ブロリーの関わる、歴史改変事件。
そこでついに存在が確認できた、一連の事件の黒幕。
その姿は、ラグナとそっくりだった。
しかも、ただそっくりだったというわけではない。
気を感じなかったその何者かは……超サイヤ人ゴッドと
思われる状態だったのだ。
善と悪の決戦 第九話
『深まる謎』
「はふはふ……ん〜美味し〜♪」
「ですです〜っ♪」
どうもトキトキ都の偉い女性陣というのは、まともな
会議をしたくないらしい。
ラグナ達がトキトキ都に帰ってきてすぐ、状況を整理しようと
話し合いをすることになったのだが、その前にお腹すいたと
駄々をこねる天然娘が一人。
それに便乗して時の界王神も名乗りを上げ、そして今現在、
いつもの四人で商業区に足を運んでいた。
それぞれに一つずつ、肉まんを頬張っている、無論ラグナと
トランクスは手を付けていなく、呆れはてている状態だが。
「お、お二人とも、よく食べますね」
「なにひきつった顔してるのよトランクス? 女の子にとってはね、
甘いものは別腹なんだから。ね〜?」
「ね〜ですっ♪」
果たして、肉まんは甘いものとカテゴライズしていいものなのだろうか。
そもそも、時の界王神の年齢は、数千万を軽く超えているはずなのだが、
それを女の子という名称でくくって詐欺にならないだろうか。
色々な疑問を感じつつ、溜息をついたトランクスは、女性陣に
話を通すのを諦めて、ラグナに問いかけた。
「あの、ラグナさんによく似た敵ですが、他に気付いた事はありませんか?」
「その前に一つ、説明してくれ」
なんでしょうか、というトランクスの言葉に、ずっと謎だった
単語を口にするラグナ。
「超サイヤ人ゴッドって、なんだ?」
「あれ、父さん達から聞いてなかったんですか?」
「ベジータがそういう説明をいちいちしてくれると思うか?」
「……それもそうですね」
さすがは息子、次元は違えど父の性格はきちんと把握しているらしい。
「ええっと、超サイヤ人ゴッドというのはですね、サイヤ人の中から
一時的に生み出される、神の事を言います」
「それでゴッドか……普通の超サイヤ人とは違うのか?」
「ええ、オレも直接会ったわけじゃないのですが、ゴッドの気は
表面には現れないそうです。だから、いくら気を感じ取ろうとしても
オレ達じゃわからなかったんです」
「ああ……なるほどな。でも、オレは感じたぞ?」
「そうなんですよね。それに、もしあのラグナさんに似た何者かが
本当に超サイヤ人ゴッドだとしたら、説明がつかない部分がかなり出るんです」
どういう事だ、と問いかけながら肉まんを一口。
トランクスはまだ口をつけずに、肉まんに視線を落としながらポツポツと語りだす。
「まず、ゴッドになるには正しい心を持ったサイヤ人が、合計六人必要です。
なのに、そのゴッドが歴史を改変して、悪事を働くのは明らかに辻褄があいません」
「ほぉ……確かに、善人しかなれないゴッドに悪人がなってるのはおかしいな」
「続いて、超サイヤ人ゴッドは、時間制限があります。あんなに長時間
変身し続けられるわけがないのですが……」
「普通の超サイヤ人だって、なり続けるのはそれなりに大変だしな」
「そして何より、気を感じないはずのゴッドの気を、ラグナさんが感じていますし」
「……謎だらけだな」
トランクスの言葉に、そう結論づけるしかない。
今の説明によると、あんな超サイヤ人ゴッドなど存在するわけがないらしいのだ。
だとしたら、あれはゴッドのような別の何かかもしれない。
だが、そう考えると気を感じられない説明もつきにくい。
と、そこまで考えてラグナに思いつく事があった。
「なあ、気って確か、コントロールすることでゼロにおさえる事ができたよな?」
「え……ああっ! うっかりしてました!」
そう、気をコントロールすれば、気配を完全に殺す事ができる。
そうすれば、今回のように気付かれずに観察する事だって可能なはずだ。
だが、
「それは無いわね」
横から入った声に振り向くと、口元に肉まんの欠片をつけたまま
すました顔をしている時の界王神の姿が、威厳ってなんだろう。
「ただ気を隠してるだけなら、魔人ブウだって見つけられたのに、
わたしが見つけられないはずがないわ。あと逆に、本当にあれがゴッドだとしたら、
同じ神であるわたしが気付けないはずもないのよ」
「ええっと……それってつまり?」
トランクスの問いかけに、界王神はすっと目を開くと。
