「「本当ですかーーー?」」
「ありえねぇーーーー?」
診療室から帰ってきた3人に、同じように自己紹介すると
またもこんな反応が返ってきた。三枝さんには一応「凪龍平」の情報が送られてるはずなのだが。
「……いいですよいいですよ。どうせどうせ……」
床にのの字を書いていじける龍平。この様子だとトラウマになるかも知れない……
D
第四話 後半
龍平がひとまず凹みから帰還してきたので、自己紹介再開。
今度は北川兄妹の番である。
「私は1回生です。えっと、所属は『医療』に入ろうと思ってます。」
「ってことはランクはなし?」
「いえ。ランク取得だけはしてますよ。と言っても、『魔道医療:C-』ですけど。」
「いやいや。普通持ってないからね、学園入学当初は」
「私も〜持ってましたよ〜入学当初〜Bでしたよ〜」
「……」
「「気にするな」」(←北川・西塔)
「ああ。十分理解した」
ランクは学園に入学してなくても、取得可能なのは当然のこと。そうでなければ、公平にランク付けする
ことが出来なくなってしまう。また、一般社会に対して無益なものになる。
ランクは『ランク検定所』という、あまりにも捻りの無い名前の所で検定する。
(まぁ、捻った名前でも意味がないと思うのだけど……
そこで、それぞれのランクにあったテスト、実技や筆記を試されるのである。
大都市には大抵設置されている。
ちなみに、「医者」として本格的に活動できるのは、ランク『B+』以上。
のほほん幼女(桐子)の異常性を解ってほしい。
北川卯月。1回生医療科所属希望。入学決定したてなので、所属はどうなるかわからないが。
ランクは『魔道医療:C-』。このランクの保持者は他に比べかなり少なかったりする。
兄と同じ金髪にアホ毛が2本触覚のように飛び出ている。これは遺伝なのであろうか?
身長150程度のかなりの美少女。兄に対しては随分と手厳しいようだ。
「あれ? 何時からこの寮に住んでいるんだ?」
「えーと、兄がこちらに移り住む時に一緒に、です。
一緒に居た方が何かといいので。兄の奇行を寸前でとめるとか」
「あー成る程」
「納得するなよ……」
妹に貶されて、それでも真実を言われているのか、返す言葉も無く
項垂れる北川。名誉挽回とばかりに自己紹介を始めようとする。
「で……俺は」
「いや。お前の説明はいらんぞ。」
「な、なぜーーー!?」
「なんとなく」
「な……」
「じゃぁ、今日はこれで解散と」
「ジコショウカイサセテクダサイ」
「よかろう。」
(((((この展開は何?)))))
北川、土下座にて自己紹介を許される。なんでこんなに龍平がえらそうなのかは不明。
しかし、なんとなく上下関係が見えたような気がする。
「なんで俺が許可取らなきゃいけないんだ……? ま、いいか。俺は北川潤。3回生で『兵』所属。
ランクは『武:A』だな。この二人には一度も負けたこと無いぞ。」
「ちっ、余計なことを」「……無念」
「まぁ、お前がこの中で一番強いのは判ってたけどな」
「「「「え?」」」」「ほへ?」
「ふ……やはり隠していても王者の貫禄は」
「いや、そのツノ」
「「「「「えっ?」」」」」「ほへ〜?」
「ほら、それ頭の上にある奴。ブレードアンテナだろ? それって指揮官にしか付けられんからな」
「……それだけ?」
「それだけ」
「ふざけんな!!!」
ぶん!!!
