〜穏 Side〜

我が家を訪問なさった後、教経様は山越族の集落へ行幸なさいました。

異民族であり、これまで揚州の豪族達と対立してきた自分達に、まさかそのような誉れが与えられるとは思っていなかったらしく、恐縮すること頻りであったそうです。行幸なされる直前に連絡を入れたこともあり、本当に質素な歓待になったようですが、真心の籠もった持て成しであったようで、教経様は本当に喜んで居られました。これで楔を打ち込むことが出来た、と仰っていました。これから徐々に取り込んでいくお積もりなのでしょう。私としても山越族を内偵してきた甲斐があったというものです。

今日は教経様の側近としてすっかり地歩を固めた感のある司馬懿さんが考案したいくつかの制度について、私の意見を聞きたいと教経様に居室に招かれて居ます。

司馬懿さんが提案しているのは二つ。

一つ目。
軍の編成上、都督の地位を創設すること。そしてその権限として、ある程度の行政に関する自由裁量を与えること。この先戦で勝利して獲得した土地で急を要する政治的判断が求められた際、何も出来ぬでは役に立たない。与えられる権限が大きい為、信頼が置け、かつ有能な人間でなければならないでしょうけどね〜。

「教経様はどうお考えですかぁ〜?」
「そうだな……創設しても良い。良いが、都督は常設の地位にはせず、その時々で平家の頭領がその要不要を鑑みて任命することにしようか」
「何故でしょうか〜?」
「常設するにしてはその権限は大きい。どういう表現になるかは分からないが、事細かにその権能について記載した書類を後世まで引き継ぐ訳ではあるまい?俺や司馬懿から直接話を聞いて権能を理解している人間が居る内は良いが、そうでなくなった時それは遺された文章を如何に解釈するかで変わって来やがる。都合良く読み取り、より強大な権限を求めて画策するような奴が出てくるだろう」

少しゲンナリとした雰囲気でそう口にする。

「だから常設にはせず、必要に応じて頭領がこれを任ずることにする。要に応じて任ずるなら、その権能は必然的に要を満たすだけのものが与えられ、それ以上のものは与えられないはずだからな」
「その通りですね〜。それで、何故そのようなお顔をなさっておられるのですか?」
「……後世の事まで考えてやるのは少し過保護な気もするが、そうしておかなければならない程凡庸な人間が間違って君主になっても、余程の過ちを犯さない限り国が成り立っていくように配慮しておかなければならないだろう。
本当はだ、後のことは後の人間でやってくれればそれで良いンだよ。平家の頭領として器量が不足していれば滅びるだけだ。それを子孫が選ぶならそれもまた良し。後々の平家の頭領の器量まで俺が保証してやれるはずもなし、その時々でその時代に生きている人間が最適だと思う選択をしてくれればそれで良い。俺は基本的にはそう思ってるンだ。
だがそう簡単に突き放す事を、今の俺の立場が許してくれない。『国が滅びる』ということは、多くの民が側杖を喰って死んでいくことを意味している。それを『後世の奴らの責任だ』という一言で済ます訳には行かないだろう。出来るだけ滅びを先送ることが出来るような仕組みを遺してやることが俺にしてやれることだ。
そう思って居てもだ、後世の奴らの為に何くれと無く備えてやるってのはやっぱり気に食わないンだよ。備えてやること自体が気に入らないというよりは、やりたくないことをやらないという選択が許されない立場になっちまったって事が嫌なンだよ」
「結局やることになるのでしたら、良い方に良い方に考えた方が建設的だと思いますよ〜?」
「……分かってるよ」

そう苦笑して会話を続ける。

「で、穏はどう思う?」
「臨時のものとする、というのは良い案だと思います。信任に値する人間が居り、かつその必要がある時にのみ与えられる地位であることを知らしめれば、後々問題になることもないでしょうし」
「そう思うか?」
「はい。それよりも、もう一つの案が気になりますね〜♪」

司馬懿さんが提案している二つ目の案。それは人材の登用法についての案です。

これは画期的な案です。漢王朝の下で行われてきた郷挙里選制では、地方の有力者が中央へ官僚を推挙していました。それに因って地方の有力者が中央政府への影響力を増し、そのことで更に地方での地盤を強固なものとする。そういった弊害が出て来ていたのです。

