鬼、と呼ばれた者がいた。

それは、何も単一世界に限ったものではなく、オーガとも呼ばれている。

しかし、その者は本来アヴァターにはいない。

しかし、彼はそこにいた。










DUEL RIDER



8.鬼、再逅























傷だらけの男がそこには横たわっていた。それは、かつてテンペストと激戦を繰り広げた者であった。

(創られた者である以上、創りし者には逆らえない、か)

その者、キズナは自身にかかる制約を思い返し、今与えられつつある役割を認識していた。本人にとっては非常に癪ではあるが現状では逆らう、という選択肢は存在しない。

「自由のきく範囲など無きに等しいが」

それでも、と思う。

最終的に翔矢に討たれるという結末以外は存在しない。しかし、運命を捻じ曲げ、己をこの地に呼び出した存在に対し精一杯の抵抗程度はしてやっても良いとは思っている。それくらいにはかの者のことは気に入らない。いっそ、激しい憎悪を抱いているとさえ言える。

「出来るだけ接触は避けつつ、近付いてみるか」

いるのはわかっている。少なくとも、翔矢はすでに同じ世界に立っており、祐一こそいないが、同種の存在、仮面ライダーが複数体存在しているのは感知している。

(…… 複数体?)

ここまでで思う。少なくとも、キズナの知る限り、ビースト一体型程度の存在で世界の壁を越えられる存在はいない。つまり、ここにいる仮面ライダーとは自らの知りない存在であることが言える。

そして、それはキズナにとっては朗報である。

自らを打破し得る存在とは、すなわち黒幕、元凶と渡り合うことができる存在である。そんなものが複数体存在する。それは彼にとってはその望みを実現する可能性をどこまでも高めるという意味を持つ。

「ならば」

であるならば。自らもその可能性を高めるために行動するしかない。傷を厭わずに立ち上がる。

「間引くとしようか」

瞬間、彼の姿は鬼のようなそれと成り、アヴァターの者が言うところの破滅のモンスターを狩り始めた。

「脅威は少ない方がいい」


























ドルイド科の捜索に向かった翔矢ではあったが、結果としては手遅れであった。行方不明になっていた3名が全て物言わぬ状態で見つかったためである。

翔矢と同じく、捜索に回されていた戦士科の面々もこの結果には沈痛な面持ちであった。

「翔矢か」

戦士科に在籍しているセルは翔矢の姿を見つけると声を掛けた。

「悪いな。折角来てもらったのに、こういう結果で」

「こういうのは仕方がない。そもそも、俺が動き始めた時点で手遅れだったようだ」

そんなことを言いながらも、その拳を血が出そうなほどに握り締める姿はセルのどこかに響いた。大河は力の面ではセルの先を行くが、その精神の面では同レベルであった。女好きのお調子者で、どこか臆病である。そんなよく似た2人だった。

だからだろう。

大河は翔矢に嫉妬し、認めなかった。

セルは、そんな翔矢に憧憬すら抱いた。

こんなにも不器用で、誰よりも正義感に満ち、誰よりも優しく生きようとする。

(お前は1人でいいって言うんだろうけどな)

1人でいようとする翔矢に気付いたからこそ、セルは名前で呼ぶことにした。だからこそ、この場でも声を掛けた。

自分はああはなれない。それでも、ああなりたい。そう思ってしまったから。

「んなこと言ったってどうしようもないだろ? それより、大河たちのほうがどうなったのか教えてくれよ」

「そちらは俺も知らない。途中で俺だけがこちらに来たからな。連絡をつける手段も今は持ち合わせていない」

翔矢はそう言ったものの、彼らの無事という点においてのみであれば疑ってはいない。

七海がいる以上、並大抵の存在ではあれを打破することは難しい。まして、ナナシの正体を知らされているために、余計にその失敗を疑うことはできなかった。

翔矢にとっての問題はナナシ改めルビナスが『こちら側』に属するか否かでしかない。

「流石に無事であることは疑っていないが」

セルが未亜に気があることは情報としては翔矢にも知らされている。王室側からすれば救世主候補はマークしておくべき対象であるため、その交友関係も把握されている。そして、王室直属に任務が与えられ、救世主候補が潜在的な敵対存在となっている分室にはそのあたりの情報がきちんと与えられている。

「まあ、俺もそれについては疑ってないけどな」

言って、セルは笑う。こちらの場合、救世主候補という絶対の存在の敗北を疑っていない。それだけ救世主伝説と伝説のメサイアパーティーは絶対なのだ。現在のように破滅の存在が感じ取れる以上は尚の事。

