〜教経 Side〜

揚州攻略に向かう、その当日。
荊州の留守を預ける事になっている、黄忠と馬良に逢った。前日には、徐庶に逢っている。

徐元直。真名は吉里。音だけなら、曹操の幼名と同じだな。華琳の幼名は知らん。
今後の展望について色々と訊ねてみたが、雛里の学友だけあって優秀だった。仇討ち手伝って名前変えたんだっけ?と訊くと、驚いた顔をしていた。まぁそうだろうね。だがこれで掴みは上々だった。こういう人間は最初の印象が大切だからねぇ。ちゃんとお前さんのことは知っているよ、と伝えたつもりだ。
その際、「ふむ。僕のことを知っているのは、天の御使いだからかな?まあ、どうでも良いんだけどね」と言った事で、詠に続くボクッ娘が平家に参入したことが判明した。非常に俺得だ……一部残念だったが。

「お初にお目にかかります。私は姓は黄、名は忠、字は漢升。真名は紫苑と申します」
「あぁ、初めまして。俺は姓は平、名は教経。字も真名もない。好きに呼んでくれれば構わない」
「ではご主人様と」
「……まぁいい。俺が好きに呼べばいいって言ったんだしな。宜しく頼む」
「ええ」

そう言ってにっこり笑った。いい女、なんだろうね。柔らかい笑みと良い、ぶら下げているロケットと良い、良い仕事してますねぇ。実はこれで子持ちだって言うんだから吃驚だ。碧もかなり不思議な存在だが、紫苑もかなり不思議な存在だ。
……実は腹黒い、なんてことはないよな?ついでに言うと、アンタ年齢いくつなn

「ご主人様?余計なことを考えて居ると危険が一杯ですよ?」

俺の頬を矢がかすめた。俺が全く反応出来なかった、だと?
ダンクーガもケ忠も全く動けていない。もの凄いプレッシャーだねぇ。弓兵だけに固有結界か何か展開したのか?……あ、魏越のオッサンが泡吹いて倒れた。

「は、はは……分かってるさ」
「……それなら宜しいのですが」
「……は、初めまして。私は姓は馬、名は良、字は季常。真名は珂瑛と申します」
「『馬氏の五常、白眉最も良し』、だな」
「私のことをご存じなのですか?」
「まぁ、ねぇ。お前さんは有名だと思うンだが」

かなり優秀な人間だったことは間違いないンだからねぇ。

「そうでしょうか?」
「何にせよ、宜しく頼むよ、珂瑛」
「はい、ご主人様」

眉目秀麗と言って良いだろう。白い眉毛が幻想的な雰囲気を醸し出している。別嬪さんだねぇ。
……だが、やはり一部残念な感じだ。風に匹敵するものがあるな。風も……む……何だこの悪寒は……これ以上考えれば命はない……だと……。ええい、平家の風は化け物か!

「あの、ご主人様。少しお伺いしたいのですが、宜しいでしょうか」
「何だね?答えられる限りは答えよう」
「妹がご挨拶に伺ったと聞いたのですが、今彼女はどうしているでしょうか」

……あぁ、瑛のことか。やっぱり気になるよなぁ。

「華琳、曹操に預けてきた。華琳が瑛の才を伸ばしてくれるだろうさ。性根含めて、な」
「そうですか。厳しくやって頂いて構いません。宜しくお願い致します」
「……厳しい、という言葉の範疇で済めば良いけどねぇ」
「……え?」

華琳はドーサーでズーレーだからねぇ……。

「まぁ、それだけ厳しい環境だってことさ。ただ、決して無謀なことはさせないだろうし、人の才を見抜いてこれを育てることに掛けては国で一番かも知れん」
「そうですか。ご主人様がそこまで見込んでいる人が瑛に指導してくれるのであれば、安心して居られます。瑛もきっと新しい自分に目覚めることが出来ると思いますから」

