浩平は自身が纏っていた装甲を脱ぎ捨て、全てを祐一に渡していった。

それを一つ一つ装着しながら祐一は自分の腹部に視線をやった。

そこに、かつて存在していた機械は存在しない。

相沢祐一は、人間でしかないのだ。









DUEL RIDER



3.青の剣























全ての祐一――セイバーが起動するのを確認した浩平は右腕を真上に。左腕を真下に伸ばした。そのまま時計回りに180°回転させる。

「変身」

右腕を下から上へ、高く突き上げ、左腕を胸をカバーするように構える。

光が彼の体を包み込み、その中からONEとなった彼が歩み出てくる。

「俺も…仮面ライダーだ」

ONEが両腕を前に突き出す。両腕に装着されたインストールキャノンを構える。

「喰らえッ」

その言葉と共に光弾が発射される。

銃器を扱うライダーではあるのだが、その銃器は明らかにそれぞれに個体差がある。テンペストフィクサーは圧縮空気の弾丸。デフィート、トライナルは実弾。ONEが光子弾。それぞれの存在の経緯を考えれば当然のものだが、揃わないものでもある。

「じゃあ、こっちは任せた」

言って、ONEは駆け出した。

「了解」

セイバーは拳を構えた。

「そうさ…俺だって、仮面ライダーだ。変身できなくても、葉塚さんも仮面ライダーだったんだ。俺だって…今の俺だって仮面ライダーなんだ!」
























ONEの参戦後、あまり状況は好転しなかった。

戦力が増したのはいいことだったのかもしれない。相手の能力もそれほど高くもない。だが、数が違った。

倒しても倒してもどこからか沸いてくる。

「どうなってるんだ!」

「知らないわよ!」

ONEとケビウンが悪態を吐く。それを無視しながらセイバーがケビウンから借りたデュアルカリバーの片方を振る。

セイバーはナインティルを現場に持ち込んではいたが、テンペストのようにトライアルの技術を応用したアクションは出来ない。ただ乗り回すだけでしかない。こういう状況になるたびに自身の技術の無さを恨めしくも思うが、無い物ねだりをしても仕方がないことも理解している。

「どこから沸いて出てくる…!」

声に出しても状況が変わるわけでもない。

「相沢君、跳んで!!」

慣れ親しんだ声が聞こえ、セイバーは言われるがままに跳躍した。パワーアクセラレーターで強化された跳躍力は足元で起きた爆発を回避してみせた。

「葉塚さん!?」

セイバーが視線を向けると、そこにいたのではトライナルではなく、デフィートだった。

「こいつなら、出動に関する制限はかかってないからね」

言いながら、デフィートは見たことのないバイクに跨りながらスラッガーを構えていた。

「それから、遅くなってごめんね。セイバー用にこいつを準備してたら遅くなったよ」

「いえ…」

「どういう経緯で相沢君が装着してるのかはわからないけど、これがセイバー専用の支援車両。エクスディバイダーだよ」

青と白を基調としたデザイン。その後方には翼のようなパーツが装着されている。

「ほら、それは七瀬さんに返して。で、ここを引き抜く」

デフィートに促されるがままにデュアルカリバーを返してエクスディバイダーのマフラー横の突起を掴み、引き抜く。それは、細身の長剣だった。

「それがコアセイバー。多分、軽めだから使いやすいと思うよ」

セイバーはコアセイバーを構えると敵中突破を図った。

デュアルカリバーよりは長いが、扱いやすい。だが、それだけで突破できるわけでもなさそうだった。

「時に、折原君を知らないかい?」

「あいつなら…あれですよ」

セイバーはコアセイバーを振りつつ答える。

「彼も…仮面ライダー、なのかな?」

「そういうことです。あの頃の戦いの中に、葉塚さんが関与できない戦いがあったんです。そのときにいたのがあいつでした」

「そっか…でも、こうして一緒に戦う仲間だと思ってもいいんだよね」

デフィートの言葉にセイバーは頷いた。

「嬉しいかな。仲間がいるのは」

「はい」

セイバーは答えながら迫ってきていたリザードマンに蹴りを入れ、姿勢を崩したところを斬り捨てた。

「ちょっと道を開けてみよう」

言いながらデフィートはスラッガーを構え、撃った。爆発と同時に一瞬だけ道が開けた。その先にはアヴァターで翔矢等が戦ったゴーレムが鎮座していた。その更に先には幾何学模様で描かれた門があった。