「あれは、超サイヤ人ゴッドに近い、別の何かよ。ゴッドだったら
わたしが気付くし、ゴッドじゃなかったら、トランクス達でも気付くから」
「ゴッドじゃない……何か、か」
もう一口肉まんを頬張りながら、一人考え込むラグナ。
気になる点は、もう一つあったのだ。
あの自分に似た何者かの気を、ラグナしか感じる事ができなかった。
そして、その何者かは自分とそっくりな姿をしていた。
果たして、この二つは偶然の産物なのだろうか。
違うはずである。
何か、この関連性には意味があると、ラグナはふんでいる。
そんな事を考えていたら、ふとラグナの中に一つの疑問が生まれる。
「なあ、トランクス」
「はい?」
「オレって、神龍に呼ばれて、この時代、トキトキ都にやってきたんだよな?」
「ええ、オレが呼びました」
「それって、どういう願いで呼んだんだ?」
そういえば、根本的な話をしていなかったのだ。
どうして今回の事件で、神龍を使ってまでラグナが呼ばれたのか。
もしかしたら、そこに何か知らのヒントがあるかもしれないと思ったのだが。
「オレは、神龍に『この事件を解決できる、強い人を連れてきてほしい』と願ったのですが」
「……この事件を解決できる、か」
つまり、今回の事件と自分は、もしかしたら何らかのつながりがあるのかもしれない。
だとしたらやはり、ラグナとあの何者かには繋がりがあるのかもしれない。
じゃあ、それはなんだろうと思うと。
「あ〜ダメだ、サッパリわからん!」
戦う事は得意でも、頭を使うのは全然なラグナだった。
「まあ、ヤツは次にも同じような事件を起こすはずですから、その時こそ逃がさず、
どうにか解決させてしまいましょう」
「ったく、いいよな〜トランクスは、ただ刻倉庫で見てるだけなんだから」
「だ、だってしょうがないじゃないですか、そういう役回りなんですから」
「へいへい……って、あれ?」
そういえば、いつもだったらどこかしらでちょっかいをかけてくる
アルファが静かである。
肉まんにかぶりついているにしても、そろそろ食べ終わって次をおねだりしてきても
良い頃合いなのにと、ラグナが後ろを振り返ると。
「ここはもうすぐ、喫茶店さんができますですよ〜」
「へぇ、トキトキ都も本当に下界と同じようになってきてるのね。ね、悟飯くん、
ここができたら、また来てみましょ」
「いいですねビーデルさん。でも、ボク達あんまりここに介入するのは
良くないと思うんですけど」
「別に悪さしてるわけじゃないからいいじゃない。ね、アルファ?」
「ですですっ。私は大歓迎さんですよ〜♪」
また来ていた、あの伝説の子供達が。
「ん? あら、ビーデル達じゃない」
次に気付いた時の界王神が、トコトコと引き返して悟飯たちの前へとやってくる。
ヤバイ、またビーデルとケンカが始まるのか、と身構えるラグナだったが。
「ええ、最近のトキトキ都はすっごく新鮮なんだもの。いっつもサタンシティばっかりじゃ
飽きてきちゃって」
「うんうん、下界の街も大きいけど、やっぱり選りすぐりの施設が並ぶ
ここトキトキ都の方が、絶対に楽しめるって。あ、この喫茶店のオススメメニューだけど、
確か……ええっと、なんだったかしら?」
「イチゴサンデーさんですよ〜」
「ああそうそう、ありがとアルファ。そのイチゴサンデーっていうパフェが美味しいらしいのよ。
チェーン店、っていうの? そういうのでここで営業してもらうのよ」
「へぇ、とっても美味しそう♪ 悟飯くん、絶対にきましょうね」
「あはは……はい」
あれ、と肩透かしをくらうラグナだった。
そんなラグナを見越してか、トランクスが背後でポツリ。
「女性って、良くわからない生き物ですよね」
「……だな」
目の前の光景を目の当たりにしてしまったら、そう返事をするしかないラグナだった。
「じゃあ、わたしと悟飯くんは向こう見て回りたいから、これで」
「またです、アルファさん、時の界王神様」
「ええまた、悟飯くん、例の話よろしくね」
「ばいばいです〜♪」
と、談笑していた四人から、悟飯とビーデルが離れていく。
別に手を繋いでたりとか腕を組んだりとかをしているわけではないのだが、
傍目に見ても、これはカップルだなとわかる、不思議なオーラを放っていた。
「はぁ……羨ましいですねぇ〜」
「ふぅん、アルファも恋とかに憧れるんだ」
「ですです……あ、そうですっ!」
バッと、凄い勢いで振り返るアルファ。
その視線の先にいたのは、当然のように青年ラグナ。
「え?」
ドンッ!