「だから俺たちはお前たちみたいな救世主候補が動きやすくなるように細かいところをやってくんだ」

これがこのアヴァターでは当たり前の思想なのだ。破滅がやってくる。救世主が女性で、世界を救う。その分、男の立場はやや低いものがある。そこに現れた大河は彼らアヴァターの男性にとっては希望なのである。懐疑的な目もあるが、希望であることに間違いはない。

(この世界では、命を懸けることが当たり前みたいだな)

当然、その分だけ命の価値も低いだろう。そのことに心を痛める者もいるが、この世界に生きる1人が破滅の前に、救世主のために命を懸けることは当然だと思っている。自分達が生きて世界を救い、未来をつなぐなどとは考えないだろう。

(クレアが泣くわけだ)

この世界を想い、この国を想い、民を想い、慈しみ、憂う気高い少女が真実を知ったとき、一瞬ではあったが顔を伏せた。その直後の顔はそれまでと何ら変わりなかったが、目尻に僅かながらも光るものがあった。口には出さなかったが、それが何なのかは誰もがわかっていた。望まれないからこそ誰も何も言わなかったが、彼女が何を思ったか、それは誰もが理解していた。

「いくら単騎が強かろうと、戦線全てを支えることはできない。お前たちは確かに助けになっている。誇っていい」

「そう言ってもらえると、俺達としても嬉しいもんだな」

翔矢にしても七海にしても自分がこの世界に属する者だとは思っていない。当然、事態が収束に向かうならば、終わりを迎えることができたなら、彼らは元の世界に戻るだろう。救世主候補がどうするかは彼らは知らないが、それでも帰る者も出るかもしれない。

では、破滅を撃退した後にこの国を、この世界を建て直すのは誰になるのか。それはこの国に生まれ、この世界に生きる者になる。クレアは、救世主候補や翔矢たちの力を借りねばならないことを恥ずべきことであると感じていた。たとえ根の世界であったとして、この世界の問題をこの世界で完結できない、他所の世界の力を借りなければならない。それは真に恥ずべきであると。

そんなクレアの想いを知るが故に、翔矢は一つのことを思う。

(この世界には、仮面ライダーはいない。俺たちはこの世界の者じゃない。なら)

この世界にも、いや、この世界にこそ、人類の平和と自由のために戦う。そんな存在がいてもいい。それは、他の世界から連れてこられた救世主候補などではなく、この世界で生き、これからを担う者であるべきだ。


























王城にてクレアは頭を抱えていた。

翔矢らが不在の間の護衛や任務のために3人紹介されていた。うち2人は翔矢や七海、当麻兄妹のような服装だったが、1人だけが何故か甲冑だったのだ。それも、近衛の。しかし、顔を見ても知らない者であった。これで頭を抱えないほうがどうかしている。

「あー、そなた、名はなんと言う? 正直、近衛の甲冑を着込んでいるとはいえ、そなたには覚えがない」

この場にいるのがダリアだけなのをいいことに正直に問うクレア。

「俺か? 俺はただの通りすが……」

「真面目に答えてください」

甲冑の男、士がいつものように答えようとしたところ、夏海が制裁の意味をこめて笑いのツボをつく。

「お、お前っ、クッハハッ、何っ、しやがるっ」

言いながらも笑いをこらえられない士。

「真面目に答えない士くんが悪いんです。この人、門矢士っていいます。鎧を着ているのは、この世界での役目がそういうことだからです。
 それから、私は光夏海で、こっちが」

「小野寺ユウスケです。俺達全員、仮面ライダーです」

全て説明してもらっても、クレアは頭を抱えることになった。

「待て。確かに聞いてはいたが、お前達全員が仮面ライダーだと?」

クレアとしては半信半疑もいいところだった。実際のところ、彼女だけが翔矢や七海が戦っている姿を見ていないのだ。ダリアやミュリエルからの伝聞でしかない。今更この者達が情報を秘匿することなど無いだろうが、救世主候補を圧倒する存在が目の前に3人もいるとなるともうどうしていいかもわからなくなる。

「……取り敢えず、これ、脱いでもいいか? このままじゃ暑苦しくてしょうがない」

「いいだろう。正直、採用した記憶の無い近衛にうろつかれても困る」

部屋の隅でガチャガチャと音を立てながら甲冑を脱ぎだす士。

「ふぅ。暑苦しかった」

脱ぎ捨てた甲冑は部屋の隅に積まれ、中から出てきたのはコートを羽織り、首からカメラを提げた士だった。

(しかし、この者、近衛がこの世界での役目と言ったか)