「あれが…」

その門から次から次へと怪物が吐き出されている。

「折原!」

セイバーが叫び、ONEが頷く。

ONEが静かに天に向かって拳を突き上げた。

インストールキャノンが姿を消し、巨大なフォトンキャノンが握られている。同時に装甲がより引き締まった形となり、より洗練されたイメージになる。

『ONE FOREVER STARTING UP』

ONEの姿がフォーエバーフォームのそれへと変化する。

「道は俺が作る」

『FINAL BLOW BRIGHT SEASON』

電子音声と共に、光球と共に、ONEフォーエバーが打ち出される。

それは一直線に開けた空間を作り出す結果となる。

そこにケビウンが飛び込み、デュアルカリバーを構えた。その間にデフィートが降りたエクスディバイダーに乗ったセイバーが動き出す。

「ナインティル!!」

その声と共に、スライムで埋め尽くされていた方向から無人のナインティルが突っ込んできた。

「交代だ。こいつは任せる」

「ちょっと!?」

ケビウンに迫る前にセイバーはナインティルに跨る。性能だけで言えばヘイムダルを上回り、スレイプニルと肩を並べることの出来る唯一のライダーマシンである。

オフロード仕様とオンロード仕様の違いこそあれ、究極のマシンの一つである。

「無茶、させないでよ!!」

一方で、乗り捨てられたエクスディバイダーをケビウンが受け止め、後方の翼状のパーツを抜き取り、セイバーが持ったままのコアセイバーに向かって投げつけた。

翼はコアセイバーに近付くと、互いを感知するかのように結合し、一振りの長剣となった。

「ナイトセイバー。セイバーの全部の剣を結合させた最大の形態。あたしのヴァリアブルアームズの簡易版よ」

「わかった。ありがとう」

片手でナインティルを操り、セイバーはゴーレムに迫った。

「走り抜けるんだ!」

その声の直後、ゴーレムの側面で爆発が起き、その体が地面に倒れた。

少し離れた位置をエクスチェイサーで併走していたデフィートがスラッガーで狙撃したのだ。

その姿を一瞥し、セイバーは更にナインティルを走らせる。

目指すは門。それを突き破り、この事態を終息させる。

「でやあっ!!」

瞬間、ナインティルの上から跳躍したセイバーは門をナイトセイバーで切り裂いた。

同時に周囲にいた怪物が光の粒子となって霧散した。

「呼び出すんじゃなくて…作り出していた?」

























「結局…あれは何だったんですか?」

既に現場には鑑識などが入り、証拠の採集などが始まっていた。

しかし、空中に幾何学模様で描かれていた門や光の粒子となって消えた怪物など、肝心なものに限って消えてしまっていた。唯一、デフィート、セイバー、ケビウンの記録カメラに残された映像だけが証拠といえる状況となってしまった。

「それがわかれば苦労はしないんだけどね」

衛次は力なく笑うだけだった。

だが、祐一はそれに近い何かを知っていた。

(もしかしなくても……翔矢が行った世界につながってたのか)

あの夜。

翔矢が消えていった光の柱。翔矢が語った敵の正体。それを考えれば当然のことだったのかもしれない。これは妨害だったのか、別の要因だったのかは不明ではあるのだが。

「そういえば…僕は確実に今回混ざってた奴と同じ個体と戦ったことがあるかな」

嘗て、大河と未亜が召喚された際に偶発的にこの世界に落とされた牛の獣人、ミノタウロスのことだ。

これで衛次の中でも点と点が繋がり、線となった。それだけでもある程度の答えが見えてくる。

翔矢はあの時の戦いで彼の戦いの答えを導き出し、それを衛次に語ったのである。そして、そのときのミノタウロスが確認されたことによってあの日の出来事とこの日の出来事がつながっていることが証明されたのだ。

