さあさあ、買った〜!」
(恥ずかしい宣伝文句ですね。少し恥ずかしいです。でも……)
私は今、バイトでモデルの仕事をしてます。
この度、私の新しい写真集が発行されました。
私は写真集を買ってくれたファンに、感謝の気持ちを込めてお礼をしてます。
写真集にサインを書いたり、ファンの気に入った写真に私の直筆のメッセージを
添えたり、握手をしてます。
水着姿で恥ずかしそうに胸を隠す姿、エプロンをして料理する姿、テニスのスコート姿、編み物をする姿、何気なしに電話をしている姿
……サインする時に開かれたページの、こんな自分の写真をいざ目の前にすると、やはりどきっとするものがあります。
(この写真を撮った時は……)
ふと撮影の時の情景が浮かびますね。
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カシャ、シャー、カシャカシャ、カシャカシャカシャ……
カメラのモータードライブの音って、なんか心地いいです。
それに、ニコンF4の音はなんかプロっぽくていいですね。
佐祐理のニコンF70も可愛らしい音がしますけど、ニコンF4もなかなかです〜♪
でも、スタジオにいると外にいるよりも熱さを感じますね〜、
ふぇー、佐祐理はもう耐えられません。
「佐祐理、少し休憩しようか?
おーい、皆、一休みするぞ〜」
(あ、気がついてくれたんですね)
なんか天から聞こえた声のように感じました。
「さすがにスタジオの中は熱いね。俺もくたくただよ」
「ふふ。これだけ熱いとジュースもとても美味しいです。
でも、何でホット・コーヒーを飲んでるんですか?」
佐祐理はグレープ・フルーツジュースを嬉しそうに飲みながら言った。
「熱いときはかえって暖かい飲み物のを飲むとホッとするんだよ」
「はぇー、そうなんですか〜」
「ところで、今度の写真集では大人っぽい佐祐理さんのイメージでと思うけど、佐祐理さんの思う大人っぽさってどんな感じかな〜?」
「そうですね〜、うーんと、”親愛”って感じですね。
友人とか家族とか恋人とか、自分の好きな人にむけて心から優しくしている姿って、なんか大人っぽく感じませんか?」
「お〜ナイスだ! そのイメージ、いただきってところだな。
佐祐理のイメージにもうってつけだ。
じゃ、こんなシーンなんてどうだ……」
そう言うと、彼は私にいろんな構図を提案してくれます。
……
「あ、それって、イイですね♪」
佐祐理はその提案をききながら、気に入った構図があればうなずいて、それで撮影してもらってます。
「じゃ、そろそろ撮影再開といくか」
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この写真を撮ってくれたカメラマン、実はそれは私の今の彼なんです。
写真の表情は、そんな彼と一緒のシーンを想像して浮かべた表情なんです。
つまり、私が彼にみせたい自分の表情、そのものなんです。
彼は私と同じ大学に通う学生ですが、法学部にいながらも写真が好きだからとすっかりこの仕事にはまっているのです。
でも、彼、カメラマンとしても割と腕がいいんです。
それに、同じ大学に通っているので、なにかと話題も合います。
私、彼のこと好きです。
私にはある夢があります。
きっと、それを彼がかなえてくれる、今はそう信じている私がいます。
「どんな夢なの?」ですか。
かなうまでは「内緒♪」です。
(つづく)