「「「「「「あ」」」」」」
ばきょ めきょ どさ
決まってしまった、北川に。
北川が出してきた右ストレートに対して、龍平が反射的に出した左熊手が北川顔面に炸裂。
3度目にしてしっかりと標的を仕留めた熊手。まともに決まったその威力は
北川の顔を破裂……させたわけでなく、北川を壁にまで吹き飛ばした。
「「「「「「……」」」」」」
結局、このまま解散となった。
しっかりと北川は引きづられて行ったので、あしからず。
以上、昨夜の出来事。
桐子のボクシングセンスを目の当たりにして興奮を覚えつつ、
食堂に行くと、三枝さんが料理を作っていた。まだ授業開始ではないのでゆっくりとした朝なのだろう、
鼻歌を歌いながら楽しそうに調理していた。なんともまぁ可愛らしい風景であった。
……鼻歌が「♪じ〜んせい楽ありゃ」に聞こえるのは気のせいかもしれない。
「おはようございます、三枝さん。早いですね、休日なのに」
「あ、お早うございます、凪さん。いつもの癖でして。それにそんなに早いってわけではないでしょ?」
「それもそうですね。なんか手伝います?」
「いえいえ。大丈夫です。席に着いていて下さい。直に出来ますから♪」
と言い残して台所に戻っていく。何もすることないのなら今日やりたいことを考えておこう、と思考に耽る龍平。
数分後。朝食を持って三枝さんが再登場。有難く頂くことにした。
食べている途中に一人、また一人と寮生が食堂にやってくる。
結局、龍平が食べ終わる頃に、北川兄妹を除いた全員が食堂に集合したことになる。
「龍平さん。今日は何かご予定があるんですか?」
「あ、はい。今日中に学園の位置の確認と、訪ねなきゃいけない所がありまして」
「そうですか。学園の位置はわかりますか?」
「ええ。貰ってる地図がありますから。ただ、訪ねるところってのがどこにあるか分からなくて……」
「その訪ねる所っていうのは?」
「水瀬秋子さんって人なんですけど、知ってます?」
ぶっ!!!
聞き耳を立てていた寮生が一斉に口から吐き出す。かなりシュールで嫌な光景。
聞いてきた三枝さんも目を丸くしている。
「あれ? 俺何かおかしなこと言いましたか?」
「いえ、その、あの、その、水瀬秋子さんは雪羽の統治をされている方ですから……」
「へ〜統治ですか……――――――――って、えーーーーーーーーー!?」
「あいつ、知らないで言ってたのか」「……ここにも阿呆がいたか」「龍ちゃん、あほですね〜」
「そこの外野!うっさいぞ!!というか、『龍ちゃん』ってなんだ!」
「呼び名ですよ〜龍平だから龍ちゃんです〜もう変更期間は過ぎましたよ〜」
「く……知らない内にクーリングオフが終わっていたのか……」
「元気出してくださいね」
三枝さんの励ましになってない励ましで余計に凹む龍平。この後、「一緒に行けなくてすみません」と
いう言葉と共に、三枝さんは水瀬家の場所を教えてくれる。龍平のなかで好感度3が上がった。
荷物がほとんどない部屋に戻って、持ってきた大袋の中から封筒を2通取り出し、羽織った黒いコートの
内ポケットに入れる。2通の内一通は昨日開いた封筒であった。
既に3月も終わると言うのに積もっている雪を踏み鳴らしながら
学園へと歩を進める。地図を見る限り、『下弦』は『学園』からかなり遠いことに気が付く。
ざっと計算して、徒歩30分程度かかると認識。
地図で確かめた道をちんたらちんたら歩いていると、後ろからどてててててという音が迫ってくる。
「龍ちゃん〜、待ってくださいよ〜」
「やっぱり、桐子か……」
「はわわ。気付かれましたか〜」
「誰でも気付くわ、ぼけ。……てお前さん、本当にいつも白衣着てんのな」
「そうですよ〜正装と言えなくも無いですから〜」
というようなたわいも無い話をしつつ、学園へ向かう。
「ところで、制服ってあるのか?」
「あることはありますけど〜着ていく必要はないですね〜女の子は大体着てますけど〜」
「なんで?」
「それはですね〜見てからのお楽しみですね〜明日のうさつさせてあげましょ〜」
「ま〜期待しないで待ってるよ。悩殺出来たら何でも奢ってやろう」
「その言葉〜後悔しないでくださいね〜」
To be continued...