「そうなんですか?」

留美にとっては彼らの戦いのほぼ全てが見知らぬことである。あくまで警察から装甲服の開発を任されている民間研究機関の職員でしかない彼女や浩平が衛次らが作った報告書を読む機会などはない。

「ええ。今ここにはいないんですが、天原翔矢君っていう…僕らの仲間がいるんですが、彼と一緒に遭遇し、撃退したことがあります」

この瞬間、祐一の中で完全に繋がった。そして、相手は仮面ライダーの排除に乗り出している。

相手の筋書きを完全に崩壊させようとしている存在。そうなり得る存在。それが仮面ライダーだからだ。

(セイバーじゃ、駄目だ)

祐一は今回の戦いで結局は苦戦するという結果になってしまったことを悔やんでいた。

輝石を2つ持った翔矢――フェンリルであれば、これぐらいは造作も無く駆逐してみせた筈だ。つまり、クロス∞と同等以上の力が必要なのだ。

しかし、トライナルですらその域には達し得ない。

祐一は視線を彷徨わせた。ふと、浩平と目が合った。

「っ!」

そして気付いた。浩平がその身に宿しているエターナルマター。彼はその力により変身し、戦っている。更には翔矢が遭遇したという別個体など、複数のEマターが存在している可能性に至った。

「折原」

「?」

祐一は意を決して口を開く。

「俺に…力を、戦う力をくれないか」

「戦う力?」

「あぁ。どうしても必要なんだ」

浩平は少し考え込む素振りを見せると、すぐに諦めたような表情になった。

「あるにはあるんだけどな。これ、俺達みたいなEマターを持ってる奴にしか効果がないんだよ」

それはある意味では絶望的な言葉だった。

浩平が所持しているEマターは最高クラスのEマター・ゼロ。それは世界への干渉権を持たず、ただ無尽蔵に記憶を喰らい、破壊する存在。いや、存在していると定義すら出来ない朧な存在。