……うん、確かに『新しい自分』に目覚めるかも知れないよね。素質があったら育て上げちゃうのが華琳だろうからねぇ……猫耳軍師的に考えて。素質がなければいいね。いや本当に。
まあお姉様がOKだってんだから、俺は知〜らな〜い。

「お前さん達二人に、荊州の留守を任せる。軍事と政務、その両方について宰領する権限を与えるから上手いことやってくれ。兵を連れて行くからかなり大変だとは思うが」
「ご主人様。ご主人様ならばどう致しますか?」
「そうだねぇ。まず各郡の警備兵から500人ずつ兵を出させるかな。それで6,500人は確保出来る。豫州と接している江夏郡と揚州攻略の補給を担う長沙郡の中間に展開させるとして、他領と接していない箇所の警備兵をギリギリまで減らす。で、減らしたそいつらを江夏と長沙に送れば良いだろう。そうすれば大体20,000程度にはなる。数だけだが、これで取り敢えずは凌げるはずだ」
「……成る程。何故そうせよ、と仰らなかったのですか?」
「『任せる』、と言ったろ。お前さん達なら結局同じ結論を出しただろうし」
「思いつかない場合もあるでしょう?」
「それで上手く行かなかったとしても、そいつはお前さん達だけの責任じゃなかろうよ。任じた俺の失態でもある。見込み違いをしたのは俺なんだから」
「……うふっ。面白いお方ですわ。ご主人様は」

口元に右手を当てて、紫苑が笑う。
よく分からんが、何故かエロスを感じるねぇ。

「ご期待に応えられるよう、精一杯努めますわ。ご主人様」
「まぁ程々に、な」
「それで、いつご出発なさいますか?」
「今夜半だな。船の準備次第だが」
「それやったらちゃんと出来とるで〜大将」
「いや、お前さんの作業が終わってないとかいう意味じゃない。干し草積んだりブチ撒ける油を積んだりで忙しくしているのさ」
「そういうことかいな」
「そういうこと。それぞれしっかり準備しておいてくれ」
「御意」

出来れば水上で待ち構えていて貰いたいねぇ。労力掛けずに殺せるだろうから。















〜思春 Side〜

長沙を進発した私達は、豫章を攻略すべく軍を進めている。此処まで、全く抵抗がない。これは劉表軍の罠かも知れない。いくら何でも此処まで人が居ないというのはおかしいだろう。蓮華様も同じ事を感じたらしく一度祭殿に相談したが『穏と亞莎に訊いた方が早い』と言われて二人を呼び出した。
……祭殿は面倒だっただけだと思う。

「どうしたんですかぁ〜蓮華様?」
「少しおかしいと思わない?これだけ侵攻しているのに、全く敵兵が見えないなんて」
「あ、それはですね〜、おかしくないんですよぉ〜?」
「……どういうことだ?」
「私は元々山越族との交渉を冥琳様に命じられて行っていましたから〜」
「そ、それはつまり」
「はい。穏様は山越族を動かして敵軍をこの先の山岳地帯付近に引きつけておられます」
「お約束では、これから私達が助けに行ってあげることになっているんですよ〜?」

……口調や雰囲気で穏を判断すると手ひどい目に遇う。今でさえその真名の通り安穏とした雰囲気を醸しているが、実行し披露した策の内容は安穏からはほど遠いものだ。

「貴女、いつの間に……」
「ほぇ?教経様に荊州に置いてけぼりにされてからずっとやっていたんですよ〜。亞莎ちゃんも一緒にですよ〜?」
「……全く。そうであるなら儂にも一言教えておいてくれればよいものを。亞莎もそう思わぬか」
「そ、その、『祭殿は酒の席で意味深なことを言うことがあるから秘事は漏らすな』と冥琳様が……」
「……ほう。冥琳め、そのようなことを……」

祭殿、事実であるので仕方がない部分があると思いますが。

「……なんじゃ思春。何か言いたそうじゃの?」
「……いえ」
「では、劉表軍はこの先にいるのね?」
「はい。そろそろ明命が還ってくると思うのですが」
「……噂をすれば、だな」