そんな士の姿を見ながらクレアは思考する。彼の役割が近衛である。近衛の役割は王女たる自分の護衛である。

つまり、彼がその力を奮うべき瞬間が自分の傍で起こることが示唆されているのだ。無論、そうではない可能性もある。近衛であるならば王族の警護の関係上、城内の様々な場所への出入りが求められる場合も存在する。だが、クレアはそちらの可能性は低いと見積もっている。

「何が出るやら」

思わず呟き、溜息を吐く。士にせよ、翔矢にせよ、クレアは彼らが戦う姿を報告でしか知らない。だからこそ、世界の破壊者、仮面ライダーディケイドが傍にいなくてはならないだけの脅威が想像できない。

士は七海がワームとインベスに遭遇した事実をまだ知らない。大樹も七海と別れているのでそれを見ていない。ディケイドがいるがためなのか、その点に関しては事実を知っていても誰も正答を用意することはできないのだろうが。

「士、といったな」

「ああ」

「そなた、この世界の救世主のシステムについてどう思う?」

クレアは自身が疑問を抱いているとはいえ、幼い頃から当たり前のように聞かされてきた救世主伝説が、それを知らない者から見たときにどう見えるかを知りたかった。おそらく、これに関してクレアの問いに正しく答えうるのは七海、士、大樹、夏海あたりだろう。ユウスケは物事の表面ばかりを捉えている節が見受けられるので候補から外されている。夏海も危うく外されるところでもあった。ミュリエルは限りなく正解に近い答えを知っている所為で既に客観的な答えを提示することができない。これについては翔矢も同様である。七海は答えることができた、というのが正しいだろう。彼女の中には既に情報共有によって与えられた限りなく正解に近い答えが存在している。

そして、救世主クラス一同はこの点については不適格である。何故なら、彼らは召還時に書から救世主になれば、己の願いを叶えることができる、と正しくもあり、誤りでもある情報が与えられている。当麻兄妹のような例外も存在するが、すでに説明がなされてしまっている。

「選ばれた者の中の更に選ばれたたった1人が世界を救うことができる。すごい浪漫のある伝説ですよね」

訊かれてもいないくせにユウスケが答えた。この答えが想像できたからこそクレアは彼に訊かなかったのだ。

そして、士はクレアの表情で何かを察したのだろう。

「大体分かった」

彼女の求めは、そんなに単純なものではない、ということだ。

「まず質問なんだが、救世主が1人で無ければならない理由は何だ? 現に、今は何人か救世主候補とやらがいるんだろう?」

これは、ある意味では非常に士らしい言葉だろう。

「世界を救うのに、1人きりで戦う必要も無いだろう。そこの馬鹿だってわかってることだ」

いくつもの世界を巡り、その世界のライダーを破壊せず、仲間とし、最終的に全てのライダーのいる世界を繋ぎ、今でも繋ぎ続けている。そんな存在だからこそ、救世主は1人というルールに疑問を呈する。

「最後の1人が残る。それは、戦いでしかない。自分の願いを叶えるために、他の誰かを犠牲にする。救世主候補の願いは、それと何も変わらない。少なくとも、俺はそう感じている」

それとよく似た戦いを繰り広げたライダー達がいた。

13人のライダー全てを倒し、最後に残った、勝者になれば願いが叶う、そんな戦いに身を投じたライダー、龍騎。

全ての生物の祖としてバトルファイトを繰り広げたアンデッドと、それを模し、封印していったブレイド。

新たな世界、その構築のため、己の全てを賭けて黄金の果実を求めたライダー、鎧武。

そのどれもを知る士だからこそ思う。

「救世主が1人である意味はない。もしも意味があるのなら、それは俺達が考える救世主とは違うものだ」

「救世主が1人である意味はない、か」

クレアが士の言葉を反復する。それは、その意味を噛み締め、自らのものとしているかのようでもあった。そして、これは翔矢がリリィに語った内容に近いものでもある。独りでいる者は誰かを守ることはできない。守るべき誰かを持たないからだ。何故なら、独りでは全てを背負うことなどできないからである。もしも背負おうとでも思うのなら、その責に押しつぶされるか、己を捨て、心を持たぬ戦うためだけの存在でなければならない。