「そうか…」

祐一もみさおとの戦いでゼロの存在を知っているからこそ、納得せざるを得なかった。

「まぁ、こっちでも少し何とかしてみるから、何かわかったら連絡する」

「すまん」

このやり取りの後、祐一は福音市へと向かった。

取り敢えずは、帰るために。

























所変わって、アヴァター。

翔矢と七海に与えられた最初の共同ミッション(翔矢には住居の確保が最初だった)は、王都近郊、ツルバギア州リューココリネ村での調査任務だった。

「王都からそれほど離れていないが…」

「完全な宿場町だね」

リューココリネ村に限らず、ツルバギア州の多くの集落は王都と地方を結ぶ宿場や通商の要所として発展を遂げている。

今でも露天商などが声を上げ、客を呼び込もうとしている。

「それより。もう馬車に乗るの止めない?」

七海が自分の尻を擦りながら言った。

「……まさか、スレイプニルでここまで行けと言うつもりか?」

「それ以外にある?」

考えて、翔矢は七海が望む回答が他に無いことを理解し溜息として吐き出した。それは立派な答えだった。

「雄弁な溜息をどうも」

「それはいい。今日の宿を確保する」

「はいはい。わかったわよ」

2人はその日の宿を探すことにした。

「うわっと…!」

そのとき、一人の小柄な男が道から飛び出してきた。

「ごめん!よそ見してたって…その服装……」

男は翔矢と七海の服装を観察し、自分の服を見た。

翔矢が旅立つときに着ていた服や、七海の服と男の服装は酷似していた。

「良かったぁ…ここ、あんまりにも経路の違う世界でさぁ」

心底ホッとしたと言わんばかりの男だったが、翔矢がその胸倉を掴んだ。

「な、何だよ」

「お前…違う世界の人間か?」

「あ、あぁ…」

男は翔矢の圧力に負けるようにして声を絞り出した。

「ちょっと翔矢君。脅かしちゃ駄目だって」

「だから名前で呼ぶなと何度言ったらわかるんだ」

言って、翔矢は男から手を離した。

「ユウスケ。どこに行った?」

「ん…すまない、ここだ!」

男――ユウスケと呼ばれた――は手を上げた。

そこにやってきたのは首からカメラを提げた甲冑の兵士と、ユウスケと同様に翔矢や七海と共通点を見出せる服を着た少女だった。

「って士!?今度は何だよ」

兵士――士は兜のバイザーを下ろした。

「知るか。こんな世界にライダーがいるかどうかも怪しい」

「いつかのシンケンジャーの世界みたいなものではないでしょうか?」

士は確かに言った。『ライダー』と。

「お前…仮面ライダーでも探しているのか?」

「知ってるのか?」

翔矢は士の兜を剥ぎ取り、地面に捨てた。

「この世界に、仮面ライダーは根本的には存在しない。だが、今はイレギュラーとして俺がいる」

「ライダーの存在しない世界?だが、イレギュラーってのはどういうことだ」

「それに、今回は写真館が一定しません。さっきまであったのに消えてしまいました」

すでに何か違う世界が広がっている。この時点で七海とユウスケが話についていけなくなり、少し離れたところで議論の行く末を見守ることにした。

「…自己紹介、しとこうか」

「そっすね。俺は小野寺ユウスケ。仮面ライダークウガだ。お姉さんは?」

「私は雪代七海。仮面ライダーじゃないんだけど、あっちの彼、天原翔矢君の一時的なパートナーかな」

そもそも七海は仮面ライダーが異世界からこんなに渡ってくるものだという認識すらない。そもそも、そんなことになるわけもないのだ。基本的には。

「じゃあ、こっちのも紹介しとくか。あっちの鎧着てるのが門矢士(かどや つかさ)。仮面ライダーディケイド。世界の破壊者なんて呼ばれてるけど、実際はどうだかわからない。で、女の子が光夏海ちゃん。本当は俺達が世界を渡るには彼女のお祖父さんの写真館で移動するんだけど、何故かこの世界に来てすぐに写真館が消えちゃってさ。どうしていいかわからなかった頃だったんだ」

ユウスケは言った。

仮面ライダーディケイドは世界の破壊者と呼ばれていると。そして、七海はある可能性に行き着く。あれは、敵であるかもしれない。

「翔矢君、この村から出ようか。この人たちと一緒に」

























村の外。そこから更に離れたところで一同は移動を止めた。

「雪代。どういうつもりだ」

「ディケイドは世界の破壊者。そう呼ばれてるって聞いたの」

七海は士を睨んだ。その瞳は戦う者の瞳である。ただの女だと思っていた士は一瞬、呑まれかけるがすぐに気を取り直す。

「またそれか。いい加減にしてほしいくらいなんだがな」

「士君は破壊者なんかじゃ…」

「関係ないよ。取り敢えず、試させてもらうよ。クリスタライズ」

七海の聖痕から光が溢れ、その姿がクリスタルスノウのそれへと変化した。

「クリスタルスノウ、トップギア、インッ!!」

「そっちがその気なら、俺だってやってやるさ」

士は鎧を脱ぎ捨てると、ディケイドライバーを腰に当てるとベルトが展開される。左腰部に装着されたライドブッカーからライダーカード『ディケイド』を引き抜き、前方に見せ付けるように突き出す。

「変身」

カードを一瞬で裏返し、ディケイドライバーに装填、バックル両側のサイドハンドルを内側に押し、バックルが90度回転する。

《Kamenride DEDEDE DECADE!》

バーコード上に展開された分身が融合し、士の体と一体となり、黒とグレーの体になる。そして、頭部に6枚のカード状の物体が融合すると同時に顔や装甲がマゼンタカラーとなる。これが、仮面ライダーディケイドだった。