比喩ではない、大砲のような突撃力。
そのままラグナの真横に瞬時に移動すると、右腕にがっちりと両手をからめて。
「ラグナさ〜ん♪ デートさんしましょうです〜♪」
お約束だった。
ちなみにアルファは、恋に恋するお年頃なので、本当に特別ラグナが
好きというわけではないのを伝えておきたい。
「はぁ!? ちょ、おいこら離せって恥ずかしい……って力強っ!?」
「あっちのお店、見てみたいです〜♪」
背格好も違う男性を、ズルズルと引きずる少女の図。
非常に滑稽というかホラーなのだが、特に不思議でもなんでもなかった。
何しろ接近戦、パワーにもの言わせた戦いが得意なアルファの方が、
ぶっちゃけ腕力はあるのだから。
「あ、あ〜れぇ〜……」
なんてキャラじゃない声をあげながら、商業区の奥へと消えていくラグナ。
それを見送ったトランクスは、驚愕のポーズのまま固まるしかなかった。
「あ〜ぁ、なんかわたしとトランクスだけ、疎外感だね」
横に並んできた時の界王神に気付いて、コホンと一つ咳払い。
「ま、まあいいんじゃないでしょうか。アルファさんも、いい相手が
できたということで」
「そんなつもり、本人はまるでないだろうけどね……というわけでっ」
ガシッ
直後、トランクスの腕に女の子の感触が。
「いいっ!?」
「ビーデルやアルファちゃんばっかりずるいから、わたし達もデートしましょ♪」
「ちょ、ちょっと界王神様!?」
「あのね、あっちに自動販売機? っていうのがあってね、そこに
どろりとした濃厚なジュースが売ってるらしいのよ。なんか面白そうだから、
二人で飲みましょ」
「い、いやあの! ま、待ってくださいって、ちょっと〜!?」
背格好も違う男性を、ズルズルと引きずる少女の図、その二つ。
こうして、三組のカップルが商業区を歩き回るのだった。
その日の終わり、商業区での噂話の一つに、こんなものがあった。
「あのアルファとデートしてるやつがいたってよ!」
「マジかよっ!? くっそ、あの可愛い天然娘狙ってたのに! 相手は誰だよ?」
「ラグナらしいぜ。ちょっとアルファと同じ仕事してるからって……ちくしょぉ!」
「オレが……オレがもっと強かったら、きっとアルファたんは……うおおぉぉ〜!」
更に、噂話がもう一つ。
「ねえ、トランクスがデートしてたって噂よ」
「うそっ!? あたし狙ってたのに……で、相手は誰? やっぱりアルファさん?」
「いいえ、なんと時の界王神様らしいわよ。間違いないって」
「ええっ!? 界王神様って言ったら、見た目子供じゃん。トランクスって、まさかロリコン!?」
「ショックー! トランクス様が、まさかそういう性癖だったなんてぇ〜」
「ふふっ……ボクにはまだ、チャンスはありそうだよ……じゅるり」
というわけで、本日は平和なトキトキ都だった。
〜あとがき〜
どうもです鷹山孝洋です。
さて、今回の話の本筋は……なんだったんでしょうね。
執筆している私も、よくわかりません。
黒幕である敵の推測ですが、決定的なものは出てきませんでした。
このあたりは、今度こそ終盤で明らかになると思いますので、
それまでのんびり待っていてもらえると嬉しいです。
いい加減、私もあの人を早く執筆したいですしね。
で、そんな真面目な話の後に語られる、男達の受難。
ラグナくんはともかく、トランクスくんには妙なレッテルが
はられてしまうのでした……ごめん、わざとです。
それでは〜っ。