それに対し、提示されている案では各郡に中正官という役職を新設して中央から派遣し、郡内の優秀な人材をその能に応じて一品から九品に分けて評価し、これを推挙させるというやり方を採ろうというものでした。人品ではなく先ず能力によって評価させる。能力至上主義とも言える人材登用方針であり、またこれによって地方豪族の力を削いでいこうというものです。

これを考え出した司馬懿さんは、本当に優秀な人ですね〜。問題もあるとは思いますが、利点と欠点とを差し引きすれば、現時点では利点の方が勝っているでしょう。

「……九品中正法、か」

『九品中正法』とはまた上手い名付けです。が、どうやら教経様はこの案の問題点に気付いていらっしゃるようです。

「どうかなさいましたか?」
「その制度だと中正官の権限が強すぎる。中正官に近い者や賄賂などを用いて近付ける者が有利になってしまう。信頼出来る人間が揃っている今は良い。だが将来、それもそう遠くない内に、そういった不公平が目立つようになるだろう。それが分かっていて放っておく訳には行かないな」

そう淡々と指摘する。

「……教経様には何か対案があるのですかぁ?」
「『対案無くして反論無し』、だろ。考えはあるにはある」

何か、面白いことを言いそうな。
そんな予感がします。

「『科挙』を導入しようと思う」
「科挙?」
「そうだ。全国で官吏となる為の試験を行い、その結果に応じて就ける官途を分ける。無論科挙の結果だけでその後の出世まで決めつける訳にはいかないが、官途に就く際に一旦は色分けしてしまおうという訳だ」
「試験、ですか?しかし……」
「当然今すぐという訳には行かないだろう。試験を行うにしても、それを理解出来るだけの学がある人間は少ないだろうからな。天下を定めてからの話になるが、その手の事が学べる私塾を支援したり、国が学舎を作っても良い。学ぶことが出来る場所を提供してやるつもりだ。兎に角、貴族や豪族だけではなく全ての人間に官途への門を開いてやる。10年後を目処に科挙を導入してこの国の全ての才能を吸い上げることが出来る態勢を整えたい。
それまでは九品中正法で良いだろう。有能かつ不正を憎む類の人間は、今この創業の時であればこそ数多くいるからな。10年同じ場所に留まることもさせないから、余程のことがない限り腐ることもないだろう。違う人間が見ることで、また違った類の人間が推挙されてくるであろうし、中正官についてはその辺りを考慮した人選にすべきだろう。様々な色を持った、様々な出自の人間を中正官とするつもりだ」

科挙。全国で試験を行い、優秀な人間を選抜しようという試み。出自に拘わらず、全ての人間に開かれた官途への門。この中華には数多の人間が存在する一方国家の官吏の数が限られている以上、それは狭き門になるでしょう。

ですが。
その狭き門を突破さえ出来れば。

それさえ出来れば、どんな人間でもどんな出自でも、官途へ就く事が叶うのです。才と能とを持ってこの国に生を受けた者達を余すところ無く吸い上げようというその企画に驚かされます。