「成る程。確かに、ちょっと禍々しい気もするね」

「余計なお世話だ」

言いながら、ディケイドは攻撃を仕掛けることを躊躇した。

それはクリスタルスノウが一見するとただの生身の人間に見えるからだ。しかし、彼女はそんな躊躇を一瞬で見抜いた。

「来ないなら、行くよ」

底冷えのする声だった。彼女は何よりも、戦士なのだから。

一瞬でトップスピードに乗り、拳を躊躇無くディケイドの胸部に叩き込む。

「ぐぁっ!!」

激しく火花が散り、ディケイドが吹っ飛ばされた。

「そっちみたいに全身包むわけじゃないから、強そうに見えないかもしれない。でも、そんなことで迷ってたら死ぬよ。私が答えを出すまでは確りと生き残ってみせてよ」

言って、クリスタルスノウは両手のサークルジュエル同士をカツン、とぶつけた。そして、静かに腰を落とし、ファイティングポーズをとる。

「…どんな馬鹿力だ。だが、この程度で負けられるか」

言って、ディケイドはライドブッカーから一枚のライダーカードを取り出した。

ライダーカード『電王』

《Kamenride DEDEDE DEN−O》

その姿が一瞬で桃太郎の桃をイメージしたようなマスクに、赤い装甲の戦士へと変わる。仮面ライダー電王ソードフォームだった。

「力には力だ」

更に一枚のライダーカードを取り出す。

《Formride DEN−O AX!》

赤い装甲の戦士が金色の装甲を持つ戦士へと姿を変える。その顔には『金』の文字をイメージしたマスク――電仮面が装着されている。仮面ライダー電王アックスフォーム。金太郎をイメージとしたイマジン、キンタロスと契約したが故に発動可能な電王の姿だったが、全てのライダーになることが出来るディケイドだからこそ、契約も何も無しにカードだけで変身できるのだ。

「よく姿が変わるね。翔矢君だってそこまでの変化はないよ?」

「五月蝿い。いくぞ」

ディケイド電王はクリスタルスノウに向かって張り手を突き出した。その動作に既に油断はない。

「っ!」

それを地面を転がることで回避する。

「油断してくれてる間のほうが助かるんだけどね…まぁ、その気になってくれて助かるよ」

その分、こっちも躊躇しないで済むから。その言葉は声にして出されることは無く、ただディケイド電王を睨むのみだった。

「力だけでもないみたいだな」

「まぁね」

言いながら、クリスタルスノウは相手の能力と自分の能力とで明らかに相性が悪いことに気付いた。

(何にでもなれるってことは、どんな状況にも対応しちゃうんだよね。力技で誤魔化せないのがいたらどうしよう)

根本的にパワーファイターでしかないクリスタルスノウにとって、高い技量を以って攻めてくる相手は非常にやりづらい。今はディケイドが自分に合わせているからこそ問題はないのだが。

「…いいや。一気に押し切る」

クリスタルスノウは覚悟を決めると一気に駆け出した。基本的に拳打による打撃を中心とする彼女だが、実際のところは変身により上がった身体能力での蹴りも含めての格闘戦が主体である。その面ではライダーも同じなのだが、腕力に傾倒した電王アックスフォームは技などを力で押し切るタイプだ。

そこに付け入る隙がある。

一撃目は拳。それは当然のように防がれるが、そのタイミングで蹴りを放つ。

「ちっ」

ディケイド電王はそれで倒れることも無かったが、予想していない攻撃だったが故に苛立ちを隠せなかった。

しかし、それ以上にクリスタルスノウにとってもっと許せないことがある。拳打は主役ではなく蹴りを放つためのカモフラージュだったのだが、その蹴りを受けたというのにほぼダメージがないというのだ。

(サークルジュエルじゃなきゃダメージにならないってことだよね)

他の攻撃では無視されるだけだ。

(スーパーアーマーって、ゲームで使ってるときは嬉しいんだけど……実際に相手するのは勘弁してほしいよね)