明命が還ってきたようだ。

「あれ?皆様お揃いです」
「明命、報告お願いします」
「あ、はい。劉表軍ですが、豫章郡とハ陽郡、会稽郡の三郡の境界辺りに展開しています」
「私達が攻め込んでいるというのに悠長なことね」
「簡単に撃破出来ると思っていたんでしょうね〜。装備なども大した事はないし、糧食の備えもないだろうと思っていたに違いありません。が、前々からその辺りを融通していたので撃破出来ない状況ですね。
今こちらに軍を振り向ければ、山越族に後背を突かれますし。当初の予定に拘って死んでいくことになりますね〜」
「あの、穏様。その……」
「?どうしたんですか?明命ちゃん」
「その、劉表軍ですが、まだ気が付いて居ないのではないかと……」
「面白い冗談ですね〜。明命ちゃん、中々やりますね〜」
「あの、冗談ではないです」
「明命、どうしてそう思うんですか?」
「陣の後背、わたし達の前方に糧食を集めていて、哨戒網も山越側にしか無かったからです」
「……」

穏が黙りこくっている。流石に呆れた、ということだろうか。
それにしても。

「……奴らは私達を舐めているのか」
「思春、そう息むな。都合が良いではないか。ある程度まで接近したら騎馬で強襲して糧食を全て頂くとしようではないか」
「そうですね。それで糧食が増えることになりますから」
「……それはどうですかね〜」
「穏、貴女には何か懸念があるのかしら?」
「その前に明命ちゃん。前方に展開している劉表軍はどの程度の規模ですか?」
「あ、はい。5,000程度でした」
「……少なすぎますね〜。それで、明命ちゃん。用意されている糧食はどの程度でしたか?」
「3万程度の軍が一月は行軍出来るだけのものがあったと思います」
「おかしいですよね〜。そんなに必要無いのにどうしてそれを持って移動しているんでしょうねぇ〜?」

……そう言われれば確かにそうだ。山越族を簡単に討伐出来ると思っていたのであれば、尚更にその糧食の量は不自然だと言わざるを得ない。

「私が何をしても良い状況であれば、5,000を捨て駒にして糧食を敵軍に接収して頂きますね〜」
「何を言っているのじゃ、穏」
「……毒入りの♪」
「な!」
「此処は糧食を確保して、それは消費せずに機会を見て利用することを考えた方が良いでしょうね〜」
「……何か腹案があるのかしら?」
「はい〜。でも、教経様に報告すればきっと同じ事を思いつかれると思うんですよ〜♪私達の相性を占うのに丁度良い試験だと思うんですぅ〜。あぁ〜ん、待ち遠しいですぅ〜♪」

……前々から思っていたが、穏も、そして亞莎も教経様の事を気に入っているようだ。
穏を見る蓮華様の表情は硬い。先の事と言い、教経様のことになると少し蓮華様は雰囲気がおかしくなる。アレは、一体何なのだろうか?背筋が寒くなったりするのだが。

「……蓮華様。先ずは目の前の敵を駆逐致しましょう。教経様のことは後で宜しいかと」
「し、思春!わ、私は別に」
「はっはっは!蓮華様も乙女であったということですな!」
「さ、祭!」
「さて、怒られる前にさっさと出陣しようかの、思春」
「はっ。明命、蓮華様を頼む」
「あ、はいっ!」
「ちょ、二人とも!?」
「じゃあ亞莎ちゃん、祭様達に同行してしっかり軍師としての務めを果たして下さいね〜」
「はい。最善を尽くします」
「私を無視しないで!」
「無視はしてないですよ〜、蓮華様。ちょっとお一人で考える時間を作っているだけですから〜」
「そ、そう……それ、無視しているって言わないかしら?」
「そうとも言いますね〜」
「穏!」

以前の蓮華様なら、戦場でこのように自然体でいらっしゃる事は無かったに違いない。
教経様と出会ってから、蓮華様は本当に変わられたと思う。堅苦しさというか、こうあらねばならないという呪縛から解き放たれたように見える。中々それを成し遂げることが出来なかった蓮華様に、蓮華様として生きることの大切さを説いた教経様も、きっと昔は悩んで居られたに違いない。