しかし、人はそれを救世主とは呼ばないだろう。

「そうか。この世界の救世主は、守るべきものを持たない、ある意味にあっては恐ろしく強き者であり、同時に心弱き者なのだな」

クレアがこの結論に至ったと同時に、外が俄かに騒がしくなった。

「何事だ」

勢いよく扉が開かれ、近衛兵が駆け込んでくる。

「殿下、お急ぎここを離れてください。破滅が城内に出現しました」

「ならぬ。私はここで指揮を取らねばならない」

近衛に対し、クレアは即座に反発した。城内に出現したこと事態は奇怪な出来事ではあるが、彼女自身、国内が一枚岩であるとは欠片ほどにも思っていない。ならば、必ず招き入れた者がいるはずなのだ。そんなものがどこにいるとも知れない城内を襲撃を受けている現状で移動するのは正気の沙汰ではない。ここは正しく敵地であるのだ。

「殿下!」

近衛は諦めたように肩を落とし、言う。

「ならば、せめて私めの傍を離れませぬよう」

「いや、そなたは迎撃に回れ。こちらには救世主クラス分室より派遣された者がいる。救世主候補に匹敵するものが3人もいてさらに護衛がいるのは過剰であろう。ならば戦力として送り込む者があってもよい」

この言葉を受け、ユウスケが力強く頷き、士が肩を竦める。

「どうしても私と行動はしていただけませぬか」

「ああ」

「ならば」

俯いた近衛兵の姿が変わっていく。黒い体に、黒い翼。まるで、悪魔のような姿に。

「なるほど。そなた、破滅であったか」

「嫌でも一緒に来てもらおうか」

悪魔は人間を越えた速度で持ってクレアに迫る。しかし、

「邪魔だ」

「ぐはっ」

士に蹴り飛ばされて床を転がる。

「経緯も何もかもがどうであれ、ここで出会った者たちは大切なものを守るために生きていた。そのために、世界のあり方でさえ敵に回してもいい。そんな者たちばかりだ。だから、時にはそんな者を守ろうとする者がいてもいい。そうだろう。だから、俺たちは戦うんだ。世界中、どんなところにもいるヒーローを、メサイアを守るためにな!」

「貴様ら、何者だ!」

「俺は、いや、俺たちは」

「「「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」」」

士、ユウスケ、夏海が合わせて声を発し、そえぞれが自分の変身を行うために動き始める。

士がディケイドライバーを腰に当てるとベルトが展開される。左腰部に装着されたライドブッカーからライダーカード『ディケイド』を引き抜き、前方に見せ付けるように突き出す。

「変身」

カードを一瞬で裏返し、ディケイドライバーに装填、バックル両側のサイドハンドルを内側に押し、バックルが90度回転する。

《Kamenride DEDEDE DECADE!》

バーコード状に展開された分身が融合し、士の体と一体となり、黒とグレーの体になる。そして、頭部に6枚のカード状の物体が融合すると同時に顔や装甲がマゼンタカラーとなる。

ユウスケが両手を広げると、腹部に古代の遺失物霊石アマダムとそれを覆うベルト、アークルが出現する。アマダムを包み込むように両手で覆い、右腕を左前方、左腕を右下方に展開し、右腕を左へ、左腕を左腰横まで同時に移動。右腕を左拳の上にやり、叫ぶ。

「変身!」

叫ぶと同時に両腕を広げ、足、腕からその姿が超古代の戦士、クウガの姿へと変わっていく。赤きクウガ、マイティフォームである。

「キバーラ!」

「は〜い」

夏海がキバーラを呼び、その手で捕まえる。

「変身」

「チュ」

キバーラが夏海の声に合わせて呟き、夏海の周囲がハート上の光に包まれ、その姿は白と紫の鎧を纏った仮面ライダーキバーラへと変える。その手には専用の武器であるキバーラサーベルが握られている。

ここに3人の仮面ライダーが姿を現した。そして、クレアを攫いにきた悪魔に対しては過剰戦力でもある。だが、その過剰戦力の故に、相対する存在は王国側を嘗めるのではなく警戒するようにもなる。

戦力の逐次投入は悪手ではある。しかし、過剰戦力に対し、大軍か精鋭を増援として送り込むことは必要であった。

この場合、バーンフリート王国や王立フローリア学園内部に送り込まれたスパイや、逆召還などの手段によって送り込まれることとなる。そして、おそらくこの時点では報告されている救世主候補の実力では対処が難しい実力者に限られる。この世界の常識として、救世主、救世主候補に勝る戦力などまず存在しないのだから。


