「それも素晴らしい案ですね〜。国中の才有る者を登用してしまおうという意欲が見えます。が、問題もまたあると思いますよ〜?」
「何処に問題が在る?」
「学問をすることで知恵を付けた民達が、勝手気ままに振る舞ったり、平気で上を犯すようなことをするのではないでしょうか〜?
知識は人を成長させます。得た知識を以て様々に思いを巡らせた結果、国の失策を論うようになるでしょう。それが国家の体制を揺るがさない限りは問題有りませんが、揺るがすようになってしまう可能性があります。民が知識を付けることの益は国家にはさほど無く、むしろ弊害の方が大きいと思いますが、その辺りをどうお考えですか?」
「失策が確かに在ったのであれば、論われても致し方有るまい?失策続きの場合に国家転覆を謀るのもまた仕方ないと言えば仕方ないだろう。例えそれを謀ったとしても、多数の人間がそれに同調しなければなんの問題も無い。もしそれに同調する人間が多数居たとしても、それを押さえ込むことが叶うだけの人間が付き従ってくれていれば問題無い筈だ。国が滅ぶというなら、それはその時代に生きる人々の内の過半数を超える人間に愛想を尽かされているか、同じく過半数を超える人間が新しい理想を掲げている誰かの方がより魅力的であると考えているからだ。
国も家も、滅ぶには理由がある。それを棚上げにして、知識を与えることの危険性だけ取り上げるのは不公平だと思うぜ?犬や豚を飼うのであれば知識を与える必要は無いが、俺たちは国家という形態を採って社会共同体の最大利益を希求しようという訳だ。最大利益の中には当然『人としての幸福』も含まれる。
なぁ穏。人の幸福ってのは何処にあると思う?俺はな、自分の分限を精一杯に使い切って生きていけることにこそ幸福があると思ってる。自己実現が出来ないこと程不幸なことはない。知識がなければ知恵は付かない。知恵のない人間に自己実現は叶わない。知恵が付き自分の器量が大きいと分かっても、それを振るう場所が社会の中で提供されなければ幸福とは言えない。
今の社会では生来の器量を育てることも、また僥倖により育ったとしても出自の低さからそれを振るうことが出来ない人間が多数居る。それは不幸だろう。その不幸が溢れているから漢王朝は滅ばざるを得なくなったのさ。だからそれを変えてやるのが、新しい秩序をもたらそうという俺たちの役目になるだろう。知識を付け知恵を得る機会を呉れて遣り、己の生まれを己の努力によって越えることが出来る、その一つの手段を国家が提供してやろうってンだよ。
それを提供してやっているにも関わらず、努力もせずに恵まれていない等と言うことは許さない。これがあることで、唯の不平屋が不当に高い評価を得ることが無くなるだろう。門が開かれているにも拘わらず努力をせずに不平を鳴らす人間に付き従いたいとは思うまい?ちょっとした騒動が起きても、体制側としては、奴らは努力をしていないという事が出来る。まぁ、そういった形で統治に利用することだって出来るのさ。制度ってのは所詮道具だ。使い様なんだよ」
「成る程〜」

教経様は科挙を導入することによって国中の才能を集めようとしている、とそう思って居たのですが。その話しぶりからすると、教経様の中では才能を集めるというのは副次的な目的であるのでしょう。主目的は、生まれを、つまり身分を、越えることが出来る手段を民達に与えてやること。

利害だけを考えれば、民衆に知識を与えることは望ましくはありません。今のままで特に問題がないのですから、現状維持で構わないはずです。にも関わらず、生まれに拠らず自己実現出来るように、教経様が言うところの『人の幸福』を能動的に追求出来るような社会を作ろうというのです。知恵の付いた民から、厳しい視線に晒されることになるのを分かった上で。

蓮華様や思春ちゃん、亞莎ちゃんが夢中になるのも何となく分かる気がしますね〜。
それにつけても、教経様の話は私の知的好奇心をもの凄く刺激してくれます。それはもう、居ても立ってもいられなくなってしまいそうな程に。















〜教経 Side〜

穏を相手に司馬懿からの提案について話し合い、今後の基本方針らしきものを出すことが出来たと思う。穏の反応からすると、基本的にこの線で話を進めていけばさほど反発は無さそうだ。蓮華や亞莎だと、俺に対するひいき目も有るだろうし、そもそも俺が言うことを否定的に捉える事が出来るかどうかが疑問だったからな。

「教経様」
「なンだ?」
「官制について、実は腹案があったりするのではありませんかぁ〜?」
「ふむ。それもあるにはある」

穏を見やると、期待に胸を膨らませているような顔をしている。膨らませるまでもなく元からデカいのは承知している。これは言葉の綾というものだ。

「……聞きたいのか?」
「是非に」

是非に、とせがまれて話さない訳にも行かない。現時点で俺が考えている官制について、説明をした。

俺が考えて居る官制は、三省六部。唐代の官制を先取りしようという訳だ。科挙の導入もこれを為すに必要となる官吏を創り出すのに必要なのだ。優秀な頭脳を選抜するというよりは、平均よりやや出来る程度の人間を必要とするだけ集めて有機的に組織する事の方が重要なのだ。無論、優秀な頭脳を選抜することも目的ではあるのだが。

突出した才能に依存する組織は脆い。優秀な人間が居る内は良いが、それが居なくなった時に政が停滞するようでは困る。理想は、明の官僚達だ。彼らは皇帝が極度の引き篭もりで全く政に関わらなかったとしても、国家の運営を問題なくやって見せた。そんな行政機構を作り上げたい。