蓮華様は教経様に惹かれている。同じく家を背負うものとして。
そして何より女として。

……私も、きっと教経様に惹かれているのだろう。己の主の主君として。
そして何より、女として。















〜凪 Side〜

「いやぁ〜、中々壮観だねぇ」
「……大将、それ結構言ってるよな」
「別に問題無いだろうが」
「そりゃそうだけどさ」
「大体、目の前に広がってる光景は壮観以外に表現しようがないだろうが」
「……いや、他にもあると思うけどね、俺は」
「例えば?」
「悲惨だなぁとか熱そうだなぁとか」
「詩的感受性ゼロなのな、お前」
「大将も多分そうだよ」

長沙から船で長江を下る私達の前に、多くの艦船が停泊する基地があった。此処で私達を食い止めよう、という構えだった。まだ夜が明ける前であることもあり、船は水上に広く展開せず、岸付近に纏まっている様だった。
斥候によって事前にその情報を仕入れた教経様は、上流から全ての油を流し、そして敵陣中に十分に行き渡ったであろう時機を見計らって火箭を射掛けさせたのだ。

その結果が、目の前の、教経様曰く『壮観』な光景だ。長江が、燃えている。
損害を免れた船が岸に逃げようとするが、そこに真桜が改良した小型の船が突っ込んでいく。敵の船の腹に、その頭に付いている大きな鉄針で食らい付き、そしてそこに火を掛けて切り離して離脱する。敵は何とか陸に上がって迎撃態勢を整えようともがいている。

「見よ!長江は、赤く燃えているぅーーーーーー!」
「……師匠……?師匠……師匠……師ィィィ匠ォォォォォォォォォ!!!!!」
「……はぁ。教経、断空我。お前達は一体何をやっているのだ……」
「いや、大将にこう言えって言われたから言ってみたんだけど」
「……兄貴、まさかと思うけど、それが言いたいが為にやった訳じゃ無いよな?」
「ぎっくぅ!は、はは……まさかそんな訳無いじゃないかね?」
「……図星?」
「百合、そんな事はないさ。百合は信じてくれるよね?」
「……急に男前な顔と声を作っても、姉貴は騙されないぜ?兄貴」
「……うん」
「姉貴!そこは信じちゃ駄目だって!」
「……忠、五月蠅い」
「あ、姉貴が……俺から遠退いていく……」
「はぁ……ケ艾の姐さんが好きなのは分かるが、実姉なんだから程々にしとかないとそろそろドン引きだぜ?ケ忠」
「うるせぇよ。誰にも迷惑掛けてないんだから問題無いだろうが!」
「……私、迷惑かも」
「あ、姉貴……」
「ケ忠が風雲再起不能になったところで残ったゴミ共お掃除するぞ?あ、オッサン。ケ忠殴ってやってくれや」
「ラーサ!」
「よっしゃぁ!親衛隊!上陸したら襲ってくる奴ぁ皆殺しだ!死姦が趣味の糞野郎の兵に押し負けるんじゃねぇぞコラァ!!殺ぁぁぁぁぁぁぁぁってやるぜ!!」
「「「「「OK!忍!」」」」」

……これが平家にとっては普通らしい。
教経様と言い親衛隊と言い、少しお遊びが過ぎると思うのだが。真桜や沙和は、そんな教経様達を見てケラケラと笑っている。

「いやぁ〜、ウチとこの大将はホンマにオモロイなぁ〜」
「だよねー。沙和、戦に来たのに大笑いしちゃったの」
「お前達!真面目にしろ!」
「そんなこと言っても大将がアレやし……」
「もう真面目にしていらっしゃるだろう!」
「あれ、本当なのー」