それは唐突だった。

鬼は振り下ろした得物がオークを叩き潰したのを感じながら、迫る悪魔を叩き落とす。そんな時、その足元に魔方陣が展開された。

「またか」

辟易としながらも、もう逃れられないことを感じ取り、手土産といわんばかりに魔方陣内の魔物を駆逐していく。

結果。

クレアの執務室に血の海と返り血で血みどろになった鬼が召還された。

「またライダーか。それも、知らないもの。これも縁、か」

鬼、キズナがその身を変質させた存在、オルガは血まみれの破砕棍を担ぐと目の前で悪魔を斬り捨てたディケイドに襲い掛かる。

「何だこいつ! 鬼なのか」

当のディケイドはライドブッカーで破砕棍を打ち払い、一枚のカードを取り出す。

ライダーカード『響鬼』

「鬼には、鬼だ」

《Kamenride HIHIHI HIBIKI》

その姿は清めの音で魔化魍から人々を守る音撃戦士の姿であった。

「はっ」

取り出した音撃棒『烈火』に炎を宿し、オルガに叩き付ける。その一撃一撃に清めの音が籠められ、僅かではあるが、オルガにかけられた“制限”を取り払っていく。

当然、オルガもディケイドもこの展開を狙っていたわけではない。狙っていたわけではないのだが、オルガの意思に反してかけられた制限と、邪なるものを祓う清めの音。これらが図らずもこの結果を導き出していた。

「そろそろか」

撃たれるオルガも制限の元反撃を行うが、自身の制御を取り戻すにつれ反撃をするふりをして接近する魔物を叩き落とし、クウガやキバーラに迫る魔物を打ち落としていた。

「はあっ!」

ドン、と最後の一打が叩き込まれると、オルガの変身が解除される。

「お前、途中から俺を利用したな」

「ああ。させてもらった。一度受けてみれば非常に好都合だったのでな」

「ちっ。そのままそこにいろ。お前には聞きたいことがある」

言って、ディケイド響鬼はディケイドの姿に戻り、未だ続く戦闘に身を投じていった。

「この結末は想像していなかった。まさか、この俺が奴と肩を並べることになろうとはな」


























ものみの丘、そこは非常に不安定であった。

元々、反信徒が封印され、その封印のために大量のビーストが封印されていた。当然、その封印は物理的な封印ではない。超常の、常人の理解の至らない術でもって施されていたのだ。さらに、翔矢がアヴァターに向かうためのゲートもこの地で開かれた。そして、残っていたビーストの残滓は魔方陣を通してアヴァターへと運ばれていった。

そんな場所が、そんな空間が安定した場所であるはずがなかった。

「グルゥ……」

結晶状の翼を纏った4足の獣。それはそこにいた。

それは面白くなさそうに周囲を見回すと、興味を失ったのか羽ばたき、姿を消した。

「ふぅ」

そのことを確認したのか、草むらの中から声が漏れる。

「まさか、祐一が使ってた力を全部持ってかれるなんて思わなかったわよ」

所々に草がついているが、長く、綺麗な金髪だった。

「あいつ、そんな余裕は無かったかもしれないけど、持っていくんならあれも持っていってくれたっていいじゃない」

デニムのジャケットに、ミニスカート、ブーツ。長い髪を彩るリボン。

彼女を知るものがいれば、こう呼ぶだろう。

『沢渡真琴』

この地に生まれ、この地に消えた超常の存在。

「でも、この前、祐一が来てたわよね」

彼女は少し思案する様子を見せるも、すぐにそれを止めた。

「うん。まぁ、あのうぐぅも目覚めてるはずだから、まずは祐一か美汐に会わないと」

そして彼女は丘を下っていった。

























to be continued…





















the next episode



9.目覚め

























後書き

そんなわけで、書いてみたところ……

あれー? キズナ、解放されてしまった……

彼、最後まで敵対しててもらう予定だったのに。ま、まぁ、元々単独主人公作品の主役のつもりで作ったキャラでしたし、真っ当な活躍ができるようになったんでしょうか。

それはさておき。

今回、これを書き始めて初めて七海が登場しない回になったのではないかと思います。それどころか、翔矢も変身していません。結果的には居残り組の話になった感じです。

そして、前作から引っ張ってきた真琴復活です。

最初はビースト生き残りとか、反信徒残党とかと祐一を戦わせようと思っていましたけど、どっちにしても前作が一体なんだったんだ、ということになりそうなので全く別の新しい敵を用意してみました。

しかし、そろそろデュエルのほうで細かいことが思い出せなくなってきた節があるので再プレイが必要なのでしょうかね。

因みに、最初の方に出した地名は適当です。ツルバギア州、リューココリネ村。

デュエルが基本的に花の名前で統一されているようだったので架空の地名を勝手に作りました。当然、花の名前です。

はからずも花の名前で名前を作るパターンが多くなってきていますね。今ここなんかはオリキャラは全員花の名前ですからね。

では、また次回で。

ファビュラ・フィビュラ Rocklasick2