三省六部を導入することで、問題が出てくるであろう事も分かっている。俺は、官吏の仕事を明確に限定してやり、範囲外の仕事はさせないつもりだ。例え二つ三つ、いや全ての面で秀でた才を有する人材が居たとしても、その仕事は担当部を越えて行わせない。明確に、きっちりと仕事を各省各部で分けるつもりなのだ。だがそのことで、いずれ縄張り意識が生まれるに違いない。その縄張り意識によって、円滑な連携が出来なくなることもあるだろう。

しかし、その弊害よりもこれによってもたらされる利点の方が大きいと思っている。
大きな利点。三省六部に分けることで、権力の掌握が難しくなる事。

突出した才能が輩出され続け、かつその才能の持ち主が国家に対する忠誠を持って居る者ばかりであれば問題無いが、そんな都合の良い話があるはずがない。もし才能さえあれば全ての権力を掌握出来るような組織構造になっていれば、悪意のある個人や権力掌握後に変貌した暴君によって社会構造が破壊される可能性が有る。であれば、才さえあれば権力を集中して掌握出来るという組織にして置いては駄目だ。才があろうと器量があろうと、権力を中々に集中させることが出来ない組織としておくべきだろう。

互いを牽制する形を、如何に弊害にならぬように考えておくか。それもまた重要なことだが、残念ながら俺の頭じゃ良い案をひねり出せそうにはない。だからその辺りは、皆に任せることになる。良い案を考えて貰いたいものだ。穏も、よく考えてみて欲しい。

そんな事を話していた。自分でも思うが珍しく真面目に話をしていた。そう、真面目な話だったんだ。
そのはずだったんだが。

「はぁ〜ん♪教経様〜♪」

……なんだ、このべったりくっついてくるデカい乳は。

「穏、どうしたン」
「ん〜、チュッ♪」
「だ……って……」
「はい、服を脱ぎましょうね〜」
「おいおいおいおい」
「どうしたんですか〜?」
「それはこっちの台詞だ!なんで盛ってンだよ!」
「教経様が悪いんですよ〜。知的な話をされると興奮することを知っていて、あんな話をするんですからぁ〜」

そう言いながら、穏がグイグイと躰を寄せてくる。確かに冥琳からそう聞いてはいたが、それは兵法書などを読むとそうなるという形でしか聞いていないんですが。俺の当惑など何処吹く風で、眼鏡を掛けた魔乳がグイグイと迫って来ている。

―――俺のこの手が光って唸っている。
―――魔乳を掴めと轟き叫んでいる。

「ばぁくれつ!ゴッド!フィンガ−!」
「やぁ〜だぁ〜♪」

おお、素晴らしい柔らかさ。
じゃなくて。

「穏、ちょっと待て」
「待てません♪」
「じゃぁ、ちょっと話を聞け」
「……何ですかぁ?」
「雪蓮に俺との子供を為せ、と言われたからこんな事を」
「している訳ではありませんからね〜?ちゃんと教経様の為人を踏まえた上で、こうしたいと思ったからしているんです。私の知的好奇心を、教経様なら満たしてくれる。こういう私でも、教経様なら受け入れてくれるかも知れない。そう思うからこそ、です」
「う」

真面目な顔をしてそう言い放つ穏に、返す言葉が見あたらず言葉に詰まる。

「……という訳で♪」

真面目な雰囲気から一転、少々淫蕩な顔付きをして、さわさわさわさわと内ももの辺りからあの周辺にタッチしてくる。ニッ○ツロマンポルノかよ。敢えて右から読ませて貰うが『国天んらんい師軍』とかいうタイトルになりそうだなおい。

「い、いや、ちょっと待て。流石にこうなし崩しな感じで致すのはどうかと思う」
「ではどのような感じで致すのですか?」
「致すのは確定なのか」
「この状況で放っておかれる私の身になって下さいね〜。それとも、お嫌ですか?」

嫌ってことはない。
穏は眼鏡を掛けている。これだけで大体のことはクリア出来る。

だが。だがしかし!これだと乳の誘惑に負けたって感じになるじゃないか!眼鏡ではなく、今もこの右手に感じる魔乳の誘惑に負けたとあっては、眼鏡神様に申し訳が立たん。

それにしても、この魔乳のさわり心地は凄いね。

「教経様も嫌ではないということで良いんですよね〜?」

鼻の頭に眼鏡を掛けて、上目遣いでこちらを見上げてくる。

……良いねぇ。俺は眼鏡属性持ちなんだよねぇ。そして、麦茶が好きなんだよねぇ。この世界の眼鏡は全部俺のだ!麦茶は飲む為にあるのだ!掛けない眼鏡や飲まない麦茶などに価値はない!なんだかよく分からんが、兎に角もう辛抱堪らんッ!