教経様は主攻軍の軍師を務められる冥琳様と話をしている。

「さて、教経。これからどうなるかな?」
「さぁねぇ。焼き払われたとは言え、きちんと備えることが出来るだけの頭を持っている奴が居たってのは驚きだね」
「フッ……驚いている奴の顔ではないが?」
「そうかね?俺は感情が表情に出ない人間だからねぇ」
「何を馬鹿なことを。で、どうするのだ?実際」
「ここから陸路で問題無いだろう。手持ちの兵力全部を俺の前に展開したとしても、たかだか5万だ。強引に徴兵したとしても、6万程度だろう。そのうちの1万は此処で死ぬ訳だし、2倍程度の劉表軍に後れを取る平家軍じゃないんだよ。あっちは雑役夫、こっちは兵だ。憂うべき何物もない」
「……ここが丹陽であることを考えると、建業までは10日程度だな。途中で妨害があったとして、15日という所か」
「……お前さんも鎧袖一触だと思ってるみたいだな?途中で待ち受けられていても3日で戦闘が終わる程度のモンだって考えてる訳だから」
「当然だ。お前と雪蓮が虎の群れを率いて居るのだぞ?豚が抗えるはずも無かろう」
「ははっ。言い得て妙だな。まぁ、きっちり耳を揃えて支払って貰わないとな。鬼畜にも劣る所行の代償って奴を、ね」

……劉表は、死姦愛好者。そして雪蓮様の母上様を死姦したらしい。
その事を初めて聞かされたとき、余りの嫌悪感に吐き気を催した。教経様はそんな私を見て、軟弱だと仰るどころか背中をさすりながら気遣って下さった。……後で真桜や沙和に冷やかされたが。

劉表をどうするのか、と訊いた私に、教経様はこう仰った。

『善人には善人に、悪人には悪人に、それぞれ相応しい死に様ってのがある。善人なら家族に囲まれて穏やかに死んでいくのが相応しいだろうし、悪人なら己の悪事を白日の下に晒されて罪を得て殺されるのが相応しい。それなら、外道には外道に相応しい死に様って奴があるだろう。
俺は奴が降伏しようと生かしておくつもりはない。俺が理想とする国を描くのに必要な人材はもう十分集まっているだろう。まぁ、そうでなくても奴のようなドカスを取り込もうとは思わん。一緒に居るだけで胸糞が悪くなってくるだろう。どうせ我慢出来ずに殺すことになるンだから、さっさと殺しておくに限る。前回まんまと取り逃がしてしまったからねぇ。今回は絶対に逃がさない。決して逃れられぬ死を呉れて遣るンだ。
……俺が殺すと言った以上、奴の死は絶対だ』

その際に放った殺気は、今までに感じたことがない程凄絶なものだった。
流石は華琳様が従うことを肯んじる人だ。戦場で華琳様と二人だけで敵の猛攻をしのぎ、そして敵将を討ち取った。その武技も、そして心根も立派な人だと思う。

「凪、真桜、沙和」
「は、はっ」
「何や大将」
「はいなのー」
「お前さん達は雪蓮と冥琳の配下として周辺を掃討して貰う。敵は本陣を襲ってくるだろうから、その後背から叩きまくってやれ」
「教経様、それは危険ではないでしょうか」
「危険?何処にあるンだ?あの程度の兵で俺を殺せる訳がないだろう。あの程度の兵で俺を殺したいなら8万は用意して貰いたいねぇ。ま、それでも五分かも知れないがね?心配してくれるのは嬉しいが、此処では無用だ。それに、お前さん達がより迅速に敵を屠っていってくれたらそれだけ俺の危険は減る訳だ。
……期待してるよ、凪」

私の頭を撫でながら、教経様はそう仰った。

「あれ〜?な〜ぎ〜、アンタ何照れとるんや〜?」
「凪ちゃん、お顔が真っ赤なの」
「う、うるさい!」
「ははっ。まぁ、気楽に行こう。そう長くはないがまだ先があるからな。三人とも、期待してるよ。
……ンじゃ行こうか。ドカスを殺しに」
「「「御意」」」

この戦いで、曹家の代表としてきっとお役に立ってみせる。
華琳様と、教経様の期待に応える為に。