はぁ、と周囲にばれないように溜息を吐いて、クリスタルスノウは両腕に意識を集中させる。

サークルジュエルに光が集まり出す。

「あんまり長い間ぶつかり合ってるとこっちの仕事にも影響が出そうだからね。悪いけど…やらせてもらうよ」

「それはこっちの台詞だ」

ディケイド電王の姿が通常のディケイドへと戻る。

そして一枚のライダーカードを取り出し、ディケイドライバーに挿入した。

《Finalatackride DEDEDE DECADE!》

「マキシマム…」

ディケイドの前方に10枚の金色のカードが展開される。

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ、そしてディケイドのエンブレムが描かれているカードだ。それらのカードはクリスタルスノウを標的としている。最後のディケイドのカードは彼女に固定されたまま、他のカードは天に向かって跳躍したディケイドに追従している。

「ディストラクション!!」

カードを突き破る形で必殺のディメンションキックを繰り出すディケイドに対し、クリスタルスノウは自身の最高の破壊力を誇るマキシマムディストラクションを放った。

光のエネルギーを宿した圧倒的なまでの破壊力を有する拳打と、全てを破壊するキック。ぶつかり合う力と力。

そして、最後に立っている者はいなかった。両者共に地面に倒れ伏していたのだ。

「……世話の焼ける女だ」

言いながら、翔矢はダメージにより変身解除された七海を抱き起こした。その一方でユウスケは同じく変身解除されている士を介抱していた。

「それで、どうだったんだ」

「まぁ…破壊者らしくはないってことだけはわかったかな」

「そうか」

それだけ言って、翔矢はもう何も言わなかった。初めからそう思っていただけに過ぎない。

その頃、ユウスケによって介抱された士は笑い転げていた。夏海が光家秘伝、笑いのつぼを突いたためだ。

「何も本当に戦うことないじゃないですか!しかも、いつもはあそこまでしませんよね」

「そう!思うんなら!先に止めろよッ!ックク…あっはっはっはっは!」

必死に抗議しながらも、笑いを止められない士を見て、七海は喧嘩を吹っかけたことを後悔していた。

そう、あんなにも馬鹿らしい光景を見せられては戦う気も失せるものだ。

「なんか…馬鹿みたい」

「馬鹿じゃないとでも思っていたのか」

翔矢のトドメの一言で怒り狂う七海がいた、とだけ記しておく。

























to be continued…





















the next episode



4.破滅の兆候

























後書き

セナ「デュエルセイヴァー、誰も出てない」

リリィ「名前すらね」

セナ「まぁ…最初からこういうポジションだって割り切ってるから」

リリィ「そう……因みに、こっちは今は何をしてるわけ?」

セナ「今頃必死に禁書庫を降りてる頃じゃない?」

リリィ「何で作者が疑問系?」

セナ「それよりも、今回は仮面ライダーディケイド勢が登場でしたが…どうでしょう?」

リリィ「何で敢えて金太郎をチョイスしたのよ」

セナ「力技で攻めるライダーの中でディケイドが変身できるのはクウガタイタンフォームと、電王アックスフォーム、キバドッガフォームだけですが、クウガはユウスケがいるので敢えて出す必要はないかな、と。で、武器を使わない肉弾戦をしてたのが電王アックスフォームぐらいだったんだよね。キバは兎に角ハンマーを振り回してるイメージがあって」

リリィ「いっそクロックアップでもしたら一発だったんじゃない?」

セナ「カブト?あれは駄目。反則。同じ理由でファイズアクセルも却下」

リリィ「でも、よくよく考えてみればブレイドはフォームチェンジできないの?ジャックとかあるじゃない」

セナ「あぁ…あれは無理。フォームチェンジって言うかバージョンアップだから。クウガがライジングになったり、アギトがバーニングになるのと一緒。大体の能力が全体的に底上げされてるのはフォームチェンジじゃないの」

リリィ「でも、…フォームってつくじゃない」

セナ「クウガのライジング、アギトバーニング、ブレイドジャック、響鬼紅、電王クライマックスは違って、バージョンアップらしいよ。因みに、当初のディケイドコンプリートで電王がライナーで出てきたときには驚いた。クライマックスじゃないんだって」

リリィ「……まぁ、また次回で」