「嫌いどころかむしろ大好物だぁッ!」
「やぁ〜ん♪」

俺が飛びかかっているような、そんな遣り取りに見えるだろう?押し倒されているんだぜ、これ……





サウザーのように引かず・媚びず・顧みなかった結果、俺の謚が性帝になるであろう未来が予測出来るようになった。俺の死に様はきっと腹上死になるだろう。俺の嫁さん多すぎるんじゃないのか?今更の話ではあるが。

穏との相性は、これまた良かった。眼鏡に萌えたのもそうだし、穏はドが付く程のMかもしれない。破瓜の血を流しながら、痛いけど気持ち良いとか何とか言っていたからねぇ。痛いからの間違いじゃないのかと問い詰めると、『痛いのが気持ち良いですぅ』と返してきたし、言葉攻めにも弱そうだ。

「教経様ぁ〜」
「……もう何も出んぞ、俺ぁ。搾り取れるだけ搾って行きやがってからに……」
「身繕いをしようと思ったら立てないんですよ〜」
「俺も腰が痛い」
「身繕いはこのままするにしても、家に帰れないですよ〜」

……俺の発言はなかったことになっているのね……

「だから、だっこ〜♪」
「へ?」

這い寄ってきてそのまま俺に縋り付いてくる。凄いまとわりつき方だな、穏。

「抱っこして外歩く訳には行かないだろ?」
「でも立てない〜」
「はぁ……ンじゃ泊まっていけば良い」

言った瞬間、穏の眼鏡が光った気がする。こう、キラーン☆と。

「じゃあ、今日は朝までずっと一緒に居て貰いますね〜♪」

しまった!これは陸遜の罠だ!

「だから俺はもう……」
「……今度は教経様の好きなように私を攻めて下さいね〜」

俺の好きなように、だとッ!?

此処はやはり最後に眼鏡に蝶・サイコー!するのは譲れないな。シチュエーションはどうするか……穏は虐め甲斐があるからなぁ。俺が教師で穏が生徒……いや、此処は敢えて穏が先生で……手取り足取り教えるつもりが生徒は性徒で……彼の性技もとい正義に堪らなくなった先生は……おお!余りのエロさにマイッチング!





結局翌朝、陸家に別件で再度行幸することになった。責任を取らなきゃならないという義務感よりも、散々肌を合わせた結果愛着というか、執着が出来たからだけど。さほど日を空けずに訪れた俺を見て、最初善からぬ事を想像していたらしいが、事が穏との関係の話に及ぶとそれはもう嬉しそうにこう言われた。

―――『どうぞ持って行って下さい』と。

聞けば、穏の眼鏡に適う程の男が居らず、今までずっと浮いた話もなくやって来ていたのだそうだ。書物など知的興奮を得るとそれが性的興奮に直結していることが判明してからは、より一層そういった事について期待をしていなかったのだと。そこに願ってもない相手から願ってもない申し入れがあった、ということらしい。穏のその性癖が気持ち悪くないのか、と聞かれた時に、即座に『全く』と切り返したら、相手の方が驚いていた。

うん、まぁ分かるよ。普通気持ち悪いと思うんだろう。けどねぇ、ああいう穏だからこそ、ああいうプレイが出来ると考えると、それは貴重な性癖であって保護すべきで御座います事よ!と言うかそういう癖があろうと無かろうと眼鏡は正義!眼鏡さえかけて居ればなんだってチャームポイントに変わるに決まってるだろうが!あぁ!?俺はなぁ、眼鏡が好きなんだよ!異論は受け付けんッ!眼鏡の良さが分からん奴はクズだ!人間の出来損ないなンだよ!

……今度はどんなシチュでやろうかなぁ……愉しみだねぇ……